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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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228/1860

保ってくれよ、俺のカラダ……!

 放たれた刃、生まれる真空が空気を切り裂き敵へと届く。

 魔天の太い胴体に直撃したそれは、しかしやつの、薄皮一枚を横一文字に軽く裂いただけだった。

 すぐに再生する。けれどマリーさんは一切怯まずに、駆け抜けながら次々に攻撃を放つ。

 

「《居合》大断刀・コーンウォール! そらそらそらそらぁぁぁっ!!」

 

 テンション最高潮って感じで斬撃し続ける。人生最後の仕事と定めたからだろうか、これまでのどんな場面のマリーさんよりも、その動きは鋭く疾い。

 俺とリーベももちろん走っている。ここからは俺も戦闘に参加するのだ、しっかりやらないとな。

 

「リーベ、頼む」

「はい! ──これは、絶対に負けてはならない戦いである!!」

 

 リーベによる認証。アドミニストレータ用スキル《誰もが安らげる世界のために》が、俺の身体を強化していく。

 以前、端末と三界機構相手に勝ち目のない戦いを挑んだ時と同じだ──一切の制限なく、完全なるフルパワーで力が引き出されていく。

 その倍率たるや1000倍。前と同じで、もはや何もしてなくとも手足が引き千切れて折れていくレベルだ。

 

「ぐっ……えっ、ちょ、待って待って!」

「《医療光粉・超級》! ──公平さんがダメージを負う度、それを上回る回復効果を付与しています。どうですか?」

「痛いんですけど!?」

 

 癒しの鱗粉が俺を包み込み、何をせずとも壊れていく身体を、それ以上の速度で回復してくれる。

 だけど、痛い。くそ痛い。ふざけんなマジ痛え!!

 そりゃそうだ、回復してるってことはそれだけのダメージ受けてんだもんな! 傷付いて治してを、ものすごく早く短いサイクルで繰り返してるだけですもんね!!

 

「これ、ダメージがないようにとかできないの!? すげえ痛いんですけどぉ!?」

「人間だとそもそも耐えようがない力なんですよー! 《風さえ吹かない荒野を行くよ》が発動するなら、10000倍でも今の痛みよりはマシくらいには収まると思いますー!」

「どっちにしろ痛えのかよ! くそ、マリーさんとの共闘だもんなあ!!」

 

 身体が壊れる激痛と癒やされる快感と、ある種の拷問みたいになってしまった俺。ソロ戦闘だと少しはマシみたいだけど……少なくとも魔天との戦いはマリーさんありきだからな、仕方ないよね!

 半ばやけになりつつ、戦線へ殴り込む。戦闘能力が1000倍なだけはあり、まさしく俺は光のように魔天に、一瞬で距離を詰めた。

 

「マリーさんの、花道を飾らせてもらうっ!!」

 

 ありったけの力を込めて殴りつける。ドラゴンの顔、眉間ど真ん中だ。

 どのくらい通じるかは定かでないが、せめてマリーさんが攻撃に繋げられるように、こちらへと気を引かせてもらう!

 牽制の意味も込めた拳が一撃、狙い通りにヒットした。

 

 ──瞬間、魔天の首から上が爆ぜた。爆音が響く。

 血肉がバラバラに吹き飛んで、グロテスクな雨を降らせていた。

 

「……へぁあ!? な、なななにぃ!?」

「!?」

 

 何が起きたか全然分からない。え、俺なんかやっちゃいました?

 まるで爆弾が爆発したみたいに、魔天の首から上が吹き飛んでいる。真っ赤な血が残った首跡から噴き出て、地面には肉片とか血がスプラッタに飛び散っている。

 それらを避けながら、マリーさんは後方に飛んだ。呆然とした声が、俺の耳にも入ってくる。

 

「なんとまあ……公平ちゃん、フルパワーはそれほどまでかい」

「こ、怖ぁ……」

 

 思わずドン引きして俺も後退する。マリーさんと合流して、一旦、魔天とは距離を置いた。

 もうなんか、息してるだけであちこち激痛が走ってるけど、目の前の光景はそれさえ忘れさせるほどに大変なものだった。

 

 何しろ一発のパンチが、それだけで真っ黒な空間を一気にスプラッター映画もかくやなホラー映像に仕上げてしまったのだ。

 魔天首から上はもう、グッチャグチャだ。さすがに超再生能力もここまで来ると、即座に元通りとはいかないようだ。

 ピンク色の肉が盛り上がって、元の形に戻ろうとして蠢いているのが、俺が引き起こしたことながら吐き気がするくらいグロテスクな光景だった。

 

 リーベが後方から飛んできて、俺たちに疑問を呈する。

 

「公平さん、マリーさん、どうして攻め込まないんですか!?」

「逆に聞くけどあなたはどうしてそんなに冷静なんですかねえ!?」

「そりゃあ、戦闘中なんだから攻めるのが当然だろうけども……ちょいと想像の範疇を、はるかに超える光景に固まっちまってねぇ……」

 

 さも当たり前のように目の前の光景を促してくるリーベに思わずツッコむ。お前、マリーさんまで硬直させるって大概だぞ。

 そんな俺たちの様子にもかかわらず、リーベはやはり、何をおかしなことをとでも言うように告げてきた。

 

「《風さえ吹かない荒野を行くよ》が発動していないにせよ、戦闘能力1000倍なんですよ? 天地開闢結界のない、一体きりの三界機構くらいならこのくらい当たり前です」

「これ、公平ちゃんなら倒し切れるんじゃないかねえ」

「超再生能力がある限り、さすがに中枢までは破壊しきれません。そもそも公平さんの体力とか気力も心配ですからねー……激痛はそれだけで体力と気力を奪いますから、極力温存したかったのはそのためですよー」

 

 と、説明される。

 ていうか1000倍でこれとか、10000倍はもう、どれだけのことになるのか全然分からないな、これ……

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これ細胞レベルまで大丈夫だよね?(単純に一瞬で全身死にかけになった瞬間再生して死にかけにを繰り返していることに)生物として寿命が縮むか突然変異起きそうで怖ぁなのですが
[気になる点] マリーばあちゃんの意気込みが… おれ、やっちゃいました?だなあ…
[一言] 1000倍でこの威力でさらにそれの10倍… 血しぶき飛び散る太〇の達人どころじゃない やばそう(語彙力)
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