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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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209/1864

作戦会議の始まり

 端末との、白昼夢のような遭遇を経て、俺は温泉から上がったあとすぐにみんなを呼んで、今しがたのやり取りを伝えた。

 邪悪なる思念の目的──他の世界を喰らい続けて、やがては永遠や智慧、精神性を備えた完全なる存在に成り上がること。そのために俺たちの世界にも侵略を仕掛けてきているのだということを話すと、まずはリーベが激昂した。

 

「なんて、馬鹿なことを……! なにが完全ですか、そんなもののために!」

 

 ところ変わって俺の部屋、やはりみんな、とりあえずはここに集合したがるらしい。

 事情を知り、各人揃って微妙な、ドン引きというかモヤッとしたものを抱えたみたいなのだが。中でもリーベのキレっぷりと来たらまあ、中々見ないレベルのものだ。

 どうどう、と落ち着かせつつも、一応尋ねてみる。

 

「喰らい続けていけばそのうち、辿り着けると盲信していたようだったけど……精霊知能の見解としてはどうなんだ? 実際、なれるの? あいつの言う、完全とやらに」

「なれません! 何があったって至れるものですか、そんなもの!!」

「断言しましたね……」

 

 あまりのキレ方に、リーベの隣で香苗さんがちょっと気圧されている。でもね香苗さん、トンチキな時のあなたはこれに勝るとも劣らないんですよ?

 しかし、なれないんだな、完全とやら。リーベの物言いが真実なら、あいつのやっていることは完全に無意味な、ただの迷惑行為に他ならなくなるんだけど、さて。

 憤激したままのリーベが、そのまま続けて言う。

 

「完全の定義を、何とするかにもよるのでしょうけど! 少なくともやつの言う永遠は永遠とは言いませんし、智慧も智慧とは言いません! 始まりも終わりもないモノはそもそも存在しないのと同じで、すべてを知るなんてすべてを知らないのと同じです! 論理矛盾しています!」

「精神性、どう?」

「……形のないものに、正しい形はこうだと決めつけるようなものです。満ち欠けの判断すら各人や各社会の価値観によるものでしかない以上、そもそも心というものの完全性を語ること自体が滑稽ですよ」

 

 さすがにリンちゃん相手にはトーンも下がるか。よしよし、落ち着けよリーベ。

 しかし、まあそうだろうな。やつの求める永遠は、始まりも終わりもなく、知るも知らないもなく、何が不完全であるかも分からないようなものを、むりやり完全に当てはめてできあがる代物だ。一言で言って、矛盾。

 

 そんなものを求めてやつは、自分の世界も含めると四つの世界を喰らった。始まりも終わりもない、知るも知らないもない、やつが思う完全な精神性とやらを備えた存在に、なるために。

 ソフィアさん……いや、ヴァールだな。いつの間にかスイッチしていた彼女が、静かに瞑目して言った。

 

「……この際、やつの動機はもう良い。少なくとも、山形公平の言葉にも耳を貸さず、やはりこの世界を喰らうつもりだということを再確認したならば、我々のやることは変わらない」

「決戦、ですね。我々は我々を守るため、邪悪なる思念の野望を挫くために戦いましょう」

 

 ベナウィさんが告げ、俺たちは頷いた。

 もう、話し合いの余地はない。やつは求めるもののために、誰の言うことも聞かず、暴走を続けるのだろう。

 止めなければならない。止められるだけの力と策が、今この時に集っている。今が絶好の機会なんだ。

 対話の中で得たヒントを、みんなに伝えていく。

 

「やつは、やはり天地開闢結界に大きく依存しているみたいです。三つの世界それぞれを喰らえたのも、あの結界の功績が大きいと言っていました」

「でしょうねー……となればやはり、鍵はミッチーの最終決戦スキルですか」

「天地開闢結界を封印するスキル。それによってやつと、三界機構を纏うバリアを剥ぎ取るのが第一段階、だな」

 

 ヴァールの言葉に一同、頷く。

 何をどうするにしても、天地開闢結界の無効化だけは絶対条件だ。あれが機能している限り、こちらがどれだけ方策を整えていても絶対に勝てない。

 香苗さんに集中する視線。それを受けてもさすがはA級トップランカー、まったく怖じけることなく、むしろ不敵に笑ってくれる。

 

「正直、使ったことないスキルなので何をどうすれば良いか分かりませんが……やってみせましょう。探査者として、伝道師として」

「伝道師としては別に、ですけど……実際さ、リーベ。どこでどういう風に使うの? 他の決戦スキルもだけど、試し打ちなんてできないでしょ」

「ふふー、そこはリーベにお任せあれ、ですよー!」

 

 ふんぞり返ってリーベが、無闇矢鱈と自信を覗かせる。

 決戦の段取りとか、どういうタイミングでどういう風に決戦スキルを使うかとか、その辺はシステムさんと共に計画を進行してきたリーベが一番、詳しいだろうからな。

 

 居住まいを正す。ここから、明日の決戦に向けての作戦会議だ。

 何一つ聞き漏らすまいと、俺たちは集中して臨んだ。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー月間6位、四半期1位、年間5位

総合四半期7位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「天地開闢結界を封印するスキル。それによってやつと、三界機構を纏うバリアを剥ぎ取るのが第一段階、だな」 なんで試したことも無いスキルを、無条件に絶対通用すると考えてるのかが分からな…
[一言] トリガーのリーベが真っ先に潰されると終わるのか……
[一言] リーベのガチギレ初めて見たなあ
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