表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

338/1848

それぞれの夏の夕暮れ

「で、その時撮ったプリクラがこれですねー? かーっ、いいですね青春しててー!」

「きゅーきゅー!」

 

 俺と梨沙さん、二人密着してピースしてるプリクラを見て、キャーキャー喚くリーベとアイ。アイはともかく、今時のギャルよりよほどやかましいなリーベ……などと逆に感心すら覚えながらも、俺もプリクラを見る。

 二人ともほんのり頬が染まっている。俺は言うまでもなく女の子とこんなふうに密着したことで緊張していたし、たぶん梨沙さんもそうなんだろう。

 

 彼女の性格から考えて、男と寄り添って写真なんて相当に勇気のいる行為だったろう。

 それを思えば、誘ってもらえたことに今更ながら男としての嬉しさとか鼻高々って気持ちが湧いてくる。いやほんと、いい一日だったなあ。

 

 そう、クラスメイトや新しく知り合った人たちとの遊びの時間も終わり、今は家に帰還しての自室。

 晩飯も食って、風呂にも入って歯も磨いて、アイを抱きしめてのんびりしているところにやってきたリーベ相手に、今日のアレコレを話しているところだった。

 プリクラ一つにめちゃ興奮してるリーベが、紅潮させた頬のまま言う。

 

「それで? 帰りには梨沙ちゃんをお家まで送り届けたと?」

「ああ。うちの倍はある大きな家だったよ。さすがに香苗さんとこのご実家みたいな、庭園付きってわけでもなかったけど、かなりお金持ちオーラはあったな」

 

 帰り、夏の夕暮れで周囲はまだまだ明るいとはいえ危ないからと、俺は梨沙さんを家まで送り届けた。

 松田くんたちがやたらそうしろそうしろと囃してきたのもあるし、俺自身、梨沙さんに万一のことがあったら嫌だからね。二つ返事で頷きましたよ。

 

 夕陽に照らされる彼女の横顔を、なんとなく女神ってこういうのかなーとか思いながらも辿り着いた先にあったのは高級住宅街の中、一際目立つめっちゃ大きな西洋風の豪邸だ。

 いやね、もうね。薄っすら察していたから正直やはりか! と思いましたよ。花も恥じらうJKギャル梨沙さん、まさかまさかのお嬢様だったんだもの。

 

「……まさかそれで気後れして変に彼女と距離を置いた、とかはないですよね?」

「そんなわけあるかよ。家庭環境関係なく梨沙さんは梨沙さんだ。面食らったのは認めるけどな」

「きゅ〜きゅう〜」

 

 ジト目のリーベに反論すると、彼女はご満悦に花丸笑顔で頷いた。お前は一体どういう立ち位置からその反応してるんだ。

 胸元に擦り付いているアイもなんだか気分良さげに鳴いている。こっちはこっちで今日一日、優子ちゃんにひたすら愛でられ可愛がられて相当、満足したらしい。優子ちゃんもホクホク笑顔だったので誰一人損していない。平和かよ。

 

 ……もっともそうするきっかけとなった、うちの父ちゃんは悲惨の一言だったが。

 深夜に泥酔して帰ってきて香苗さんや宥さんに身内の恥を晒したことで母ちゃんは、マジで一日ブチギレていた。俺が帰ってきてもまだキレてたんだから、下手すると過去一のキレ具合かもしれない。

 

 ひたすら謝り続けている父ちゃんが哀れなような自業自得なような、なんとも微妙な心地になったよ。

 子供にそんな姿見られるのも辛いだろうと、早々にこうして退散してきたわけだが。明日には仲直りしてるだろうとは思いたいものである。うん。

 

「向こうのご両親にも軽く挨拶して、そんで帰ってきたんだ。プール周りではトラブルもあったけど、まあ楽しかったよ」

「それはよかったですー。いやー、こっちも結構、楽しかったですよー」

「そうなのか? そっちはどうだったんだ、宥さんの探査」

 

 一通りこっちの一日は話し終わったので、今度はリーベの今日一日を聞いてみる。

 宥さんの探査をアドバイスする名目で、香苗さんも含め三人でダンジョンに潜ると聞いていたが、どうなったんだろう?

 

「普通の探査者の戦い方ってこんなんなんだなーって、新鮮でしたよー。モッチーは守備一辺倒の典型的タンクですから、防御技術が意外に高くて」

「へえ。《防御結界》に《身代わり》まで持ってるんだし、ドラゴン騒ぎの時に防御型なのはわかりきってたけど、そんなにか」

「いわゆるパリィとカウンターがすっごい上手だったんですよー。動体視力も運動神経も頭もいいから、予知じみた先読みで敵を封殺する技に長けてるんですねー」

「……えっ、マジですごいな!?」

 

 予想以上にすごい話を聞かされて驚きだ。宥さん、実力はあると思ってたけどリーベがそこまでいうほどなのか。

 パリィにカウンターとはまた、なんとも渋カッコいい戦い方だ。それに先読みが合わされば、なるほどそこらのモンスターなら問題なく封殺できるんだろうな。

 

「剣と大盾を用いての探査スタイルなんですけどねー、どちらかというと大盾でのシールドバッシュが得意技みたいで、パリィして弾いて、カウンターで盾を叩き込んで始末する戦法が基本でしたー」

「そうなのか……なんていうか、予想外なパワーぶりだな、なんか」

「小柄でも大型モンスターを吹き飛ばす姿はさながら重機でしたよー。そのうち公平さんも目にする機会、あるかもですねー」

 

 そう言ってリーベは笑った。

 ふーむ、宥さんがまさかのパワーファイターか……気になるな、正直。機会があれば見てみたいもんだ。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これはリッチと相性悪い……逃げるにも殿だろうし。
[一言] リーベが話してくれている内容はあくまで表面で、裏では救世主トークで異様に盛り上がったダンジョンアタックだったんでしょ……?
[一言] なるほどもっちーは重量級(途切れる文字と散らばる血痕
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ