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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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211/1850

第一段階:インチキ結界を無効化しよう!

 邪悪なる思念が最初に現れ、そして今また侵入しようと攻めてきているその地点にて、最後の戦いは行われる。

 その言葉に俺たちは俄然、闘志を燃やした。分かりやすく整えられたシチュエーションには、戦士として滾るものがあるよな。

 

「はじまりのダンジョンは、今、世に広くあるダンジョンとは違って部屋はありません。完全な一本道の回廊ですー」

「元々は邪悪なる思念がこの世界に入り込むための、侵入経路なわけだからな。それをアドミニストレータの永遠の闘争場所として利用したのが、この世界のワールドプロセッサだ」

「侵略の尖兵たるモンスターどもをそのダンジョンに隔離し、アドミニストレータに倒させる、ですね。350年も、代々そうやって世界を守り続けた、者たちがいた……そして当代の公平くんがすべてを受け継いで、今ここにいる」

 

 リーベとヴァールの解説を受け、香苗さんが神妙に呟いた。

 モンスターから世界を守るため、初代からずっと戦っていたアドミニストレータ。それは、150年前の大侵攻におけるソフィアさんの死を以って、断絶することになったけれど……

 今この時、俺が継承して再び戦地へと戻るのだ。終わりなき戦いを続けるためでなく、終わらせるために。

 

「私、微力ながら頑張る」

「リンちゃん?」

「共に、受け継がれてきたものを引き継いだ者として。公平さんは私を手伝ってくれた。今度は、私」

「……ありがとう」

 

 リンちゃんが、強い光を湛えた瞳で俺を見据え、宣言してくれた。

 思えば彼女と俺は立場が似ている。96年間、一族総出で培ってきた星界拳を継承したリンちゃんと、500年間、代々に渡り貫いてきた、世界を守る使命を受け継いだ俺。

 だからだろうか。シンパシーのようなものを彼女は、俺に対して抱いたみたいだった。

 目を見合わせて頷く。彼女の助力はありがたい。先代精霊知能をも下した、最強の星界拳士。

 

 リーベに続きを促す。一本道の回廊でやることなんて、まず進撃しかないが、それにも手順はいるのだと彼女は語った。

 

「セーフモード起動後、やつが再び侵攻してくるまでの50年で、ワールドプロセッサとリーベは今のこの状況を前提として、ダンジョンを適した形に作り変えました。やつが再び同じ地点から侵入を試みるのは予測できていたので、それに備えてのことです」

「適した形、かえ」

「はい。ダンジョンを元のサイズから大幅に狭め、やつ本体の侵攻を遅らせています。三界機構もまとめて襲ってくることはありません。また、ミッチーの決戦スキル《究極結界封印術》をダンジョンに向けて発動することで、天地開闢結界を無効化できるようにしました」

「三界機構はともかく、ダンジョンごと結界を無効化? その心は?」

 

 訝しげにベナウィさんの質問が飛ぶ。うん、俺も意図を掴みかねている。

 ダンジョンを狭めて本体が通りにくくしたってのは分かる。実際、やつは端末でしか干渉できなくなってるみたいだしな。

 でも、天地開闢結界無効化を、わざわざダンジョン越しに行う必要性ってなんだろう? そこはちょっとよく分からない。

 俺たちの疑問に、今度は焦ることなくリーベは粛々と答える。

 

「いかな決戦スキルも、保持者が死ねば効果がなくなります。それゆえ天地開闢結界の無効という、この戦いの何よりもの要である能力を持つミッチーは可能な限り、後方からダンジョンを介する形で結界を無効化し続けてもらいます」

「その際、無防備になる御堂香苗を護衛するのがワタシだ。やつめが何をしでかすとも限らないのでな」

「ちょ、ちょっと待って下さい! そんな、私だけが安全なところから見ているだけというのですか!?」

 

 いわばこちらの本丸を務める形になるのだと、そういう説明に猛然と抗議するのは当然、香苗さんだった。

 最終決戦まで来ておいて、やることが一番後方での支援。その支援こそが何よりも重要だとはもちろん分かっているんだろうけど、気持ち的に到底、受け入れられるはずがない。

 焦りも露に香苗さんは叫んだ。

 

「置物をしに行くのですか、私は!? 公平くんやマリーさんたちが命懸けで、世界を救う戦いに赴くと言うのに私だけが、そんな」

「あなたが失われれば、世界を救うも何もなくなるんですよ、ミッチー」

「…………っ」

「……あなたのことは、公平さんの活躍と共にこれまで、見てきました。個人的には友人になりたいと思いますし、力になりたいとも思いますが。これだけは、無理ですよ」

「気持ちは分かるが、ここはどうか堪えてくれ。この戦いだけは、誰もが最適解を出さねば勝てないのだ。そして、お前にとっての最適解は、一番安全なところでみんなのため、結界を無効化し続けることなのだ。御堂香苗」

 

 いっそ同情的ですらある二人の声音が、余計に辛い。

 香苗さんは、わかりましたとか細く呟いてうなだれた。今は自分の都合や気持ちを優先するべき場面ではないと自覚しているからこその、断腸の思いでの決断だ。

 気まずい空気が少し、流れる。打ち消すように俺は、明るめの声音で切り出した。

 

「それで! 場所と、構造と、まずは香苗さんが俺たちの先陣を切って、敵の結界を剥がしてくれるところまでは分かった。次は三界機構をどうするか、だな」

「公平くん……」

「まず間違いなく三界機構が立ちはだかるだろう。話を聞くに一体ずつだろうけど、天地開闢結界を抜きにしたってやつらは手強い。どう攻略するんだ?」

 

 その質問に、リーベはにっこり笑って説明を続けた。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー月間6位、四半期1位、年間5位

総合四半期7位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] 深海でバトルしないといけない。今までは呼吸が足りずに自滅しているようなもんだった。だから酸素供給役として、君が必要なんだ。 みたいな言い方をしても理解はしても納得は出来ない。 だってしょう…
[一言] ここまできていっしょに行けないというのは、そりゃ辛いわなあ…。
[一言] 【悲報】伝道師、ラストバトル見ることもできない【後方待機必須!】
感想一覧
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