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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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皆さん。僕はね、コマンドプロンプトなんです…コマンドプロンプトなんですよぉぉ!

「えー……と。まずはみなさん、こうした話をさせてもらう機会を俺、あ、違う。私にいただけて、本当にありがとうございます」

 

 まずは立ち上がり、こうした場を設けてもらったことに感謝し、深く頭を下げる。さすがにここで俺はまずい気がしたので私にしたけど、コマンドプロンプトとしても話しするから丁度いいよね?

 言ってしまえば社交辞令の挨拶なんだが、みんな、律儀に会釈なんてしてくれた。うちの家族まで。礼儀正しいよな〜、なんだか嬉しくなる。

 さておき、俺は早速切り出した。

 

「本日は、ここにいる皆様に知っていただきたいことがあり、お話の場を頂戴しました……大ダンジョン時代がどのような経緯で始まったのか。そして、どのような成り行きで終焉したのか、についてです」

「先程も言っていたね……大ダンジョン時代が終焉した? ダンジョンもモンスターも、未だ健在なのだが、どういうのだね」

 

 サン・スーンさんが挙手して発言してくれる。良い傾向だ。何しろことがことだけに、質問意見感想等なければ理解してもらえたかも分かりづらくて不安になるしな。そのくらい、この件は色々と込み入っているのだ。

 百戦錬磨の政治家お爺さんに答える。

 

「ええ、大ダンジョン時代は確実に終わりました。時代を生み出し継続させていた、諸悪の根源たるモノが消滅したのです。人間たちの認識はともかく、私たちシステム側の定義からすれば、間違いなく大ダンジョン時代は終わりました」

「諸悪の根源……邪悪なる思念とかいうモノだな。ソフィア統括理事がかつて、敗れたと言うが」

「いえ、その前に山形さん。あなたはシステム側、とやらの一員と言うのですか? ソフィア様の後継とは聞いていますが」

 

 今度は神谷さん。うーむ、質問が続くな。

 他の人たちも何やら聞きたげにしている。なんならうちの家族のハラハラしてる顔がすごくおかしい。あんたらマジでコメディかよ。

 とりあえずは質問の声を手で止める。言いたげなのは分かるが、ここから先は俺のターンだ。

 

「そのへん含め、順を追って説明します。邪悪なる思念との決戦に参加していた方々にとっては、重複する箇所ばかりとは思いますがご了承ください」

「ファファファ、問題ないよ。サン・スーンに神谷、よーく耳かっぽじって聞くんだよ。今の世界の、私らの時代の成り立ちだ」

 

 マリーさんがうまいことフォローを入れてくれる。さすが年の功と言ったところか、気の利き方が尋常じゃない。

 一同静かになる。コホン、と咳払い一つして、俺は話し始めた。

 

「……すべての始まりは、500年前にまで遡ります」

「500……?」

「そう、500年前。この世界とは異なる理、異なる性質を持つ異なる世界。邪悪なる思念と呼ばれる異世界の存在が、この世界に攻め込んできたんです」

 

 途端、ざわめく会議室。すでに知っている者たち以外、何を言い出すのかといった感じだ。

 無理もない。いきなり異世界などと言われたら、どうしてもねえ。だが事実なのは事実。俺は、彼らに突き付けた。

 

「世界とは、プールの中に無数にたゆたうボールのようなもの。一つ一つが宇宙を内包し、そのそれぞれに理、システムが備わって世界を管理しています。スピリチュアルな話に思われるかもしれませんが、これは紛れもない世界の仕組みです」

「……そう、なのですかソフィア様」

「ええ、間違いなく。そもそもヴァール自身、そのシステムの一員ですから」

「これは……言葉が、出ませんね」

 

 一学生、一探査者に過ぎない俺の言うだけでは到底、受け入れられなかったろうけど……自分たちの上役たるソフィアさんとヴァールのお墨付きならば、なるほど絶句する他ないよな。

 私は構わず、説明を続けた。

 

「話を戻します。500年前、異世界が攻め込んできたことをトリガーにして、本来意志のない、プログラムに過ぎなかったシステム側の機能それぞれに人格が芽生えました。異世界の侵略行為に対抗するための、カウンター的な疑似人格ですね」

「この私リーベと、そこにいるヴァールもその一つ。精霊知能と呼ばれる、人格プログラムですねー」

「……リーベちゃんが!?」

 

 優子ちゃんの叫びが響く。両親も同様だ。

 まあ……うちの家族はリーベのことを、色々あって虐待から逃げ延びた薄幸の美少女、くらいに思い込んでいたからな。まさか世界の裏側、管理システム側の人格プログラムだなどと、想像の埒外も良いところだろう。

 反面、サン・スーンさんと神谷さんは大した驚きも見せない。ヴァールからアドミニストレータについて聞かされる時に、そのへんはある程度知らされたのだろう。

 

 話が早くて助かるが、さて。

 ここまではかつてリーベの説明にもあったことだが、ここからは。

 私の、カミングアウトになる。

 

「……そして私も、その一人です」

「…………兄ちゃん?」

「公平さん?」

「システムの管理と運営を取り仕切る総指揮、世界維持機構ワールドプロセッサ。そしてこの世界の因果律を司る因果律管理機構、コマンドプロンプト。一対となるそれらプログラムにも人格は発生しました──この私、山形公平は元々、コマンドプロンプトに発生した人格です」

 

 空気が凍り付く。

 明かされた真実──山形公平の正体に、誰もが言葉を失っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ リーベって世界を救う為の超過酷なブラック労働経験者だからある意味間違ってはいない。
[良い点] 「じゃあ、パソコンに入っているコマンドプロンプトは、あなたのお子さんですか!?」 ガタッ ガタガタッ 「いえ、違います。何それ、こわぁ」
[一言] コマプロさんより人類の限界を超えて長きにわたり組織を維持してきたソフィアさんの説得力と信用が圧倒的な件……山形君自身の説明以外はソフィアでいいのでは?
感想一覧
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