糖分の宝石箱や〜!
ショッピングモール内をうろちょろしているうちに、そろそろ約束の時間が迫ってきた。というわけで一路、合流場所の喫茶店へと向かう。
本館2階、ちょうど全体の中央部に位置するところにその店はあった。初めて入る店だけど、いい雰囲気だなあ。
「いらっしゃいませー、何名様ですか?」
「ええと、今は2人であとから4人来ます。6人ですね、全員で」
「6名様ですね、こちらへどうぞー」
香苗さんと2人、関口くんたちに先んじて店内に入る。あとから人が来ますよって伝えて、6人でも座れるソファ席に案内してもらう。
さて、と腰を落ち着ける。時間を確認するとあと10分くらいだ。店に入ったことだしせっかくなのでメニューを見ると、パフェやらケーキやら美味しそうなスイーツの数々が俺の別腹をくすぐってくる。
「……さっきアメさんが食べてたのを見て、なんだか俺もパフェが食べたくなってきました」
「人が食べてるものって、やけに美味しそうに感じますよね。私もです」
わかるわかると2人、頷く。
たとえばインスタント食品とか、普段は別にそうでもないんだけど人が食べてるのを見ると無性に食べたくなるんだよね。あれ不思議だわ。あれかな、匂いとか食べてる様子とかに空腹中枢を刺激されたりするんだろうか。
話をしていると香苗さんも何やら食べたくなってきたみたいで、さっそく店員さんを呼ぶ。
「すみません、コーヒー2つと、あとパフェを……」
俺はチョコレートパフェで、香苗さんはストロベリーパフェを頼む。カロリーなんて気にしない、なぜなら事前にダンジョン探査をしたから!
そう、ダンジョン探査をする関係上、外勤の探査者にとってカロリー計算とかはあんまり縁のない話だったりする。毎度毎回数時間かけて未知の洞窟を行き、モンスターと命がけの戦いを行うわけで、エネルギーはいくらでも蓄えときたいからね。
単純な比較は決してできないけど、アスリートの人たちと同じかそれ以上にカロリー摂取は重要なんじゃないだろうか?
「いやー、考えてみればパフェって中々、食べる機会ないんですよね。甘いもの食べたいなーってなったらいつも大体、コンビニでチョコなりグミなり買いますし」
「そうなんですね。私は割と、甘いものは好きですから。食べたくなったらあちこちの甘味処に行きますよ」
「フットワーク軽いですねー」
「ふふ、これでもS級探査者ですから」
まあ今回の場合は、完全にそれにかこつけて好きなものを食べたいってだけだけども。和やかに談笑しながらパフェを待つ。
……と、パフェより先に待ち人来るか。席からも見える店の入口、関口くんとおかし三人娘が入ってくるのが見えた。向こうもすぐに俺たちに気づいて、店員さんの案内とともにやってくる。
「どうも香苗さん。お待たせしちゃってすみません。山形も悪いな」
「さっきぶりです、御堂さん、山形さん!」
「どうもお二方。デートの途中にごめんなさいね〜」
「こんにちは……ここ、洒落てますね」
にこやかに挨拶してくる一同。関口くん、ついで程度だけどちゃんと俺を無視しなくなってくれたよなあと内心、ちょっとした感慨があるよなあ。
チョコさん、アメさん、ガムちゃんの3人もそれぞれ個性豊かに振る舞いながら席につく。俺、関口くん、チョコさんの並びに向かい合っては香苗さん、アメさん、ガムちゃんという構図だ。
席を詰めながら香苗さんが、穏やかに笑って俺を見て応えた。
「どうもみなさん。私たちは私たちで二人きりの、素敵な時間を過ごせていましたからお気になさらず。ね、公平くん」
「は、ははは。ま、まあ香苗さんと一緒にあちこち行くのは、楽しいですよ。あはは」
「そ、そうですか。それはその、よ、よかった。はは、は」
めちゃくちゃストレートにデート楽しかったですと仰ってくれるのはすごい嬉しいんだけれども、関口くんがぐぬぬーってしてるよ怖ぁ……
おかし三人娘のアメさんも何やら、修羅場? 修羅場? って感じで目を煌めかせて見てるし。勘弁してほしい、言っちゃ悪いけど関口くんが独り相撲キメてるだけだよぶっちゃけ。
「お待たせしました、コーヒー2つとチョコレートパフェとストロベリーパフェになりますー」
「あ、どうもー」
と、ちょうどいい感じのタイミングでパフェとコーヒーがやってきた。香苗さんとそれぞれ受け取って、なんとも美味しそうなスイーツの宮殿に頬を緩める。
ていうか彼女の頼んだストロベリーパフェ、ものすごい量の苺を使ってるな……こっちもこっちで相当チョコレートを使ってるんだけど、苺なんて日常的に食べたりしない家柄だからなんだか真新しさがある。
関口くんが目を丸くして言ってきた。
「パフェを頼んでたのか、山形。香苗さんはともかくお前はなんか、意外だな」
「自分でもそう思う。でもほら、たまに食べたくなる時あるでしょ? さっきアメさんが食べてたのも見たし」
「プライミング効果か……たしかにそれ見てたら俺も、なんだか食べたくなってきたな」
「あ、じゃあ私もー」
言いつつメニューを開く彼。おかし三人娘も食い入るように覗き込んでいる。ていうかアメさん、さっき寿司屋でパフェ食べてなかった?
結局4人とも、それぞれ異なるパフェを追加で頼み。それからやっと、俺たちは本題に入るのだった。
ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします