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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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悪魔のタンポポ

 地下7階層目まで下った。時間にして大体3時間弱が経過している。時刻は現在、18時前。

 この調子で行けば20時前には最奥につくかな? というペースで、多少の遅れはあるものの全体としては問題の少ない、そんな行程となっていた。

 

 相変わらずダンジョン内を、プリズムコール・ソーラーレイの優しい光が照らし出す。そんな道を歩きがてら、ヴァールがポツリと呟いた。

 

「次の部屋はワタシがいこう。少しくらいは運動せねばな」

 

 基本的にアンジェさん、ランレイさんが最前線で進撃している俺たちだが、たまに俺や香苗さんが担当したりもしている。ひたすら見てるだけってのもなんだしね。お二人の休憩がてら、というわけだ。

 そんな中でのヴァールの参戦。たしかに探査前、ちょっとは戦闘に参加するかも的なことを言っていたんだけど、ここに至るまで参加していなかったもんだから、てっきりもう戦闘はしないかと思っていたな。

 

 リーベがほへ? と間の抜けた声を出して、彼女に話しかけた。

 

「あれ? あなたが次、やるんです?」

「アンジェリーナやランレイの戦いぶりがみごとゆえ、見守るに留めてきたがな。もうこのダンジョンも終盤だ、一度くらいは戦っておこうと思ったのだ。探査するのも戦闘も、今となってはほとんど機会がないからな」

「立場上、そりゃそうですよねー。それを思うと、マリーお婆ちゃんが特殊なだけですかー」

 

 納得して頷くリーベ。まあたしかに、ヴァールもそうだしソフィアさんも、ダンジョン探査に自身が乗り出すなんてことはもうほとんどないんだろう。

 国際組織WSOの理事会役員が未だに前線に出張るなんて、普通はあり得ない話だしな。御年80を超えて、特別理事なんて役職にいながらも普通に探査者活動やってたマリーさんは、はっきり言えば異端と言えた。

 そのへん、孫娘たるアンジェさんも苦笑いの様相だ。

 

「お婆ちゃんはねー……正直これ言うと語弊があるかもだけど、人間やめてるわよあのスタミナというか元気」

「マリアベールは最後まで現場主義だったな。ワタシもソフィアも、あの年まで戦い抜いた探査者の例は他に知らない」

「ようやく引退したらしたで、今度はあちこち旅行プラン考えてるんですよ? 特に日本各地をうろつきたいって、ウキウキで毎日スマホ触ってるんですから!」

「パワフルですね……」

 

 慄く香苗さんに、俺も思わず頷いた。

 いや本当にパワフルだな! 引退してから半月くらいしか経ってないじゃんあの人。

 日本各地をうろつくってのは、時代劇フリークらしいマリーさんならではだけど、ちょっとはホームで落ち着くとかしてもいい気はするなあ。まあ、元気なのは何よりだけれども。

 

「探査者であってもなくても、マリアベールはマリアベールということか。あの子らしい話だ……と、さてモンスターか」

 

 微笑むヴァールが、しかして道を抜けた先、見えてきた部屋にて待つモンスターへと意識を向けた。

 ダンジョン内の地面に根を張る、一輪の巨大な花。2mはある毒々しい色合いのそれが部屋のど真ん中に咲き、こちらを向いている。

 ランレイさんがあっ、と声をあげた。

 

「あ、あれってベリアルダンデライオン、です……よね? あれ。猛毒の消化液で人間だって溶かしちゃう、A級モンスターの中でも一際危険な」

「うむ、あの姿はたしかにそうだな。WSOが指定する特定有害モンスターでもある。二人とも、写真を撮っておけ」

「へー、初めて見た」

 

 言いながらも写真をパシャパシャ撮りだすアンジェさんとランレイさん。何? なんなのいきなり? 突然の撮影会にびっくりだよ怖ぁ……

 そんな俺に、香苗さんが説明してくれた。

 

「A級のごく一部、WSOによる特定有害指定を受けているモンスターがいます。人間に対して極めて攻撃的で危険な方法で攻撃をしてくる、いわば要警戒モンスターのことですね」

「あのベリアルダンデライオンとかっていうのも、その一体?」

「ええ。そしてその手のモンスターに遭遇した場合、探査者は規則に則った行動を取らなくてはいけません」

 

 特定有害指定、なんて初めて聞いたんだけど、どうやらA級界隈での話らしい。A級探査者は数が極端に多い分、独自の文化を構築していると以前に聞いたことがあるし、その一つということなんだろう。

 要警戒と認定されたモンスターであるそうしたモノたちに遭遇した際、まずすべきこと。一つ、と指を立てて香苗さんは続ける。

 

「速やかに安全を確保し、可能であれば探査を中止。該当モンスターの写真や動画を録画した上で帰還し、全探組およびWSOに報告するのです」

「えっと、それは普通に倒せる場合でもですか?」

「ええ。探査者個人が、判断を下すことを許されないレベルで凶悪なモンスター群ですからね」

「それじゃリーベちゃんたち、ここまで来て引き返すんですかー!?」

 

 リーベが悲鳴をあげた。そりゃ、何時間とかけてここまで来たのに探査中断ってのは、よほどじゃない限りガックリ来るよな。

 だがその声に応えたのはヴァールだった。いや、と否定し、説明を引き継ぐ。

 

「特定有害モンスターは探査者からの報告を受け次第、速やかにWSOの職員、もしくはWSOの委託を受けた探査者による指揮下で討伐隊が結成、投入される。だが今回の場合、ワタシがいるからな。一々戻らなくてもいい」

「ええっと……いいのか? それ」

「特定有害モンスターの第一発見時にWSO職員が居合わせた場合、探査者はその職員の判断に従う規則があるからな。めったにない事例だが、今回のようなことがあると設けておいてよかったと感じるよ」

 

 正直、探査者規則なんて新人教育の時に受けた要点説明のところしか覚えてないし……そんな特定有害モンスターなんて、聞いてないし……

 と、さすがは統括理事ゆえか規則を暗誦してみせるヴァールに若干の申しわけなさを覚えつつも俺はへー、そーなのかー。と頷く。

 つまりはヴァールの判断でいい、ということなんだろう。納得!

しばらく一日2回投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] ベリアルか、他にも6体くらい大悪魔の名前を冠したモンスター居そう
[一言] なおそのタンポポは自発的に攻撃してこなくなっている模様……
[一言] そういう規則って要点さえ覚えとけば大抵はどうにかなるから、全部は覚えてないものですよねぇ。会社然り法律然り……
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