ポエムノート(公的証明書)
「素晴らしい……! 相変わらず惚れ惚れするほどの動きと技です公平くん!」
「ど、どうも」
ゴブリンたちを倒しきった俺の元に、香苗さんはじめみんなが部屋に入ってやって来る。相変わらずテンションの高い彼女に対して、関口くんやおかし三人娘はなんだか複雑というか、ドン引きしているみだいだ。
まあ、片手で捻ったりビームで串刺しにしたり終いには魔方陣を出して燃やしたりとやりたい放題だったしな、我ながら。だけどこれが俺の戦い方というか、できることではあるので……戦いぶりを見せてくれと言われたらこうしないわけにもいかないんだから、仕方ない話だとは思う。
関口くんが、ぎこちなく笑みを浮かべて言ってくる。
「あ、あー……お、お見事って感じか。正直、俺にもよく理解できない技ばかりだったが、参考にはなった。ありがとう、山形……」
「しょ、正直……真似できそうにないですね、あは、は……」
「生ビーム初めて見たわ〜」
「特撮ヒーローみたい。ヤッベ」
口々にこう、遠巻きからの当たり障りない賞賛って感じに言ってくるみなさん。ガムちゃんの率直なヤベーやつ認定が地味に俺に効く。
ヤバいのはスキルであって俺ではないんだ。誰がなんと言おうが俺はヤバくないんだ。などと内心にて供述しながらも、ええと、と俺は三人娘に説明する。
「今のが俺、山形公平の戦い方……の一部、ですかね。いろいろあって素手で殴るか投げ技、関節技しかできなかったんだけど、こないだ新しいスキルを獲得しまして。ビームも撃てるようになりました」
「まずそこがなんなんだ……ビーム? 《光魔導》とかか?」
「いや、まあそういうのではないんだけど……」
そもそもビームって何? という、至極ごもっともな質問をしてくる関口くんに口籠る。
たしかに、ビームを放つことができるスキルって言えば、普通は《光魔導》とか《光魔法》を連想するよね。でも残念ながら、本当に残念ながら俺はアドミニストレータなので、オペレータ用のスキルは基本的に与えられない運命にある。
っていうか言ってしまうと俺のビーム自体、本来出しちゃいけなかった手順、出せるはずのないやり方で出せてしまったモノだからね。そのため即座にスキルという形で封印されたという、曰くそのものみたいな代物なのだ。
とはいえそんな細々した話を、彼や彼女たちにしても伝わるわけがない。関口くんは続けて、俺のスキルについて尋ねてくる。
「《光魔導》じゃない? じゃあなんのスキルなんだ。名前は? よければステータスメモとか見せてもらえるか? 探査者なら持ってるだろ?」
「え、ええと……あー、うん。ステータスメモ見せるよ。はい……」
あんなビーム見せておいてしらばっくれるのもアレなので、大人しく自分の探査者証明書を見せる。
口頭でスキル名はこれこれこうで、効果はうんぬんかんぬん! などと言っても、伝わる気が欠片もしないってのもあるからね。
香苗さんさえ含めたみんなで、俺の証明書を覗き込む。
探査者になって3ヶ月とは自分でも思えない、あらゆる点で無茶苦茶な内容が、そこには記されていた。
名前 山形公平 レベル807
称号 互いに互いだけの存在、互いに互いだけの呼称
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
名称 誰もが安らげる世界のために
名称 風浄祓魔/邪業断滅
名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で
名称 よみがえる風と大地の上で
名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの
名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師
名称 あまねく命の明日のために
「誰がお前の個人的なポエムを見せろと言った」
「ステータスですけど! 純然たる俺のステータスですけど!!」
関口くんの暴言に堪らず叫ぶ。理解できる反応ではあるんだけれどね! こんなの青樹さんのアレにも負けず劣らず怪文書ですよね!
こないだ拝見した三人娘のステータスと比べて、なんとまあ意味の分からない言葉が羅列していることか。なんならレベルだっておかしい、なって3ヶ月の人間が到達していい領域じゃない。これ絶対見栄張って嘘って思われるやつじゃん。
「レベル、807!? いやいやいやいや、嘘ですよねこんなの!」
「さすがに山形くん、これは盛りすぎよ〜? さすがに50とかそのへんよね?」
「いやでもアメ姉。これ、本物の探査者証明書だし……」
「え……ホントだ。しかもこれ、本部長の判子……」
案の定、チョコさんとアメさんからは疑念の声があがるも、ガムちゃんが冷静に指摘して3人で黙り込む。
まあ公的な証明書とはいえ、これ本物ですよ? という証明が必要になるレベルでめちゃくちゃだからね、俺のステータスって。
なので広瀬本部長直々に確認してもらい、あまつさえ嘘じゃないよって公認の判子だって証明書の更新の度、直接もらうことにしている俺だ。普通は担当する職員さんの判子だからね。
加えて香苗さんが……最も新しいS級探査者が、ドヤ顔で付け加える。
「この私、御堂香苗もS級探査者として保証しましょう。誓ってその探査者証明書に虚偽記載はありません。正真正銘、我らが救世主山形公平様のステータスです」
「そ、そんな……たった3ヶ月で、ここまで……?」
絶句する関口くん。
そしておかし三人娘と揃って4人、得体の知れないモノを見る目で俺を、見るばかりだった。
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