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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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374/1847

一つは星、一つは魔。二つ重ねて界と為せ!

 《闇魔導》。《光魔導》と同系統のいわゆる魔導シリーズと呼ばれるスキルの一つだ。他の魔導系スキルと同じく、使用者の深層心理を反映した現象を、それぞれの属性に合わせた形で顕現させて戦いに用いる。

 

「や、《闇魔導》!?」

 

 香苗さんが大変な驚きを見せていた。まさかこの場で自分のスキルと似たものが、ランレイさんに発現するとは思いもよらなかったのだろう。

 魔導シリーズの強力さなんて、他ならぬこの人がすべてを証明している。使用者によって顕現する現象が異なる性質上、一概に言えるものではないが……使いこなした時の戦闘力の高さは、それこそS級探査者にだって至りかねないほどのものだからね。

 

「闇よ、集まれ……!」

 

 俺たちの目の前で、ランレイさんが発動したスキルが形を成していく。彼女の隣に、真っ暗な深淵が煙のように巻き起こり、人の形を取る。

 漆黒で、刺々しいフォルムの漆黒の女体。体格はジェネラルオークにすら匹敵する背丈と厳つさで、けれど無機物な見た目ゆえ、生き物よりかはロボットを彷彿とさせる見た目。

 

 これが、この人型がランレイさんの《闇魔導》の起点なのか。

 深層心理を反映させた、彼女の新たなる力──!

 

「これより先に見せるは、一族伝統の星界拳にあらず。我が写身とともに放つ、新たな時代の星界拳!」

「ぶ、ブルルァ……!?」

 

 怖じけてたたらを踏むジェネラルオークへと、二人──ランレイさんと闇魔導の人型が、ともに左右対称の構えを見せる。

 リンちゃんの星界拳とは異なり《闇魔導》を、いや《念動力》さえも駆使しての星界拳。スキルすら込みで振るわれるそれは、探査者用に特化したまさしくランレイさんだけの新たなる拳法と言える。

 

 新流派を立ち上げた彼女の、開戦の咆哮がダンジョンに響いた。

 

「これぞ、名付けて双魔星界拳!」

「双魔……」

「星界拳……!!」

「ランレイ、あんた……!!」

 

 双魔星界拳。そう名付けたランレイさんの、顔にはもはやなんの曇りも迷いもない。戦闘中はいつだってそうだったが、今回は前以上に精悍さと雄々しさ、そして瞳の煌めきと纏う覇気とが増大している。

 これは1段階上、なんてどころの話じゃないな……風格がこれまでとまるで違うし、超然とした貫禄さえ出てきている。

 

 話を聞くにアンジェさんともども、かなりの期間をモヤモヤと燻ぶらせたまま、戦いだけはし続けていたみたいだからな。それがいざ限界突破となれば、そりゃあ溜め込んでいた分だけ伸びるか。

 ぶっちゃけ、今のランレイさんから感じる力は香苗さんにも匹敵している。実際の強さで言えばまだ香苗さんが上だろうけど、それも今後次第ではわからないと、そう思わせるだけのエネルギーの高まりはあった。

 

「……シェン・ランレイ、行くぞッ!!」

 

 新たなスタイルの試し打ち。戦う前からすでに敵を圧倒しているランレイさんと人型が、まったく同じタイミングながらも、それぞれ異なる軌道で踏み込んで駆け出した。

 一瞬で距離を詰めるランレイさんは当然のこと、《闇魔導》の人型もまた、瞬時にジェネラルオークの背後に回り込んでいる。

 

 早い……! 人型のスピードに目を剥く。

 ランレイさんはもちろん、リンちゃんにもよく似た体捌き。俺にとっても何度も見たことのある身のこなしを、スキルで形成したに過ぎない人型が再現している。

 それはつまり、星界拳の技術をあの人型は振るっていることになる。星界拳士がこの場にもうひとり増えたのも同然だ。

 同じく驚いた様子でアンジェさんが、声をあげていた。

 

「あの影、完全にランレイと同じ動き方をしてる……!?」

「写身とまで言うのだ。あの人型はおそらく、ランレイとまったく同等の技術で戦えるのだろう。実質的に彼女は、一人で二人分の星界拳士というわけだ」

「一人でさえとんでもないのに、それが追加されたわけですかー……」

 

 戦慄してリーベが震える。見ればヴァールもいささか顔色が優れないし、香苗さんも口元が引き攣っているようにも見える。

 まあ……星界拳士の強さはもう、すっかり骨身にしみてわかってるからね。それがここに来てランレイさんが、実質分裂して二人がかりで蹴りかかるスタイルに移行したのだ。その衝撃たるや、歴戦の面々をして絶句させるにあまりあるってとこか。

 

「さあモンスターよ、新たなる星界拳を受けるがいいッ!」

「ブ──ブ、ブロルルルルルルルァァァッ!!」

「遅いッ!」

 

 ジェネラルオークが咄嗟に剣を振るうのを、ランレイさんのカウンターが制した。雄叫びをあげて剣を振り上げた瞬間、右足刀が鋭く空を裂いたのだ。

 ぞぶり、とモンスターの肩口にめり込む足。刃物よりなお鋭利な切れ味を持つ星界拳の蹴りが、剣を持つ腕を肩口から突き刺し、その動きを止めた。

 

「ブロルラァッ!?」

「ゆくぞ、双魔星界拳──ッ!」

 

 思わず剣を手放し落とし、痛みに顔を歪めて苦悶する敵に、続けてランレイさんは追撃の蹴りを放った。

 今度は《闇魔導》の人型も同時だ。正面と背面、2方向から星界拳の蹴りが乱れ打ちされる──!

 

「ッシャアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「ぶべっ!? ぶる、ろる、るぉるぁっ!?」

 

 息もつかせぬ怒涛の乱舞。蹴りの雨が、ジェネラルオークを前から後ろから攻めたてる。

 言うまでもないが一撃一撃が必殺の威力だ。それはランレイさんはもちろんのこと、《闇魔導》の人型も彼女のコピーと言えるゆえ、同等の威力があるのだろう。

 

 そんなオーバーキルを都合10秒ほどたっぷりと浴びせたあと、ランレイさんと人影は鏡写しの構えを取った。片脚で立ち、軽く浮いてから……全力の足刀を、崩れ落ちていく敵の首にぶち当てる!

 

「双魔ァッ! 星ィィィ界ッ! 断ッ絶ッ拳ッ!!」

 

 寸分違わず前後から一点、首をめがけて放たれた蹴り。

 言うなれば上下から迫るギロチンのようなそんな技が、ジェネラルオークにクリーンヒットした。

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― 新着の感想 ―
HUNTER×HUNTERの二重身(ダブル)だね。
[良い点] 別の自分、で分身して攻撃すれば手数が倍!威力も倍!倍々役満だァー!!ってノリなのかw [一言] むごい
[気になる点] ぼっちを拗らせて分身を産むに至ったか… そうだね、分身が居れば二人だもんね… 誰にもぼっちなんて言わせないよね…
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