表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

244/1856

果てしない未来へ!

 そんなこんなで授業っていうか、終業式が行われて。

 あまりに長い校長先生のお言葉に、はよ終わってもろて、とうんざりして。

 終わったら終わったで、担任の原田さやか先生──みんなからはさやかちゃんって言われてる──の、ほわほわした抑揚の夏休み中の注意喚起なんか受けて。

 

 そして10時30分を回るか? って頃。

 ついに今日の学校は終わりを迎え、俺たちは夏休みを迎えたのだった!

 

「んーっ! ああ、いい天気だなあ」

 

 帰り道、校舎を出て空を見上げる。青い空、白い雲。シンプルかつありきたりな表現だけど、そんな光景が広がっている。

 夏だ。夏休みなんだ。俺の心の無敵モードが発動している。期末テストも赤点は回避した。補習? なんですかそれ?

 この一学期、山ほど色々あったけど。こんな清々しい気持ちで終わりを迎えられたんだから、何もかもそれで良し! って感じだね。

 

 校門を出て歩く。駐車場で香苗さんが待っているから、合流して、組合へ行こう。

 そうだなあ……せっかくだしダンジョン探査前に軽くご飯でも食べようか。もちろんあの人も一緒に。最終決戦の祝勝会は明日だし、お疲れさまを言い合うのはその時に取っとくけど。

 そう考える俺に、脳内で声が響いた。

 

『僕を倒した祝勝会を、僕も見る羽目になるのか……癪だなあ。ねえ君、サボっちゃいなよ。どうせ一人くらい抜けたってバレやしないって』

「バレるに決まってんだろ、俺も主賓の一人なんだぞ」

 

 何言ってんだこいつ。まあ、自分が負けたのを祝うパーティに自分が呼ばれたら嫌かもしれないけど、そうされるだけのことをしてるからなあ。

 そもそもね、主賓は俺っていうか、俺たちなの。もちろんあの作戦に参加した全員が主賓だけど、なんか各人、色々知り合い友人を呼んでるらしいので、結局メインって言い方になるのは俺とか香苗さんとかリーベとか、マリーさんとかリンちゃん、ベナウィさんにソフィアさんにヴァールなの。

 抜けられるわけないだろうに。

 

『ちぇっ』

 

 面白くなさそうに舌打ちして、邪悪なる思念は黙り込んだ。

 やれやれ。

 構わずに歩き続ける。さっさと行こうか。

 

 駐車場が見える距離になってきた。香苗さんのど派手な真っ赤のスポーツカーは、と……あった。香苗さんもいる。なんかスマホ弄ってんな。

 近寄ろうかとした、矢先だ。

 

 

『あなたはスキルを獲得しました』

 

 

 と。

 そんな、声が響いた。

 邪悪なる思念のものじゃない。いつも聞いているこの声は。

 

「……ワールドプロセッサ? どういうつもりだ、全部終わったろうに」

 

 訝しむ。決戦は終わったし邪悪なる思念は倒したし、大ダンジョン時代だって終焉を迎えた。システムは復旧していってるし、セーフモードだって解除されている。

 なら、もう俺のステータスに変なもん入れる必要ないんじゃないのか? そもそも最終決戦あたりはもう、全くノータッチだったじゃないか。

 

 なんだなんだとステータスを見る。

 

 

 名前 山形公平 レベル617

 称号 誰でもないあなた

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 

 スキル

 名称 よみがえる風と大地の上で

 解説 これからのあなたは生きていくのです

 効果 他人のステータスを、一切の隠蔽を無視して確認できる

 

 称号 誰でもないあなた

 解説 アドミニストレータでもあり、コマンドプロンプトでもあり、山形公平でもある。それこそが、あなた

 効果 なし

 

 《称号『誰でもないあなた』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……ありがとうございました。あなたの500年の献身と、15年の日々と、三ヶ月の奮闘に心からの感謝を》

 

 

 新規スキルに、新規称号。

 必要があるとかないとかでなく、これはメッセージだなと察知する。

 ワールドプロセッサから俺に向けての、ことを成した褒美と感謝状ってところか。

 気配を感じて、俺は後ろを振り向く。

 

 美しい金髪を靡かせる、女神のような女がそこにいて。

 微笑み、やがて俺に深々と頭を下げていた。

 

「……私の方こそ、感謝する」

 

 コマンドプロンプトとして、告げる。

 色々あったし、これからも色々あるだろうけど。決して悪いようにはならない気がする。

 そう思えるのも、ここに辿り着けたのも、お前の存在あってこそだ。

 

「お互い、大変だったな……これからはゆっくりと過ごそう。時間は大いにあるさ。新たな時代の、風は吹き始めたのだから」

 

 だから、お疲れさま。

 心からの俺は彼女を、ワールドプロセッサを労った。

 

 

 ────ありがとう。

 

 

 そんな呟きとともに、姿が消えていく。真夏の陽炎のような、一瞬の交錯。

 すべて、終わったんだな、と。

 今、改めて感じ入る。

 

「…………」

 

 万感の想いを噛み締める。

 そして、やがて前を向く。

 

 香苗さんも俺に気付いて、手を振ってくれている。

 俺もそれに応え、手を振って。

 

 

 新しい時代を生きる、一歩を踏み出した!

これにて本編終了です。ご愛読ありがとうございました!


そして。

「攻略!大ダンジョン時代」書籍化とコミカライズ決定しました。

詳しくはこの次に投稿するあとがきをご覧ください。

よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
本編終了時点で邪悪のすることになる償いってのが具体的にどういうことか不明だから身勝手に食われた三世界は報われないなぁ、主人公は三世界について後処理にくらいしか意識を向けてないのがこれまで優しさを売りに…
[良い点] 本編完結まで一気読みしてしまいました! 全然だれることなく最後まで楽しめました 主人公はもとより登場人物もみんな魅力的で良かった。 最近の流れだとひどい目にあってざまあにされがちなポジの…
2023/07/17 19:54 かふぇまある
[気になる点] そういえばシステムさんやリーベ達精霊知能って見た目どうやって決めたんだろ?(ヴァールはソフィアが元にあったしリーベとシステムさんは似た雰囲気の印象がある)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ