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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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307/1843

SでもFでも火炎放射器でも持ってこいやぁ…

 神谷さんとの質疑とか、なんか不穏な内ゲバ事情なんかを聞きつつも、祝勝会は和やかに進む。

 もう大体の料理は食べ終わったが、こうなると大体のパーティーってそうなんだけど、席を移動しての雑談なんかが始まるのよね。

 俺とかソフィアさんみたいな上座の人たちはあんまり動く気配もないんだけど、やはりお偉いさんとの繋がりは持ちたいのか、何人かの探査者はひっきりなしにこちらの方に挨拶とか、話をしに来ていた。

 

「チェーホワ統括理事、ご無沙汰してます! マリアベール筆頭理事の孫、アンジェリーナです」

「ああ、アンジェちゃん! 大きくなったわねえ! 何年ぶりかしら? 20年ぶりくらい? 昔みたいにソフィアお姉さんで良いのよ?」

「15年ぶりくらいですね。ソフィアさんはお変わりなく……いや本当、昔とまるで変わってないですね……」

 

 幼少時に面識があったらしい、アンジェさんとソフィアさんがにこやかに話している。いや、アンジェさんの方は若干の戦慄が見えるな……まあ、ヴァールの肉体ゆえか150年変わることない美貌なんだ、普通に考えたら妖怪か何かって感じではある。

 ソフィアさんの隣に座るマリーさんが、ファファファと笑って言った。

 

「娘のエレオノールはスキルが発現しませんでしたが、なんでか孫のアンジェリーナには発現しましてね。15歳の時ですから、かれこれ5年は探査者やっとるんかね、アンジェ」

「まあね。一応A級だし、界隈でも結構、上澄みだっていう自信はあるよ」

 

 鼻も高々って感じでアンジェさん。たしかに、5年でA級ってめちゃくちゃスピーディーだ。トントン拍子の出世と言っていいレベルじゃないか?

 B級までは割合、サクサク昇級できるそうだけどA級の壁ってのが中々、要求レベルの高さから難しくなってくるらしいとは以前にも香苗さんから聞いたことのある話だ。

 

 たしか……レベル250を超えたあたりから実力的にはB級最上位からA級下位くらいの範囲なんだったか。A級のレベル上限が香苗さんの700前後なので、実に250から700と450ものレベル差が、A級という括りの中で存在している。

 さすがA級だけで独自の文化ができている、と言われるだけはある極端具合だ。なんならS級なんて、700以上から上限なんてないためもっと極端なんだろう。たしかマリーさんが1400とか1500とかってレベルで、香苗さんの倍はあるわけだしね。

 

 とはいえ、レベルが高いから級も高い、というわけでもないのがね。

 実績も相応に積み重ねていることも当然、上級探査者として認められるに必要な要素らしいのだから、そこを考えてもやはり5年でA級ってのは相当すごい。一体、どれだけの数のダンジョンを踏破したんだろうなあ。

 そこばかりは、いかにレベル600を普通に超えている俺でも敵いようがないところだ。アンジェさんの努力や熱意を、率直にすごいと感心する。ソフィアさんも、そんな彼女を褒め称えていた。

 

「5年でA級はすごいわね、アンジェちゃん。マリーちゃんでも10年はかかったのに」

「本当ですか!? あのお婆ちゃんが……?」

「私ゃ、下積みが長かったからねえ。探査者の評価制度も今ほど厳格じゃなかったもんだから、中々陽の目は見れんかったさね」

「50年前までの探査者界隈……あの頃は本当、大ダンジョン時代開始直後よりマシだったけど、それでもいい加減なものだったわねー」

「反面、今じゃアウトなやり口でも大体は許されたもんですし、融通は昔のが利いてたんですがねえ。ファファファ!」

 

 しみじみ呟くソフィアさんと、昔も悪くなかったと大笑するマリーさん。見ればサン・スーンさんや神谷さんも横で聞いていて、苦笑いなど浮かべている。

 なんとも実感のこもった、年季を感じさせる話だ。大ダンジョン時代が始まって以降のことは、すでに輪廻の輪に乗って転生を開始していたのでよく知らないけど、山形公平が探査者になる際に受けた新規探査者教育でそのへんの大まかな歴史みたいなのも、一応は習っている。

 

 たしか50年前に今ある探査者界隈の基盤がほぼ、完成したんだったか。それまでは試行錯誤の連続だったようで、各地でトラブルが絶えなかったとも聞く。

 当たり前だがものごとの成り立ちとは、最初から完成されているわけがない。様々な失敗や実験の繰り返しで徐々に、成立していくものなんだなぁと改めて思う。

 

「ま、今でも評価制度は完璧とは言い切れんがね。私からすりゃ、公平ちゃんや御堂ちゃん、フェイリン嬢ちゃんなんてのはとっくにS級でなきゃ実力と釣り合いが取れてないってなもんさね。世に出せないだけで、これ以上ない実績だってあるってのに」

「世に出せない時点で、世間の評価には値しないのよね……心苦しいけれど、そこばかりはね」

 

 文句を付けるマリーさんに、苦笑してソフィアさんが取りなした。さすがにソフィアさんの仰るとおりで、表向き特に何もないのに実績があることにして評価なんて、それはさすがに無理筋だろう。

 ていうか香苗さんやリンちゃんはともかく、俺なんてもう別に、級なんてSでもFでも構いやしないんだよなあ。500年の大願も果たしたし、なんなら本来なら消滅していたし、もっと言えばそもそも人格すらなかったはずの俺だし。

 まあ、せっかくだし評価されるってんなら評価されとくけれども。正直なんでもいいやってのが俺個人の見解だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実力と実績の乖離は色々なところで取り沙汰される問題ですよねぇ
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