専用BGMが流れそうな星界拳
2022/05/24 15:05
ランレイの技「サイキックハンドスマッシュ」を"敵の動きを止めて宙に浮かす"から"敵の動きを止める"に変更しました。
お手数おかけしますがよろしくおねがいします。
何度見てもびっくりするほどの変化。迫真の叫びとともに凛々しく猛々しい顔つきへと移行したランレイさんに、俺も香苗さんもヴァールもリーベも、なんとも言えない表情を浮かべるばかりだ。
この人のこれはもう、本人にその気はなくとも客観的に見ると二重人格みたいなもんだと思う。
唯一、昔からの知り合いゆえにもう慣れっこなんだろうアンジェさんは一人、彼女に声を投げかけていた。
「ランレイー。あんたまだ手の内を全部、見せてないでしょう? 御堂の度肝を抜くなら今じゃないの?」
「…………ふっ。助言感謝する! 元よりミリオンスネークは、我が闘争に絶好の相手であったッ!!」
応援、というかアドバイスだな。彼女をよく知るアンジェさんならではの言葉で、ランレイさんもニヤリと笑って高らかに吼える。
手の内を、全部見せていないか……だろうな。探査前に見させてもらった彼女のステータスと、スキルを思えばたしかにランレイさんはまだ、手の内を見せてはいないだろう。
ヴァールが小さく、そのスキルを呟いた。
「《念動力》か。あれを駆使しての星界拳の必中こそが、ランレイのスタイルということだったな」
「そうでしたね。正直、《念動力》なるスキルを見たことがないので、興味深いですね」
そう、《念動力》だ。ランレイさん曰くサイコキネシスとのことだが、それを使って敵の動きを止め、確実に星界拳を当てるというスタンスでこれまで戦ってきたと聞く。
どんな感じなんだろう。香苗さんじゃないけど、俺も結構興味をそそられる話ではあるな。
おそらくは彼女の本来の戦闘スタイル。妹のリンちゃんとは別の形で星界拳を追求した、新たなる形の星界拳。
探査者としての星界拳のあり方を、あるいはこれからランレイさんが見せてくれるのかもしれない。
────そう思った、その時。
ミリオンスネークの無数なる蛇の頭部が、おもむろに彼女を向いた。
「!!」
「ぬうッ!」
瞬間、やつの口から毒液が吐き出される! 一頭から出される量はわずかでも、それが無数となればもはやそれは雨、大雨だ!
緑の、どう考えても触れるとろくなことにはならなさそうな液体がランレイさんへと襲いかかる。
「ランレイさん!」
「心配、まことにありがたく。しかして問題はないッ! 星ィィィ界ッ!! 風ゥ壁脚ゥッ!!」
思わず叫んだ俺を肩越しに見、にわかに微笑みかけ。彼女はその場を一歩とて引くことなく、驚くべき技を披露した。
片足立ちになり、まるでしなる鞭のように足を振り回す──そして巻き起こる大風。
彼女の前方に、空を切る蹴りが暴風を引き起こしたのだ。そしてそれが、襲い来る恐るべき毒雨をすべてはじき返した。
「!?」
「馬鹿な……」
「怖ぁ……」
あまりに現実離れした光景に、さしものヴァールも呆然とせざるを得ない。お前が使命を託した一族、ちょっとどころじゃなくすごいね。
今、ランレイさんは蹴り一つで自然現象を引き起こしたのだ。暴風を発生させ、それを以てバリアーとした。言うまでもなく通常、人間の身体能力では引き起こせないはずの現象だ。ていうか、やってることがほとんど《風魔導》並だ。
「せ、世界観が違いますね、シェン一族というのは……」
「ふっふーん、そうでしょそうでしょ!? でも本番はこれからよ、ねえランレイ!!」
「うむッ……! 御堂香苗、我が憧れ、我が目標! とくと見るがいい、これが今、放てる私の最強奥義!!」
あの香苗さんすら啞然とするその御業。アンジェさんが我がことのように鼻も高々、自慢げに友を誇った。そして矢継ぎ早、彼女を促す。
応えてランレイさんは、両足を大地に強く、踏みしめた。
「スキル《念動力》──サァァァイキックゥッ!! ハンドスマァァァッシュッ!!」
「!?」
そしてミリオンスネークに向け、まるで殴りかかるように右の掌を向け、雄叫びに近い叫びをあげた……途端、ピタリと静止する敵の姿。
《念動力》。翳した手の先にあるものを、動かすも止めるも自在に操るスキル。効果こそシンプルだがこれほど応用が効くスキルもなかなかないだろう。
「射抜くぞ、その尻尾ォッ!! トアァーッ!!」
天高く飛び、ランレイさんは続けて吼えた。敵の全体像を見下ろす形にしてついに見えた、致命的な弱点であるミリオンスネークの尻尾。見た目は完全に蛇尾なんだが、あの部分にこそ敵の命が宿るらしい。
そこから放つ星界拳。《念動力》の力か手が翳されておらずともピタリと動きを停めているため、モンスターにそれを避ける術はなく。
命中率100%の中を、威力を研ぎ澄ませることにすべてを注いだランレイさんの技が、炸裂する──!
「奥義ッ!! 星ィィィ界ッ! 五帝けぇぇぇぇぇんッ!!」
流星さながら振り下ろされる右脚、星界五帝拳。当然足先は足刀、岩をも鉄をも金剛をも断ち切る豪脚!
凄まじい勢いでのその蹴りは、当然のようにミリオンスネークの無数の頭部を蹴散らし、ついには胴体まで容易くぶち抜いて。
「っ!? ッ──!?」
「尻尾ごとッ! その命、もらい受けるッ!!」
その先に隠れていたもの、つまり弱点の尻尾さえも捉え、ぶち当て。
千切るどころか、爆散させてやつを仕留めることに成功していた。
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