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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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大ダンジョン時代の裏側

 炎天下、駅に向けて歩き続ける。大体歩いて30分かそこらの道のりだが、意外と話すことはあった。

 というより、昨日の続きってわけじゃないけど質疑応答だな。雑談がてら、宥さんの素朴な疑問に俺ことコマンドプロンプトくんが答えているのだ。香苗さんとはまた違った視点からの質問は、俺にとっても案外答えていて楽しい。

 

「──すると、回収されたダンジョンコアは粗方、システムさんのもとに返却されている、と?」

「ええ。WSOは本来、そのための組織でもあるんですよ」

 

 今の御時世みんなご存知、ダンジョンを生み出す不思議な宝石ダンジョンコア。探査者であれば身近なものだけど、一般にはほとんど原理の解明されていないその石ころに、宥さんは興味を抱いたみたいだった。

 せっかくなのでちょっぴり突っ込んだところまで答えてみる。この際言っちゃうとWSOが思いっきり関わってるんだよね、この部分。

 

「ソフィアさんとヴァールがトップなのってそのへんも関係してるんです。回収されたコアをヴァールに一旦集約し、定期的にまとめてワールドプロセッサへと返却する。そしてワールドプロセッサの方でコアをリサイクルして、世界中に適当にばらまく。そのローテーションだったりするんですよ」

「WSOの上層部は、そのことを?」

「ヴァールがダンジョンコアを処分するスキルを持っている、くらいは知っているとは思いますけどね。冷たい物言いになりますが、知る必要のない部分ではありますし」

 

 たしか……《system:アセンション》とかいう、システム側用のデバッグスキルだったか。完全にシステム用のスキルで、使用済みダンジョンコアを一旦、製造元のワールドプロセッサに還す効果を持っている。

 これでヴァールはダンジョンコアを還し、リサイクルとリユースを繰り返しているわけだね。

 

「ダンジョンコアの生成自体は、ワールドプロセッサなら簡単にできるんですけど……数が数ですからね。少しでも手間を減らしたいのは、人でもシステムでも一緒ってわけです」

「……ということは、たとえばダンジョンを私的利用している者も本来ならば、WSOを介してシステムさんへ還した方が良い、と?」

「あ、いえ。そこまで徹底させる気はないですよ。なあ、リーベ」

 

 香苗さんの質問に、リーベにも同意を求める形で答えてみる。大ダンジョン時代の仕組みについてはコマンドプロンプトより精霊知能、とりわけアドミニストレータ計画を立案したリーベの方が詳しいからな。

 頷いて、彼女が続けて説明した。

 

「あくまで再利用ですからねー。人間社会に出回るには危険度の高いB級以上のダンジョンと、あとスタンピードなどを引き起こすおそれのあるエラーダンジョンのコアも回収対象ですねー。エラーダンジョンのコアは再利用というより、一旦完全に分解して資源を流用するって形になりますけどー」

「それに私的利用っても探査者しかできませんからね。ダンジョンである以上、スキルを持たない者は進入できませんし」

「ダンジョンコアの所有権と所在については、WSOでも全探組でも厳しく管理しているそうですから。悪用などしたら即座に足が付きますね」

 

 ダンジョンコアを巡る所有権とかそのへんの話は、実のところそんなに詳しくないけれど。ソフィアさんやヴァールの作り出した仕組みだからそう、問題が頻発するものじゃないだろう。

 そう思っているんだが、香苗さんはどこか憂いげだ。話を聞いてみると、これまた微妙に厄介そうな話が出てきた。

 

「昨日、伝道中にアンジェリーナから聞いた話なのですがここ数年、闇ルートでダンジョンコアが出回っているそうなのです」

「闇ルート? WSOを介さず、コアの売買が行われていると?」

「ええ。無断で探査を行うまではともかく、手に入れたコアを組合にも渡さず、自分で取り扱う者たちがいるようで」

 

 なんとも初耳な話だ。リーベも目を丸くしている。

 コアなんてもん、闇ルートでやり取りしてどうするつもりなんだ? 悪用するにしても探査者以外には大したものでもないだろうに。

 不思議がる俺に、香苗さんはその手口を話してくれた。

 

「スキルを持ちながら、探査者として登録していないモグリの能力者。そうした輩が裏社会で組織を組み、ダンジョンコアを集めているとのことです。目的は定かではありません……アンジェリーナは今回、その調査のためにも来日してきたと話していました」

「モグリ……探査者登録の義務を破っているんですか」

「ええ。世界的に見てもそうした能力者たちは、少ないながらも各地にいます。それが最近になってどうしたことか徒党を組み始めたことで、WSOも全探組も危機感を抱き始めているんですね」

 

 やっぱり、社会ってのは光も影もあるもんだよなあ。香苗さんの話を聞いて、なんとも言えない複雑な気分だ。

 どうしたって制度の隙間は生まれるし、それが一つの社会や縄張りを形成していくこともある。まして100年続いた大ダンジョン時代、それ相応の規模である以上、裏側もまた、それ相応なんだろう。

 

 コマンドプロンプトとしては、なんでもいいからとりあえずモンスターを倒してやってくれってくらいのもんだが、山形公平としてはなあ。

 お天道様に顔向けできないようなことはしちゃいかん、なんて思っちゃったりしちゃうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、何気に気になってた話題だ、スキルに覚醒していながら隠してる人とか居るんかな?ってのは物語初期から気になってた。 闇組織に入る以外にも、探査者関連に関わりたくないってので隠してる人とかも…
[一言] ダンジョン担当精霊知能「最近コアの数が微妙にあわない」再計算中 後輩精霊知能「ワールドプロセッサ様に報告と調査依頼しましたので休みましょう」
[一言] 他の方のコメント読んで気が付いたけど、「伝道中に」というのを何の違和感もなく読みとばしていた…怖ぁ
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