ナイト・アンド・サモナー
「3人の動きがいまいち噛み合わない?」
「そうなんです、香苗さん」
あとから来た4人にもパフェが行き渡り、じゃあ摘みながらでも話をしようかという流れになっての今。関口くんがおもむろに口を開くと、やはり相談ごととは三人娘のダンジョン探査についてのことだった。
彼らは午前中、F級ダンジョンに潜ったらしいのだけれど……そこで行われたすべての戦いにおいて3人の息が合わず、むしろ互いに足を引っ張る形となってしまって苦労したのだそうだ。
難しい顔をして、関口くんが語る。
「俺から見て、3人はレベルこそ低いですが特に問題のあるステータスをしているとは思えない。最初から三人一組で活動したいと言うあたり、仲が悪いわけでもない」
「むしろ二人のこと、すごく好きです!」
「ふふ、私もよ。ありがとうね、チョコちゃん」
「まあ、嫌いだったらここにいませんし……普段はですけど」
互いに互いを認め合う三人娘。まあたしかに、仲が悪かったら最初から三人一組でいこう、なんて選択はしないよね。
そして各人のステータスも問題ないときたか。となると普通に考えれば、連携もそれなりなものになっていくとは思うんだけど。
香苗さんが口を開いた。
「連携の役割分担に問題があるのでは? アタッカーがサポートをしているといった、自身のステータスと実際のポジションの間に齟齬は?」
「ステータスとポジションの齟齬に関してはないと思います。そこは今から説明します。3人とも、ステータスメモをお見せしてもいいかな」
自身の能力に見合った役割と、実際の動き方とがズレているとかって問題は駆け出しにはまあまあある話と聞く。俺はソロだからそんなの一切なかったけれど。
ただ、そういう話でもないみたいだ。関口くんが三人娘に確認を取れば各々頷いて、俺たちにメモ用紙を出してきた。
自身のステータスを記載している用紙だ。まずはチョコさんのを拝見する。
名前 徳島千代子 レベル5
称号 剣士
スキル
名称 剣術
名称 俊足
称号 剣士
効果 剣を用いた攻撃に威力補正
スキル
名称 俊足
効果 移動速度アップ
「徳島千代子。オーソドックスな剣士スタイルですが、《俊足》を持っているためどちらかといえばスピード特化、切込み隊長のような動きを役割としています」
「お手本のような剣士スタイルですね。剣技の習得は?」
「速度を活かした手数重視にしてます! ヒットアンドアウェイを基本にして、ちまちま削る感じです!」
元気よくハキハキとチョコさんが答えた。ヒットアンドアウェイか……《俊足》を活かした剣技、ストロングスタイルって感じでいいな、個人的に俺好みの戦法だ。
剣技がどの程度のものかにもよるけど、まあ探査者になってすぐの人がそんな大層な技を会得してるわけもなし。これから訓練や実戦を経て強くなっていくんだろう。なんというか、安心感のあるステータスだ。
次いでアメさんのを拝見。アタッカーかタンクかはたまたサポーターか。希少ながら治療系スキルを持つヒーラーの線もあるけど……
名前 鹿児島天乃 レベル2
称号 巫女
スキル
名称 召喚
称号 巫女
効果 召喚スキル使用時、神々を呼び出しやすくなる
スキル
名称 召喚
効果 条件を満たすことで、特殊な存在を呼び出す
「鹿児島天乃。《召喚》で特殊な存在を呼び出して攻撃しつつ、自身は後方に回る特殊な遠距離アタッカーです」
「召喚……一応聞きますが鹿児島さん、現在はどの程度の数まで条件を満たせますか?」
「まだ一つです、御堂さん。ですから称号効果もあまり意味がなくて、火の精霊しか呼び出せませんね〜」
どこかのんびりと微笑み、アメさんが答える。
召喚スキルか……条件を満たすことでそれに見合った概念存在と交信、力を借り受ける結構レアなスキルだ。呼び出した存在を自在に操れるんだから、そりゃオールラウンダー的な立ち回りにはなるよな。
ちなみにだけどこの《召喚》、アドミニストレータは一切関係ないオペレータ独自のスキルの一つだったりする。
歴代アドミニストレータが完全にシステム領域の存在だったのもあり、彼らを呼びつけてどうのこうのってのはさせられなかったんだよね。そもそも仮に召喚したとして、邪悪なる思念相手には正直、戦力としてカウントはできなかっただろうし。
だから正直、コマンドプロンプトとしても召喚スキル持ちってのは初見かもしれない。珍しさにまじまじとアメさんを見ていると、気づいた彼女に微笑まれた。
「どうかした? 山形くん。あ、もしかしてお弁当ついてたりする?」
「ああいえ。そういうわけでなく、召喚スキルをお持ちの方とは初めて会いまして。称号もそうですけど、結構レアだなーと」
「あ、そうなのよかったわ〜。うふふ、実は家が神職なの。繁忙期は助勤に駆り出されて巫女装束を着たりもするから、そこから称号を得たのかもしれないわね」
「神社の……すごいですね」
驚く俺に、やはり淑やかに笑うアメさん。
なるほど、本職の娘さんが巫女となって神々を降ろすわけか。彼女の、色気たっぷりだけど不思議と清楚な感じも相まってベストマッチに思える。
しかし、巫女さんかぁ。
巫女装束のアメさん、機会があったら見てみたいよなあ。
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