オーロラ☆パーティタイム
極太のオーロラ色のビームが、災海の身体を直撃する。凄まじい光と爆音だ──威力も見るからにとてつもない。
ベナウィさんの《極限極光魔法》、相変わらずなんて威力なんだ。災害的、破壊的なまでの攻撃に、改めてS級探査者のデタラメさを思い知らされる。
ていうか、これ。
「俺の出番ないな……」
「初っ端からあなたを出張らせるわけないでしょうー……公平さんはギリギリまで温存します。三界機構を一体倒すごとに一人、パーティメンバーは減りますが、次の個体はリーベが戦いますし。公平さんが参加するとすれば最後の一体相手の時、ですかねー」
「そ、そう……ですね」
完全に決戦スキル保持者の3人だけで戦いが進行していることに異議を唱えたところ、リーベにあっさり反論されてしまった。
まあ、そりゃそうだ。邪悪なる思念とは俺が一騎討ちする以上、前座にあたる三界機構相手に余計な体力を使っていられない。
人数が減っていく関係上、最後の一体だけは俺も参加するみたいだけど……少なくとも今回と次のは、俺はベンチウォーマーってわけか。
「ミスター・公平! あなたの加勢は今回は不要です。なんならマリアベール様もミス・フェイリンももはや退くべきかと!」
ベナウィさんがぶっとい破壊光線を放ち終え、俺やマリーさん、リンちゃんにそう叫んだ。どうなったかと敵を見る。
災海は未だ健在、倒しきれてはいないものの明らかに損傷している。鮫の頭は半壊しているし、蛸の胴体も穴が空いている。
爪付きの触手が唯一、無事のようだけど……弱っているのには間違いない。というか天地開闢結界抜きの三界機構と、まさかここまで戦えるとは思ってなかったよ、正直。
「勝ち目がなければ勝負なんて挑みませんよー。というか、やつは再生しますから、真正面からだとある程度は戦えても、倒し切るのはまず不可能ですねー」
「え? ……あっ、回復してやがる!?」
ちょっと油断しかけた俺を嗜めるように、リーベが短く呟いた。そんな馬鹿なとまた、やつを見るとさっきの損傷が、綺麗さっぱりなくなっている。瞬きほどの時間で、全回復していた。
なにこれインチキじゃん、どうなってんの……?
リーベに視線を向ける。彼女はさらに、ベナウィさんに叫んでいた。
「やつは数瞬あれば全快します! 再生能力を上回る破壊を、一点集中的に与えるか連続して与えるかしかありません!!」
「では私の場合は後者ですね。すでに準備はできています……すべてを壊す破滅の極光、今こそご覧に入れましょう」
つまりは三界機構自体が超再生能力を持っているため、生半可なダメージではすぐに元の木阿弥となるらしい。さすがに一筋縄じゃいかないか。
それでもベナウィさんは慌てず焦らず、むしろニヤリと笑って両手を災海へ向けた。次いで、天からオーロラが舞い降りる。
──極光って、これのことか? 矢継ぎ早にベナウィさんの、猛攻が始まった。
「ライトレイ・オーロラクラスター! ライトレイ・スマッシュオーロラ! ライトレイ・オーロラブレイク!」
「うおおおおお!? え、こわっ、まぶしっ!?」
「ライトレイ・オーロラエクスキューション! ライトレイ・オーロラシューティングブラスター! ライトレイ・オーロラハイパースーパーグレートビーム!!」
「いや最後のなんか雑くね!? うわわわわっ、破壊が、破壊が広がっていく!?」
次々に極大のビームが放たれる。いや、マジでどんどこ撃ってるよこの人!
一撃一撃がさっきのオーロラカノンと同程度の威力だ。つまりは災海にあれだけの傷を負わせた攻撃を、今、彼は怒涛の勢いで放っていることになる。
なんだなんだ、なんなんだ!? あまりの勢いと眩しい光と爆音に、思わず混乱する。
そんな俺を落ち着かせるように肩を叩いたのが、マリーさんだった。
「落ち着きな、公平ちゃん。ノッてきたあいつはこんなもんさね。いや、ネーミングは適当そのものだけど」
「の、ノッてきたって……」
「《極限極光魔法》の真の恐ろしさはね。威力のデタラメさもさることながら、準備さえ整えば複数同時発動ができることにある」
「複数同時発動!?」
言われてベナウィさんを見る。たしかに、ビームを次々に切り替えるのではなく、十数本をまとめてぶっ放している。
魔法とか魔導系スキルは基本、そのスキルに纏わる技を連発はできても同時発動はできない。しようとしても発動しないのだと聞く。
その常識を、普遍のはずの理を。彼は今、真正面からぶっ壊しているのだ。
「準備に時間がかかるのと、放ち終えたあと、しばらくは同じことができないって弱点はあるけどね。トップギア時の戦闘力だけで言えば、あいつは私をはるかに超えてS級トップ層の一人さね、ファファファ」
「こ、怖ぁ……」
「それよか見なよ、公平ちゃん。災海の身体が、どんどん削れてきたよ」
まさかのマリーさん超えの破壊魔ベナウィさんはさておいても、さすがにそれだけの威力があれば、災海の身体も超再生能力が追い付かないみたいだ。
身体といわず頭と言わず触手と言わず、どんどん破壊されていく。これでも、少し攻撃の手を緩めれば次の瞬間には全回復なんだからとんでもない話だ。
「っ、感知できました! 中枢、災海のワールドプロセッサです!!」
次第に胴体の削れる中、眩しすぎてよく分からんがリーベには分かったみたいだ。災海の元となった世界を司っていた、ワールドプロセッサが内部から露出してきたらしい。
となればあとは、ベナウィさん!
「今です! 決戦スキルを、《極限極光魔法》に!!」
「ギリギリでしたね! あと一分でこの連撃も、途絶えていましたよ──発動せよ、決戦スキル《メサイア・アドベント》! さあ目覚めなさい、ワールドプロセッサ!!」
彼の宣言とともに、一際大きく、一際輝くオーロラビームが照射され。
災海の胴体、その中心部にいるらしいワールドプロセッサを見事、貫いた。
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