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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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205/1856

サマーシーズン到来!(予定)

 いくらか売店でお菓子やらジュース、人によっては酒とつまみを買い込んでから、再び俺たちは、なぜかまた俺の部屋に集合していた。

 修学旅行とかならここから、適当に駄弁るなりゲームなりするところだが、別にそんなこともない。ちょっとまったりして、適当に眠くなったら部屋に戻って寝ましょう、みたいな空気が流れていた。

 

「ミスター公平はもうすぐ、サマーバケーションですか。良いですねえ、懐かしく感じますよ」

「学生時代の夏休み、なんとまあ懐かしい話さね、ファファファ」

 

 すっかり仲良くなって、俺を下の名前で呼んでくれるようになったベナウィさんがしみじみ呟いた。マリーさんも追随して、なんでか今、俺についての話になっている。

 そう、もうあと二週間くらいで待望の夏休みなのだ。

 

 高校生活初めての夏休み。去年が受験勉強のため、遊ぶどころじゃなかったことを考えると、もうウハウハに遊び倒したいところだ。

 っていうか遊ぶ、絶対遊ぶ。もちろん仕事もするけれど遊ぶ。

 

 そんな話をしていると、ベナウィさんとマリーさんがやたらと懐かしむ様子でいる。学生時代を思い出しているみたいだけど、何やらノスタルジックに浸っているなあ。

 特にマリーさんにとっては70年近くも前のことなら、まるで古びた宝石箱を開けるような想いで、過去を振り返っているのかもしれない。

 

 そっとしておこう。いつかこんな風に、俺も何かを懐かしむ時が来るのだろうから。

 なんとなく心が優しくなった気分でいると、香苗さんが俺に問いかけてきた。

 

「なにかご予定があったりしますか? よければ夏休みのどこかで、また御堂の本家にお越しいただけませんか」

「えっ……香苗さんの本家って、ご実家ですか?」

「ええ。親戚なんかも来るのですが、みな、この世の救い主である公平くんを一目見てみたいと言っているのですよ」

「えぇ……?」

 

 なにそれ怖ぁ……親戚含めた御堂家の方々に囲まれて針の筵な山形くんを想起しちゃったよ。

 間違いなく俺が救世主とか関係なく、香苗さんが妄信している怪しい男を畳んじまえ的なあれだと思う。いや怖ぁ……光さんみたいな人たちが多数いたりしたらどうしよう。

 色々と最悪に近い想像が思い浮かび、すっかり及び腰の俺。それに気付いているのかいないのか、香苗さんはさらに畳み掛けてくる。

 

「御堂家は100年にも満たない家柄ですが、曽祖父の代でいくつかの分家が生まれたんです。いわば探査者成金の家系ですから、探査者界隈の動向にも一際、アンテナを張っていたりします」

「は、はあ。それで」

「探査業に関わる職についている者も多いですから、余計に私が崇める公平くんに、興味を持っているんですよ。つまり、これはまたとない伝道チャンスです! 本家と言わず分家と言わず、御堂に連なる者は軒並み救世の光に入信していただきましょう!」

「本家長女様……あなたそれで良いんですか……」

「良いですとも! むしろ良くない理由がありません!」

 

 あるよ! めっちゃあるよ!

 なんでこの人、自分の家族親族をまとめて嵌めようとしてるの? ていうか信教の自由はどこいった。

 

 いつもながらの暴走を見せる香苗さんに、俺もいつもどおり遠い目になる。なんなら望月さんがいない分、まだマシかな〜とか思ってしまう自分が怖い。

 俺たちを見ていたソフィアさんが、あらあらと穏やかに笑った。

 

「将太くんの家、今はそんなに大きくなってるのねえ。いつの間にやら立派になって……素敵なひ孫さんまで持って、天国で笑っているわね、きっと」

「えっ……あ、そういえばヴァールが将太さんのことを知ってましたね。ソフィアさんもなんですね」

「ええ、そうですね。何しろ決戦スキル保持者ですから、ヴァールが主に気にかけていましたけど、私もあの子とは、それなりに親しくしていました」

「曽祖父が……」

 

 さらりと香苗さんのひいおじいさんとも、親交があったことを明らかにしていく。

 うーむ……まさに大ダンジョン時代の生き字引だな、ソフィアさんとヴァールは。マリーさんよりも歳上だった、将太さんまでまるで子どもか弟扱いだ。

 香苗さんも落ち着きを取り戻して、意外な繋がりに感銘を受けた風だし。鎮まってくれて良かった。

 

「……んゅ。ねむ、ねむ」

「おや? リン嬢ちゃんはお眠かえ」

 

 マリーさんの声にリンちゃんを見ると、みごとに船を漕いでいた。頭がカックンカックン揺れて、瞼もほぼほぼ閉じている。完全に眠気に負けてるやつだわ、これ。

 部屋に備えてある時計を見れば、もう結構な夜更けだ。日が変わってないとはいえ、いい頃合いではある。

 

「それでは我々も、ここいらでお暇しましょうか。ミスター公平ももう寝た方がいい。私のように大きくなれませんよ」

「ははは……ですね。もう、今日は休みます」

 

 ベナウィさんがお開きを宣言する。まあ、たしかにもうちょっと身長は欲しいところだけれど……彼ほどの背丈となると、それはそれでまあ、別にそこまでは、って感じにもなる。

 せめてあと、5cmかなあ。そんなことを思いつつも、今日のところはこれにて就寝となった。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー週間10位、月間8位、四半期1位、年間5位

総合四半期8位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[良い点] これはいいベナウィだ(_’ [気になる点] マリー姐さん、元々「うっかりベナウィ」じゃなくて、「うっかりベナ兵衛」って呼んでたけど、時代劇とかあんまりしらない人たちが「うっかりベナウィ」で…
[一言] 本格的に宗教ぽくなってきたなあ
[一言] 勝ってから本家に行って、 御堂家のみなさん「「「お勤めごくろうさまです! 若!!」」」 の方がやばいw
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