表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

297/1869

A級探査者の世界

「な、なんなのよもう……! あの御堂香苗が、『虹の架け橋』がこんな、こんな……」

「『虹の架け橋』?」

 

 数分経って、香苗さんの伝道を無理くり引き剥がしてのアンジェさん。息も絶え絶えに、全身を慄かせて今しがた、己を襲った恐るべき狂信者について嘆く。

 香苗さんを抑え込んでどうどうと落ち着かせる俺は、というか虹の架け橋ってなんぞやって、そこが気になっていた。

 

 文脈から察するに香苗さんのこととは思う。《魔導》系のスキルは、使用者の心象を武器にするからそれぞれ形態が異なるゆえ、虹なんてのは香苗さんだけの現象だし。

 とはいえそんなふうに呼ばれるもんなのか。聞いてみると、案外素直にアンジェさんは答えてくれた。

 

「A級トップランカー・御堂香苗の別名よ……! あんたもさすがに知ってるでしょ? あいつの《光魔導》」

「ええ、まあ。虹とか出しますよね」

「その美しさと力強さ、何より御堂自身の実力の高さとルックスの良さからA級探査者内で付いたのよ、そういう二つ名が。私だって、そんな別称が欲しかった。はっきり言えば憧れてたのに……それなのに、今じゃカルト宗教の狂信者だなんて!」

「なんかごめんなさい。本当ごめんなさい」

 

 心底から悔しさとか怒りとかやるせなさとかを見せるアンジェさんに、聞いてるこっちが申しわけなくなってくる。

 虹の架け橋かあ……二つ名なんて文化があること自体、俺は知らなかったけど。香苗さん、そんな風に呼ばれることもあるんだな。

 当の本人は素知らぬ顔で、むしろ迷惑そうにアンジェさんに応える。

 

「二つ名などと、ただの言葉遊びでしかないものに何をそんなにいきり立つのか……そもそもA級独自の面白半分な文化でしょう、そんなもの」

「独自……?」

「ファファファ! A級は数が多くて集まりも変に多いから、やたら独特なルールを持つ集団になっとるんさね、公平ちゃん」

 

 補足めいて俺に教えてきたマリーさんの言葉は、かつてどこかで聞いた覚えがある話だ。

 たしかそう、FからB級までとA級とでは、同じ探査者でも明確に文化が異なる層になってくるとかなんとか。A級探査者がいわゆる一線級の層なので、それ以前の級とは様相が違ってくるらしい。

 

 なんならA級で実力の頭打ちを迎える探査者も珍しくないようなので、最初から異次元の才覚を持つS級と比較してもやはり、独特の集団がA級だとかって聞くな。

 そう振り返ると、香苗さんは肩をすくめ、アンジェさんは強気に笑ってそれぞれ反応した。

 

「レベルを上げて探査を繰り返せば時間はかかろうと、確実にA級へと至れますからね。その関係上、どうしてもA級の人口は探査者全体の中でも最大規模になります」

「A級こそが探査者のメイン層ってわけ! いやまあ、S級になれるんならそれに越したことはないんだけど……さすがにハードル高いからね、Sは」

「なるほど。ある意味、グループが三つに分かれてるんですね、この界隈って」

 

 FからBまでのA級未満と、A級と、S級。

 制度としては細かく区切られている等級だが、実際の界隈の状況としては、概ねこんな感じに三つで区切られているようだった。

 なんとも興味深い話だ、ってのは、ぶっちゃけオペレータでなくアドミニストレータの、もっと言えばコマンドプロンプトというシステム側の存在であるからゆえの視点と感想だろうか。

 感心する俺に、とはいえとマリーさんが語る。

 

「しょせん級なんざ、数値上のレベルと実績の数ばかりの基準にすぎない。フェイリン嬢ちゃんやそれこそ公平ちゃん、あんたみたいな規格外はどんな立場でもちらほらいるもんさね、ファファファ!」

「フェイリンって、ランレイの妹よね。星界拳士の化物っぷりはよく知ってるけど……それに並ぶっての? この子が?」

 

 リンちゃんのことは知っていたらしい──彼女のお姉さんであるランレイさんとお知り合いらしいからそれでだな──アンジェさんが、疑念も顕に俺を指差す。

 正直、めっちゃ分かるよ。これがたとえば関口くん並みのイケメンとかだったらまだ、説得力はあったのかもしれないけど。残念ながら俺はごく普通の顔立ちをしている山形くんだ、星界拳士と並んで語るには格落ち感すごいよなあ。

 

 はあ、と深くため息をしてマリーさん。なんとも残念そうに、孫娘を見ている。

 

「見かけしか気にしないから駄目なんだよ、アンジェ。フェイリン嬢ちゃんと並ぶ? 馬鹿言うでないよ、そんなもんで済むかい。公平ちゃんにとっちゃ、私だっていいとこ赤ん坊だろうよ」

「はあ……はあ!? なわけないじゃん、婆ちゃん何言ってんの!?」

「あんたしばらくこのへんで活動するんだろ? いい機会だ、公平ちゃんに面倒見てもらうと良いさね。カッコつけばかりの鼻っ柱、この際だし根っこからへし折られちまいな」

「いやいやいやいやマリーさん、マリーさん?」

 

 何言ってるのこの人?

 当たり前みたいな流れでさらっとアンジェさんを押し付けてきたマリーさんに、俺の方がビックリだよ。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そもそもの役割が違うから比較するのが間違いなんだけどね… まあでもこんだけ持ち上げられても調子に乗らない公平君はすごいよ。
[一言] 狂信者's「公平さん(様)直々に伝道していただけるなんて……」
[良い点] 我らが救世主から教えをいただけるなど、とんでもない栄誉ですよ信徒アンジェリーナ!その高慢にそびえたつ鼻っ柱を秒で粉砕されたならただちに改心し信心を修めその誉れを胸に救世主様のいと尊き教えを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ