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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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214/1855

最終段階:大ダンジョン時代を終わらせよう!

 絶対邪悪なる思念滅ぼすウーマンと化していたシステムさんやリーベ、ヴァールに背筋が凍るものを覚えつつ、作戦会議は終了した。

 ざっくりまとめると、以下のようになる。

 

「香苗さんがまず、邪悪なる思念の天地開闢結界を無力化。その間、無防備な彼女はヴァールが護衛する」

「はい」

「任せてくれ」

 

 香苗さんとヴァールが頷いた。紛れもなく、ここが一番重要なところだ。天地開闢結界を剥ぎ取れる香苗さんの存在こそが、この作戦の基点となる。

 

「三界機構は各決戦スキル保持者がメインで対応。決戦スキルをヒットさせ、足止めしつつ自壊を促す」

「おうさ」

「ん、了解」

「微力ながら全力を尽くしましょう」

 

 マリーさん、リンちゃん、ベナウィさんが次いで意気込んだ。三界機構の中枢、各世界のワールドプロセッサの自我を解き放ち、自壊させるまでの間の足止めをする。それぞれ、たった一人で、だ。

 恐ろしくリスクの高い戦いだ。一体だけでもこの世界そのものに匹敵するような化物を、弱体化に弱体化を重ねたとしても一人で相手取るのだから。恐怖は計り知れない。

 それでも、三人は気楽に笑って見せている。探査者として、戦士として、その姿には気負いない誇りが垣間見える。

 

「そして最奥、本体の下へと俺とリーベがたどり着く。そしたら俺とやつで一騎討ち、と。サポートはリーベ」

「よろしくですー」

「戦うのは俺一人で、《風さえ吹かない荒野を行くよ》で10倍になった各種スキルをフルパワーで使う。そのせいで何もしなくてもダメージを受ける俺に関しては、リーベが癒やしてくれる、と」

「さすがにフルパワーとなると、どれだけ鍛えても人間にはもう、耐え切れる領域じゃないですからねー」

 

 で、俺とリーベはみんなが切り開いてくれた道を行き、邪悪なる思念の本体のところへ向かう。

 スキルの都合上、事実上は俺一人でのラストバトルだな。

 

 ……こんなところかな。

 システムさんや精霊知能が長年かけて構築した計画だけあり、かなり殺意が高めというか、何がなんでもあいつ滅ぼすわ、的な勢いを感じる。

 後先を捨ててるというか、とにかくこの一点にすべてを懸けているというか。まあ負けでもしたら、本当に何もかも食われておしまいなんだから仕方ないんだけど。

 

 会議も終わってのどかな空気。決戦に備えてできる限り、のんびり休もうと一堂が思い思いに過ごす中。

 俺はふと、リーベに尋ねた。

 

「ところで……この戦いに勝った後、世界はどうなるんだ? まさか目に見える所では何もありません、じゃないだろ?」

 

 これまでひたすら、この大ダンジョン時代を終わらせることばかりに注目してきたけれど。

 考えてみればその後、どうするのかどうなるのかについては、まるで何も知らされていないと思う。そのへん、どうなってるんだろうか。

 リーベは頷いて、にこやかに答えた。

 

「もちろん! 邪悪なる思念を退けることで世界を再び、ワールドプロセッサの管理下に置くことで、時代は再び正しい流れに戻っていきます」

「具体的にはそうだな。まず、モンスターの脅威が目に見えて下がっていくだろう」

 

 続けてヴァールが答える。まず何よりも、大ダンジョン時代を象徴する要素の一つであるモンスターに劇的な変化が訪れるという。

 

「モンスターにしろダンジョンにしろ、やつを滅ぼしたからと言っていきなり発生させなくすることはできん。モンスターの正体がやつに食われた世界の魂たちである以上、オペレータによる浄化と、この世界の輪廻への受け入れ作業はどうあがいても必須だ」

「ふむ……受け入れは続行するのですね。冷徹な物言いになりますが、切り捨てるという選択もあるでしょう」

 

 ベナウィさんの言葉は、冷たいものではあるが選択肢としては十分、あり得るものだ。

 この世界とて8割方を侵食されている、予断を許さない状態だ。ならば他の世界の魂にまで、気をかけていられる場合でないのはたしかにそうだろう。

 けれど。ヴァールは実直に答えた。

 

「彼らはいわば被害者であり、いわば難民だ。受け入れなければどの世界にも拠り所のない、まつろわぬ魂として永遠に何もない波動の海を漂うことになる。それは、あんまりだろう」

「私たちの敵はあくまでも邪悪なる思念のみ。三界機構という、存在そのものを都合よく利用されているだけの被害者たちまで、まとめて敵視するつもりもありませんよー」

「なるほど……安心しました。冷徹に敵をすべて滅ぼすと言われては、こちらもさすがに罪悪感というものがありますからね」

 

 どこかホッとしたように、ベナウィさんは笑った。他のみんなも安堵している。

 そりゃあ、なあ。いくら世界を守るためとはいえ、他の世界の被害者たちごと滅ぼしますってのは……仕方ない話にしろ、罪悪感でおかしくなりかねないもんな。

 良かった、本当。

 

「大ダンジョン時代の残滓は今後もしばらく続くだろう。お前たちオペレータの出番も、あと数世紀はあるやもしれん」

「そうしている間に、ワールドプロセッサ側で侵食された部分を修復し、セーフモードを解除する作業に入りますから……時代の流れが正常になるのは、それ以降になりますねー」

 

 リーベがそう締め括る。

 いわば復興のようなものなんだろう。数世紀とは気の長い話だけど、500年も受け続けてきた侵略の傷跡を癒やすんだから、そのくらいはかかるんだろうなあ。

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― 新着の感想 ―
公平がリーベと香苗を孕ませておいた方がいいのですね(笑)
[一言] 今となっては分からない話だけど。 元々システムさんの最初の計画だと「カーンの末裔の上位4名に決戦スキル継承」「探索者は全員投入して肉壁」「ヴァールは継承戦で死亡しなかったら、援護する」だった…
[一言] ダンジョンの物質に依存した社会になっていた場合数世紀後にはその物資を取り合って国同士の戦争になりそうだけど、そこに関しては1つの世界のなかでのやり取りだからシステムさんからしてみたら許容でき…
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