表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

225/1865

地獄を断つ光脚

「! リンちゃん、今です!」

「承知! ──しぃぃぃぃぃぃぃやぁっ!!」

 

 マリーさんの斬撃が、断獄の両前足を叩き切って即座に、リーベは判断してリンちゃんは断獄へと飛び込んだ。頭に移り、そのまま胴体を駆けて目的の下半身部へと向かう。

 前足を失った──とはいえ一時のことだ、すぐにまた再生するだろう──断獄はバランスを崩し、顔から前のめりに倒れ込む。そこに、さらなる追撃が加えられた。

 

「ちいとでもダメージを与えときゃ、再生にも少しは時間がかかるってなもんだろ? ファファファ! 《居合》大断刀・ビッグベン!」

 

 顔面に二度、三度と刀が振るわれる。巨大な牙が半分から断たれ、左目が切り裂かれる。裂かれたそばから再生していってるが、さらなる斬撃が加えられていたちごっこの様相だ。

 哄笑をあげ、何度も何度も刀を振るうマリーさんの姿は、間違っても夜道に会いたくない。ほとんど怪異だ。リーベも顔色を悪くしつつ、そそくさとリンちゃんのサポートに向かい、羽ばたいていった。

 

 さて、そのリンちゃんだ。

 そろそろ断獄の下半身部分に辿り着く彼女は、直前になって飛び跳ねた。軽やかな蝶のように舞い、蜂のように鋭く急降下して腰部を踏みつける。

 

「しぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!!」

 

 火山が噴火するかのような轟音を立てて衝撃が、断獄の後ろ足までへし折った。ついに身体全体が、大地へと音を立てて沈む。

 ──リンちゃんは今の一撃でついに、断獄の中枢、すなわち異世界のワールドプロセッサの埋め込まれた場所を、特定したようだった。攻撃を一旦取り止め、息を整える。

 そこにリーベが追い付いた。やはり遠目からリンちゃんの様子を見ていたのか、すぐさま事情を把握して叫ぶ。

 

「リンちゃん、見つけましたか!」

「ん、まさしく股間。ただし前の方についてる……オスみたい。背後からもろとも貫くから、少しだけ気を蓄える。援護を」

「了解、ならしばらくはリーベが攻撃しましょう! 《破砕光粉》!」

 

 何やら大技の準備を始め、闘気を練り出す素振りのリンちゃん。リーベがその間、断獄を少しでも痛めつけんとして光翼を広げた。はためかせて、やつの皮膚を撫でる。

 断獄の、硬い皮膚が少しだが明確に色を変えていく。腐食? あるいは、毒か? 何にしろダメージを与えているのはたしかだろう。変色した部分がまた、元の色に戻っていく。

 

「頭部を斬撃され、下腹部を毒で染められ……! いずれも間を置けばたやすく回復するでしょうけど、こうも矢継ぎ早ならギリギリ、リーベとマリーおばあちゃんの方が早いですねー!」

 

 なるほど。再生能力で全快されないように、リンちゃんが準備を整えるまで攻撃しているわけだな。

 たぶん示し合わせたわけじゃないにせよ、マリーさんも同じ思いだろう。おそらくだがあの人は、三界機構という化物を攻略するには再生能力を相殺しつつ、大技で中枢を一点突破するというやり方が一番だとすでに見抜いているんだ。

 70年培ってこられた経験ゆえなのだろう。やっぱりすごい人だ。

 

 少しの間、それこそ数分間猛攻とそれを防ぐ再生は続いた。

 断獄もどうにか反撃しようと身を震わせるのだが、その度にマリーさんの居合が顔を切り刻んで意気を削ぐ。なんというか、ハメ技じみているが……ここまで徹底的にしなければ、相手に行動を許した時点で、こちらは一気に大ピンチだからな。

 

「…………完了! 一点突破、ワールドプロセッサを蹴り穿つ!!」

 

 そしてリンちゃんの支度が調った。闘気が、可視化できていく。青く燃え盛る炎が、彼女の両脚にまとわりついていた。

 三界機構が断獄へ、叩き込む決戦スキルが発動される!

 

「《アルファオメガ・アーマゲドン》発動──! 今こそ星界拳96年の本懐、果たす時!!」

「毒で皮膚を可能な限り柔らかくしています! どうか極めてください、リンちゃん!!」

「無論! しゃあああああぁっ!!」

 

 リーベに呼応し、決戦スキルを発動させたリンちゃんは真上に跳んだ。身を反転させて天井に両脚を付け、バネをつけて蹴る!

 真下へ急速降下──蒼炎の両脚が揃えられ、真っ直ぐ伸びる稲妻となって断獄を貫く!

 両脚同時の蹴りとは、これまでに見たことがないぞ!?

 

「究極秘奥! 天覇! 断獄っ!! 星、界、けぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」

 

 錐揉みすら加えての、ドリルみたいな両足キック。

 き、究極秘奥・天覇断獄星界拳……だろうか。まさしくリンちゃんのすべてを込めた一撃は、リーベの毒によって防御力を低下させていた皮膚を貫き、内部の深いところにまで穿ったようだった。

 リーベが即座に叫ぶ。

 

「──届いた! 中枢に《アルファオメガ・アーマゲドン》が干渉したのを確認しました! リンちゃん、戻って!!」

「っしぃぃぃゃああぁっ!!」

 

 中枢、すなわと断獄の元となった世界のワールドプロセッサにまで、みごと星界拳究極秘奥は到達したのだ。

 リンちゃんが飛び出てくる。すぐにリーベは彼女の手を掴み、光翼を煌めかせて転移する。マリーさんの元だ。

 

 合流して、さらに三人は断獄から離れる。

 少しの沈黙。やはり超再生を果たした断獄へと、リーベは語りかけた。

総合評価80000pt突破しました

ありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 究極奥義って今この場で編み出してない?始祖カーンの時点では倒す(救う)べき断獄の名前って伝わっていないだろうし、それを冠した技は偶然で作れないと思う。
[良い点] 急所に直撃! [一言] ライダーキックみたいなノリの技。 だが、それがいい(_’
[一言] 改めて読み返して見たら…生物兵器にオーバーキルする(せざるを得なかった)、某光の巨人(ギロチン王子)を彷彿とさせます…。 怖ぁ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ