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実録!これがおかしな三人娘だ!!

 俺と香苗さん、二人揃っての答えに関口くんはやはりか……と力なく天を仰いだ。

 戦い終えてはしゃぐ3人。いやアメさんは申しわけなさそうに縮こまってるしガムちゃんは無表情ながら、どこか感情を抑え込んでいるように思うから実質的に、チョコさん一人が高らかに勝利を謳っているような状況だわ。

 そんな彼女らを眺めながら、彼はおもむろに口を開く。

 

「……徳島千代子。戦闘が始まるとすぐに斬りかかり、以後とにかく攻めの一辺倒で突進するバーサーカー。連携を真っ先に崩すのは、決まってあの子です」

「いやーやっぱ速攻あるのみだよね! 先手必勝、スピード命! これが私の世界のルールよ!」

 

 めちゃくちゃいい笑顔のチョコさんに、めちゃくちゃ渋い顔で関口くんはそう評した。バーサーカーとはまた、穏やかじゃない表現だなあ。

 実際、連携を取るはずの他二人を完全にほっぽりだして真っ先に斬りかかるのは尋常じゃない。普通もうちょっと様子を見るし、パーティメンバーとも息を合わせるくらいはするだろうに。

 どうやらスピード勝負にこだわりというか、独自の世界観を持っているみたいだけど。探査業を始めて間もない新人さんがやるには、少しばかり時期尚早がすぎる気がする。

 

「連携が崩れたことで次、パニックになって行動不能に陥るのが鹿児島天乃。唯一冷静に動ける新潟花夢の指示を受けることでどうにかスキルは使用できるけど、自身がどう動くかについては……ガムがチョコのフォローに入るから指示する間もなくなるので、とにかくその場に棒立ちするしかなくなります」

「みんな無事でよかったわ〜。あ、怪我してたら言ってね。医療キット持ってきてるもの」

 

 次いで関口くんが視線を向けたのは、探査者が使う救急医療キットを携えてふんわり微笑むアメさんだ。なんていうかほのぼのと、怪我人なく戦いを終えられたことに安堵している。

 たぶんだけど彼女、基本的に荒事に向いてないんだと思う。もっと言えば指示待ち型というか、アドリブが苦手なんだろうな。単純に場数が足りてないのもあるし、元々マニュアルに沿って動きたいタイプの人なのかもしれない。

 

 それならそれで、指示をしっかり飛ばしてくれる人の元でなら活躍はできるだろう……スキル《召喚》もしっかり使えているし、サラマンダーもアメさんの言うことはちゃんと聞いていた。精霊と心を通わせている証拠だ。

 前にも述べたけど《召喚》はあくまで概念存在との交渉の窓口にすぎない。実際に彼らの協力を得られるか否かは、召喚者本人の性格や素養、素質と交渉力にかかっている。その点で言えば、精霊相手にあだ名呼びさえできる彼女はセンスがあると俺は思う。

 あるいは上級神相手にも、心を尽くせば力を貸してもらえるかもしれないね。

 

 で。そんな一癖も二癖もあるチョコさんアメさんに加えてもう一人。

 ある意味一番濃ゆーい女の子を、俺たちはじっと見つめた。

 

「パニクりがちで指示待ち気味のアメに指示を投げ、自らもサポートとフォローに回る形で事実上、パーティをパーティたらしめているのがガム……新潟花夢です。あの3人の中では一番、腕が立つし考えて動いてもいる。ただ……」

「…………けっ。揃いも揃ってポンコツばーっかり」

「ただ、ご覧のとおりに裏表がある。いやまあ、他二人の世話を一手に引き受けてるんだから仕方ないんですけど。ストレスをああいう形で発散させているのだとすれば、頻度高く陰口を叩いている現状はかなり危うい」

 

 チョコさんとアメさんに隠れて俯き、小さく本当にボソリとだけガムちゃんがつぶやく──やはり二人には聞こえていないだろうけど、俺や香苗さん、関口くんにはバッチリ聞こえているのはさて、気づいているのかいないのか。

 逆に清々しいほどにやさぐれているけど、話を聞けばそれも頷けた。二人のフォローをしつつもアメさんには指示を飛ばし、自分はチョコさんのサポートをこなしているのだ。

 

 率直に言って一人だけ負担がおかしい。

 あまりにもあんまりな三人娘の、連携にもなっていない惨状に思わず香苗さんが戸惑いの声をあげた。

 

「……関口、あなたよくこれで3人の連携が何故か上手くいかないなどと言えましたね。それ以前の問題ではないですか」

「3人の手前、ダイレクトに論外とは言いにくかったんですよ……それと香苗さんと山形には、直接見てもらったほうが話が早いかと思いまして」

「ちなみに他の指導役は何をしているのです? さすがにこの状況、一人も気づいていないとは考えにくいのですが」

「う。いやあ、それが……」

 

 師と仰ぐ人からの詰問に、汗を垂らして頬をかく関口くん。たしかにあの三人娘の問題について、彼と共同で指導役を受け持っているはずの他の人たちが気づかないとは考えにくい。

 俺も疑問の目で彼を見る。どこか困ったように、苦笑いしながらも関口くんはやがて、おずおずと話し始めた。

 

「メインの指導役ということでひとまずは俺が指導することになって、そこからこの事態が発覚したんです。つまりはここ数日の間に判明したわけですから、先輩方にはまだ、報告と相談はしてなくて……」

「メインなんだ、関口くん」

「チョコたっての希望らしい。当時は認められたみたいで嬉しかったけど、今となってはどデカい爆弾を抱え込んだ気分だよ。いくらなんでも無責任に放り投げるわけにもいかないから、俺なりに考えて今回、二人に相談したんだけど」

 

 そうだったのか……関口くんが3人の面倒を見ることになった経緯を知り、俺はなんだか得心がいった。

 チョコさんによるご指名か。彼女明らかに彼にホの字だもんね。で、探査者として見込まれてると感じて関口くんは、意気揚々と彼女たちをメインで受け持つことにしたと。

 

 それが蓋を開けてみれば問題だらけの三人組ってのはなんというか、大変な話だと人ごとながら戦慄せざるを得ない。

 一度引き受けたことだしメインということで逃げるわけにもいかず、いろいろ考えた末に香苗さんにアドバイスを求めたってわけか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 関口くん、真人類とか優性思想とかにかぶれる君みたいに、探索者という大きな力を持つことになった人は、多かれ少なかれ思い上がるというか調子に乗るというか、選ばれた者なんだと誤認してしまいがちだと…
[一言] いっそ全員伝道漬けして同じ方向見てもらおうか
[良い点] 皆元気() [一言] 関口くんさあ、チヤホy……慕われてるからって爆弾処r……憎まれ役を他に押し付けるのは良くないぜ。 受け持った数日の間に問題点を(オブラートに包まず)指摘はしたのかな?…
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