表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/1849

シャイな兄貴とシャイな姉貴とシャイ(ニング)な山形

 ハオランさんとランレイさんまでは予想していたっていうか事前に聞いてたけど、まさか長老さんまでリンちゃんのご家族さんとは思いもしていなかった。

 てことは、リンちゃんってシェン一族が長老の娘ってことになるのか。その上で星界拳の正統継承者とはまた、盛りに盛ってる感じがすごいわ、色々。

 

「もー、兄ちゃんはともかく姉ちゃん! せっかく里を出といてまだ、そんななの!?」

「そ、そんなってひどい……わ、私だって頑張ってるし……」

「俺はともかくってなんだ……」

「ハオラン、お前はもう諦められとるんじゃよ」

「…………」

 

 ひどい。お兄さん塩の柱になりかけてるじゃん。優子ちゃんという妹を持つ身として、ハオランさんのショックは決して他人事ではない。

 しかしそうか……ハオランさんもランレイさんも、ちょっとその、人付き合いが苦手なタイプの人たちなんだな。背の高い美男美女という組み合わせでそれというのは、ギャップもあってかかなり親近感と好感度が上がるわ。

 

 向こうも向こうでチラチラ俺のことを見てきている。おそらく路地裏の雑草みたいな俺と、波長の合うものを感じてくれているのかもしれないぞ。

 俺もなんとなし、チラチラと見てみる。あっ、ハオランさんと目が合った。

 

「どうも」

「は、はい……あの。いつも妹、お世話に……」

「あ、いえ。こちらこそ……日本語お上手ですね」

「あ、ありがとうございます……日本、興味ありましたので」

「おっかなびっくりなやり取りだねえ」

 

 マリーさんが呆れて俺たちの交流を見ているが、会話の立ち上がりとしてはまずまず好調だと思うんですけど、そこんとこどうなんでしょう?

 そしてランレイさんもそんな俺たちに触発されたか、覚悟を決めた表情で近付いてくる。俺、ハオランさん、ランレイさんの三つ巴の距離で立つ形だ。

 

 いや待って、せめてあんたら兄妹は並んどこうよ。なんでお二人の間すら微妙にぎこちないんだよ。

 

「お、お噂はかねがね! あの、我が、私の好敵手が絶賛のめり込み中の救世主だとかなんとか!」

「好敵手……香苗さんのことですね。フェイリンさんからお聞きしていましたけど、本当にライバル視されてらっしゃるんですね、ランレイさん」

「は、はい!? かっ、かなっ、名前でっ!?」

 

 がーん! とショックを受けた風なランレイさん。たぶんだけど俺が御堂さんでなく香苗さんと呼んだことに、自称ライバルとして思うところがあるんだろう。

 目をぐるぐる回しながら、真っ赤な顔で彼女は捲し立てた。

  

「は、はわわはわ……や、やっぱりデキてたんだ……! 急に年下の男の子を執拗に配信し始めて、やたら熱心に語るなんてアヤシイって思ってたら……! こ、この人たちデキてるんだっ!!」

「何が!?」

「姉ちゃん、落ち着く!」

「はうっ! す、すみません!!」

 

 あんまり見かねたのか、リンちゃんがランレイさんを止めた……脚で。

 めちゃくちゃゆっくりだから手加減は明らかにしてるんだけど、それでもズドン! って感じの重い蹴りがお姉さんの脇腹に刺さる。

 さすがに探査者、それもA級探査者ゆえかそこまで堪えた様子もないが、我に返ったみたいでランレイさんは、あたふたと俺に謝ってくる。

 

 うーむ、残念感漂うお姉さんだ、なんとも。改めて見るとすごい美人なんだけどな、ランレイさん。

 染めているのか緑髪で、黒縁の眼鏡なんて掛けてるのが一歩間違えると野暮ったい印象になるはずなのに、顔立ちがあまりに良すぎて却ってチャーミングさを増している。

 服装も、ダメージジーンズに白地にカラフルなデザインのプリントがされたシャツ、涼し気な青色のパーカーなんか羽織った都会風のファッションで、モデルさんって言われても通じるレベルだ。

 

 どことなくリンちゃんのファッションセンスと似通うところがあるのは、やはり姉妹ということだろう。

 そんなランレイさんなのに、言動が伴うとこうまでこう、残念な感じになるのはある種の神秘ですらあるなあ。

 

「山形さん、ごめん……ランレイ、妹、馬鹿」

「い、いえいえそんなことは。は、ははは」

「はは、ははは……」

 

 気まずげに笑うハオランさんも、これまた相当な男前だ。

 線が細いイケメンさんで、細くて長い髪型や気怠げな眼差し、それに雰囲気もあってどこか儚い感じにも映る。長身な分、ヒョロっとすら見えるかもしれないくらいだ。

 もちろん彼もシェン一族、身体は鍛え上げられているに違いないのだが、それも今はダボダボのラッパーっぽい服に包まれ分かりづらい。

 関口くんが陽のイケメンとすれば、こちらは陰のイケメンって感じだ。どちらにせよイケメンじゃない俺からすれば目が潰れかねないので、ほどほどのイケメンでお願いしたいところだ。

 

「フェイリン嬢ちゃんはまあ大した腕前さね。ありゃあ間違いなくS級の器だよ。あの歳で見事なもんだ」

「おお、あなたほどの探査者からそのように言っていただけるとは光栄ですのう。末娘ゆえ、甘やかしてばかりでしたが……立派に一族の悲願と使命を果たしたと聞いとりますよ」

「そこはこのマリアベール・フランソワが保証するよ。嬢ちゃんはたしかに世界を救う戦いに、大きく貢献した。あの子がおらなんだらきっと今、私らはこんな風にはできとらんさね、ファファファ!」

 

 そして長老のフェイオウさんとマリーさんがなんか、若人のアレコレからは離れたところで穏やかにお話されている。

 リンちゃん、当たり前だけどすごい高評価だね。たしかに俺の目から見ても、彼女の力量は現時点でもS級に引けを取らないものに思える。

 紛れもなく天才だ。一族96年の集大成と呼ぶに相応しい、才覚と努力の結晶こそが、シェン・フェイリンなんだろうな。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 残念系美人2人目(緑髪コミュ障ぼっちお姉ちゃん) [気になる点] コミュ障に良くある猫背なのか、拳法使いなので背筋が伸びているか。 そこが問題だ(_’
[一言] なお、今のリンちゃんのツッコミを関口君が受けると吹っ飛ぶ模様w
[一言] あれだ、ランレイさんは動いたり喋ったりすると残念になる系美人ですな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ