表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

289/1850

新たな使徒が誕生しました!

「それでこちらが、次女と三女です。ふふふ、可愛いでしょう? 3歳と2歳で年子なんですよ」

 

 スマホの画面に映る、愛らしい子供が二人。幼児服を来て、抱きしめあって笑っているのがたまらない写真だ。

 ベナウィさんのご家族の中でも最年少らしい二人、次女ちゃんと三女ちゃんを収めた画像を、今俺は見せてもらっている。

 

「おおー、可愛い盛りって感じですね。今、日本に?」

「ええ、なんなら祝勝会にも来ますよ。関係者の家族は大体来るはずですし」

「そうなんですね。まあ、うちも家族が来ますもんね」

 

 そう、今日の祝勝会は関係者のご家族方も来る。たとえばベナウィさんは一家総出だし、香苗さんのところは残念ながら都合が付かなかったみたいだけど、望月さんのご両親も来られるらしい。

 マリーさんなんて非探査者の娘さんと、A級探査者のお孫さんを連れてきたって話だ。そもそも俺んとこも、一般ピーポーで恐縮だが山形家だよ全員集合って感じである。

 

「そっかあ……楽しみですよ、お会いできるの」

「妻はじめ家族もみな、ミスター・公平の話を聞いてひと目見たいと楽しみにしていました。うちの長女などミス・御堂の動画配信を見て、救世主のファンになっているほどです」

「そっ…………そ、そうですか」

 

 怖ぁ……絶対口に出せないけど、一瞬で会いたい気持ちが半減してしまった。

 救世主のファンってあなた、香苗さんの例のチャンネルのリスナーってあなた。完全にそれアレじゃないですか、啓蒙されちゃってるじゃないですか。

 ちら、と張本人であるところの伝道師さんを見る。

 

「そうですよそもそも考えればあなたこそ我々救世の光の幹部にふさわしいじゃないですかだってそうでしょうあなたは精霊知能でありその上役たる存在がシステムさんことワールドプロセッサならばそのワールドプロセッサと並び立つというコマンドプロンプトこと我らが救世主山形公平様にとってはあなたにしろリーベちゃんにしろ精霊知能とはいわば部下あるいは弟子というべき存在ではありませんかであれば御方の使徒たる我ら幹部格にこれ以上ないほどの適役ではありませんかそう思うでしょう使徒望月」

「はいそのとおりです伝道師御堂高次存在とも言える救世主公平様と同次元の存在かつしかも御方の背負われた使命や苦難をある程度でも共有できるヴァールさんほど使徒にふさわしい方もいませんリーベさんもそうです伝道師を筆頭にした我々使徒の中にあっても一際別格の存在として組織内外でも大きな存在感を示していただき世界に対してより一層公平様の偉大さ尊さ素晴らしさを啓蒙していただくのです」

「ま、ま、待ってくれ。早口すぎてよく分からない、端的に言ってくれ、どういうことだ?」

「あなたは今日から我々組織の幹部として活動するのです」

「意味が分からない……!!」

 

 なんてこった、地獄が繰り広げられている。

 伝道師と使徒による圧倒的勢いの啓蒙行為に、あのヴァールがしどろもどろで冷や汗をかいてドン引きしていた。

 怖ぁ……なんだあの光景は。ベナウィさんが、彼女らを見て呟いた。

 

「ミス・御堂にしろミス・望月にしろ素晴らしい熱意ですね。さすがは、あなたを崇める宗教の長といったところでしょうか。子どもたちがみたら喜ぶかもしれません」

「なんでです!? あの光景見てそんなこと思います!?」

「伝道師による生伝道ですから。ファンにとっては堪らないのでしょう。私からしても彼女らが何を言っているのかは分かりませんが、楽しそうなのは伝わってきますからね」

「そりゃまあ、楽しそうなのは間違いないでしょうけども」

 

 生伝道ってなんだよ。ていうか香苗さんのファンは、そんなものを見て喜んだりするんだろうか? よくわからない。

 推しが趣味に夢中になっているのを、眺めるのが楽しいって話はたまに聞くけど。とはいえ今回の場合、その趣味ってのが新興宗教の救世主を布教する自称伝道行為だ。推しが楽しそうって喜びより、推しが危ない道をひた進んでいるって不安の方が先立ちそうなもんだが。

 

 そもそも子ども相手だと純粋に、教育にしこたま悪い気がしてならない。

 危惧しつつも地獄に目を向ける。ヴァールが何やら、目をぐるぐる回して呟き始めていた。

 

「や、山形公平……コマンドプロンプトを、救世主として讃える……筋としては通っている、気がする。彼が救世主なのは間違いないし、ワタシというか精霊知能にとっては仰ぐべき、最上位プログラムである点もたしかに、そのとおりだ……」

「WSOがそもそもシステムさんの仕込みで組織された点も踏まえれば、つまりはWSOそのものさえコマンドプロンプトこと我らが救世主様を讃える組織であるべきということ。同格たるシステムさんもまあ、讃えるのはこの際、良しとしましょう。結果として公平くんを崇めればそれで良いのです」

「そしてやがては探査者界隈を越え、遍く世に公平様の教えを広げ、真に恒久たる平和を生み出し相互理解と秩序と公正、平和を築くのです。すべてはそう、私たちの救い主の名の下に」

「そ、それは……平和は、良いな……」

「す、ストーップ! 啓蒙ストップ、ストーップ!!」

 

 それ以上いけない、WSOのトップが怪しげな宗教にドハマリしてしまう!

 さすがに見ていられず、俺は慌ててヴァールを助けに行った。

ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そして、イ〇ラ〇教やユ〇ヤ教みたいにあちこちに戦争の火種を作るようになる、と。
[一言] 新人精霊知能「大先輩が追い詰められてる…………怖ぁ」 ちょっと毒されている新人精霊知能「見習わねば」早口言葉一息で言いきる練習中
[良い点] それいじょうはいけない [気になる点] 食べ狂いワープロより性質の悪い侵蝕行為(伝道) [一言] ワープロ「悪い思想じゃないのでヨシッ!」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ