三人娘の実態
クール系中二病忍者スタイル探査者という、属性を盛りすぎてよくわからなくなってしまっているガムちゃんからはそっと心の目を逸らし。
俺たちは次の部屋へとたどり着いた。最初の部屋と2つ目の部屋をそれぞれ俺と香苗さんで受け持ったため、ここからは予定どおりにおかし三人娘のお手並みを見せてもらうターンとなる。
「ピギー! ピギピギピギー!!」
「ピキャキャキャ!」
「ぐげげげげげー!!」
部屋にいるモンスターは3体。スライムが二匹にゴブリン一匹と、まあ順当にF級って感じの連中だ。
正直、各自一対一ってやっても問題なく倒せるんだろうけど……ここは連携を見させてもらう場だからね。おかし三人娘には三対三って構図で頑張っていただこう。
「よしっ! 気分も入れ替えて、やろっか二人とも!」
「怪我しないように頑張りましょうね〜。命大事に〜」
「まあ……F級相手なら全然余裕ですしね、私だけなら」
気合十分って感じのチョコさん、マイペースな感じのアメさん、見るからに余裕ぶっこいてますって感じのガムちゃん。
三者三様とはまさにこのことなんだけど、3人でパーティを組むつもりだからか、やり取りが様になってるよね、やっぱり。
見た目もめっちゃ人気出そうだし、上級になる頃には何かしらのあだ名とかされるんだろうな。
今のうちにサインとか貰っとこうかな……売りはしないけど人に自慢できちゃうもんなあ。あ、そうだ8月が終わるまでにリンちゃんとかベナウィさんたちからもサインもらおう。有名人のサインってなくても困らないけどあるとやけに嬉しいよね。
「3人とも、油断大敵だぞ。気負いすぎも警戒しすぎも、ましてや油断しすぎもよくない。なるべく自然体で臨むんだ」
「はい、関口さん! 打ち合わせもしてますしね、バッチリです!」
「わ、わかりました〜」
「……了解」
それぞれがそれぞれ別の方向で危うい3人の姿勢を、すかさず嗜める関口くん。指導役として新米の油断を律する姿は、それなりに場数を踏んだ探査者って感じの雰囲気である。
見た感じ、いい関係性の4人だよなあ。特にチョコさんは明らかに関口くんにラブがコメってるし。アメさんガムちゃんもそうなったら、マジでそういう漫画の主人公になっちゃうね彼。
三人娘が部屋に入る。戦闘開始か。
まあまずはお互い出方を伺うんだろう。さてどうなるか──
「先手必勝ォーッ!!」
「えっ」
「は?」
いきなり叫んだチョコさんに、俺と香苗さんの声が重なる。見れば、彼女は部屋に入った瞬間からすでに敵に向け、提げていた剣を抜き放って一目散に走り出している。スキル《俊足》の効果もあってか、レベルの割にそこそこ早い。
おいおいおい。やけに手慣れた感じ出してるけど、まだ探査自体が3回目かそこらの子がそういう動きって大丈夫か? っていうか、他の二人はその初動に関して、事前の打ち合わせとかしてるのだろうか。
「あっああっ! ま、また先走って!? 打ち合わせは!?」
「まただよ。そんなことだろうとは思ってた、アメ姉! とにかく召喚、私はあのイノシシのフォローするから!」
「わ、わ、わかったわ!」
「えぇ……?」
してないわ打ち合わせ。完全に他二人を置いてけぼりにしてるわこれ。
完全に独走態勢で剣を振り回して走るチョコさんに、アメさんは軽くパニックになっている。どうにかガムちゃんが指示を投げてチョコさんの後を追うも、その顔は苛立ちに歪んでいる。
いや何これ。連携とか噛み合うとかそれ以前じゃん。
「え、え、えっと条件は一つ"ダンジョン内であること"! 以上を持ってスキル《召喚》発動! お出でください、超常なる御方、サラマンダー!!」
『──くきゃーっ! くきゃーっ!』
「あ、召喚した。条件は一つだから神霊ってか精霊か」
指示されるがままにアメさんがスキル《召喚》を発動した。このスキルは最初に現時点で満たしている条件を宣言することで発動し、満たす条件の量と質によって相当する概念存在を呼び出す能力だ。
彼女のレベルでは最低限の条件しか満たせないので、最下級の精霊しか呼び出せないようだな。背中に火が宿る、子供くらいのサイズのトカゲ・サラマンダーが一匹、アメさんを護るようにその前に立っていた。
「え、ええとその、あーと。さ、サラさん、とりあえず私を護ってくだ──」
「違う! いいから攻撃! スライムもゴブリンもそんな離れたとこまで来れない! 安全地帯にボディガードなんていらないでしょう! 頭使ってよ!?」
「あ……ご、ごめんなさい! サラさん、言われたとおりに〜!」
『くきゃーっ! くきゃきゃーっ!?』
とりあえず言われるがままに召喚したはいいものの、何をさせるかについては適切な判断ができないらしい。
チョコさんが大暴れしている前線から離れた、攻撃なんて飛んでこないだろう位置にいるにも関わらず彼女は、喚び出したサラマンダーで自衛を図ろうと指示を飛ばす。
それに対してすかさずキレたのがガムちゃんだ。どこからか手裏剣を放ちスライム2体を足止めして、チョコさんとゴブリンの一騎打ちになるように立ち回りながらもアメさんを叱り飛ばした。
慌ててサラマンダーに指示を出すアメさん。
それを見て、ガムちゃんはさらに顔を苛立ちに染めた。
「猪バカにノーテンキ……! ポンコツすぎるでしょ、私の足を引っ張ることしかできないのっ!?」
「怖ぁ……」
囁くようにボヤいているから、チョコさんアメさんには聞こえてないみたいだけど……レベルが高い分、聴力もアップしている外野の俺たちにはバッチリ聞こえちゃってるんですよね。
言いたくなる気持ちはわからなくもないけど、ものすごい辛辣だ。この子、ランレイさんと同じタイプで戦闘になると人が変わるのか?
ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします




