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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
番外編

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山形コスプレプロンプトくん

 空間転移を経て、まさしく秒でダンジョンの最奥から出入り口まで戻ってきた。

 行きしになんやかんやで一時間近くかけていることを考えると、滅茶苦茶な工程短縮と言えよう。

 

 ちなみにこの空間転移、行ったことのない場所でも全然余裕で行けるため、なんなら初手でダンジョンの最奥まで行って、コアを回収して帰還することも可能だったりする。

 もっともその場合、モンスターは浄化されずに消滅し、また別のダンジョンにて発生するのだから、魂を浄化するのが目的で探査者やってる俺としては本末転倒そのものだ。

 魂を救うアドミニストレータとしても、因果律を糺すコマンドプロンプトとしてもそんな真似をするわけがなかった。

 

「さて、終わりましたね……お疲れさまです。時刻は昼過ぎか」

「お疲れさまです、公平くん。たしかこのあと、クラスで打ち上げでしたね。一旦家に?」

「ええ。さすがに鞄は家に置いていきたいですから」

 

 香苗さんと話しながらダンジョンを出る。あな懐かしやファストフード店。いや嘘、ダンジョン内も大概ファストフードばっかだったから全然懐かしくないわ。そもそも一時間ぶりでしかないし。

 昼を少し過ぎた程度だから、お客さんの量は依然として多い。むしろピークってくらいいるなあ。みんなしてこちらを見て驚いている。

 そりゃそうだ、封鎖中の穴からニョキッと人間が生えてきたんだもんな。ギョッ! て感じだ。お昼時に失礼しました。

 

 香苗さんも出ると、たちどころにダンジョンの穴が消えた。踏破完了、コアを手のひらで転がす。

 微妙に惜しい気もするが、こいつは全探組に引き渡すか。ファストフードがいつでも好きなだけ食べられるのは魅力的だが、やはり権利関係が怖い。あと食いすぎて健康を損ねそうなのもな。

 

「仕事も終わりですし、組合本部で報告して、ちょっと涼んだら帰りましょうか」

「そうですね。家まではもちろん、お送りいたしますよ。ご家族様やリーベちゃんにも、挨拶したいですしね」

「はは、みんな喜びますよ。でもなんかすみません、気を遣わせてしまって」

「やりたくてやっているんですよ、気にしないでください。ふふ」

 

 なんともむず痒いことを言ってくださる。思わずニヤつく俺は、たぶん店内の人からしたら薄気味悪いんだろうな。

 でも良いや。香苗さんの言葉がすごく嬉しいし。そんな感じで俺はかなり、ニヤニヤしていた。

 

 店長さんに終わりましたよーって告げて、探査完了書類にサインをもらって、そんでもって店を出る。

 昼過ぎの商店街は暑さがピークみたいで、みんな家なりどこかの喫茶店、はたまた冷房の効いた場所で涼を取りがちなのか人はまばらだ。夕方くらいになれば少しは陽射しも収まるだろうが、あと数時間はあるな。

 香苗さんが熱中症にでもなったらことだ、さっさと組合本部に行こう。あそこ、環境に喧嘩売ってるレベルで凉しいからな。

 

「……あれ、公平くん?」

「うん? ……ありゃ、梨沙さん」

 

 と、えっちらおっちら歩こうとした矢先にかけられた声。見ると、ファストフード横のコンビニから我らがクラスメイトの梨沙さんはじめ、松田くん木下さん遠野さんに片岡くん。

 あとなんでか担任の原田さやか教諭、通称さやかちゃん先生がいたりした。いや、あんたはマジでなんでいるんだ。

 

「山形? と、あっ御堂香苗さんだ!」

「えっ、あの!?」

「なんだなんだ、打ち上げ前に仕事かよ?」

「不純異性交遊!?」

「さやかちゃん、男女二人組見ると秒でそれ言うのやめなよ」

 

 他のみんなも俺を見るなり騒ぎ出す。さやかちゃんさあ……教師がいのいちに不純異性交遊とか言い出すなよぉ。生徒のみんなの方がよっぽど、色眼鏡がないじゃないか。

 俺含めた生徒みんなの白い目に晒されて、さやかちゃんはおっとりした感じの顔立ちを赤くして俯いた。なんとまあ、童顔気味なのもあってこうなると幼く見えるな。

 さすがはうちのクラスどころか、学校のアイドル扱いされている新米女性教師さんだこと。

 

「公平くんのクラスメイトですか。どうもこんにちは、彼を崇める信徒にして伝道師、救世の光代表、A級探査者の御堂香苗です」

「あっ……ど、どうも」

「配信のムーヴと一緒だ……!」

「マジで山形くん、御堂さんに崇められてるんだ……」

「うわぁ……」

 

 怖ぁ……一切の躊躇なくアレな自己紹介をかました香苗さんはもちろんだけど、それを受けてドン引きしつつも有名人に出会えた喜びとか、そんな人にここまで言われてる俺を見る目とかが怖ぁ。

 ていうか、さっきから梨沙さんが無言だ。よく顔を見ると、どこか頬を染めて俺を見ている。いや、俺っていうか、俺の服?

 

 あっ。

 

「やべ、結界解き忘れてら」

「え。気付いてなかったんですか? てっきり、その神々しくもどこか悟りを開いたようなお姿を、衆目に見せ付けて御威光を示されたかったのかと」

「あなた今までの俺を見てきて、そんなことをするような人間だとお思いですかね!?」

 

 今さら、神魔終焉結界を解除し忘れていたことに気付く。しまった、この服マジで着心地良いからすっかり失念していた。

 やべえなおい……俺、もしかして今、痛いコスプレくんだったりするのか? この真夏に、白ズボンと黒シャツはともかく蒼色のコートはアウトだろ。痛いコスプレくんだわこれ。

 

「カッコいい……!」

 

 しかしそんな羞恥も、梨沙さんの呟きで吹き飛ぶ。

 なんと!? この格好、彼女のドンピシャなんですか!?

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― 新着の感想 ―
コマンドプロンプトは神の世界運用プログラムなのだから、今の公平は亜神とほぼ同じ存在ですよねぇ(笑)
[良い点] やったね浩平君! 夏のお祭りで君のコスプレが増えるよ!
[一言] そう言えば、コートの裾っぽいのをヒラヒラさせながら、蹴り技主体で戦闘する特撮ヒーローがいましたね(決め台詞は、「俺が最後の希望だ!」)。
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