オペレータを超えた領域にいる者
それ以後もいくつかの部屋にて、現れたモンスターをエリスさん一人が倒して俺達は道中を進んでいった。
どれをとっても瞬殺だ……時にはエネルギーブレードで一閃、時には《念動力》で操ったナイフで遠距離攻撃。あるいは、これまた一風変わった使用法なんかも披露したりしていたね。
「ぐぉるぁぁぁぁっ!! ぐぉっしゃあっ!!」
「ほいほい《念動力》っと。自分で自分の身体を操ればそら、それこそ宙にだって浮けちゃうぞー。ほいさほいさエネルギーブレード!」
「ぐぉりゃりゃああああああっ!?」
迫るモンスター、ティラノライナス──ティラノザウルスじゃないよ。ティラノザウルスみたいに大きなサイだね──を相手に、なんと空中を華麗に飛行しながらエネルギーブレードで斬り裂く。
自分の《念動力》で、自分の身体を浮かしたんだ。前から数回目にしていた技法だけれど、改めて見るととんでもないことをしているんだよね。
これもシステム側の想定を上回っている。まあエネルギーブレードほど突飛なものでないからこういう使い方ができる可能性は考慮していたけれど、実際にできるオペレータが出現する可能性については低いものとされていた。
なぜならシンプルに難易度が高いためだ。自分自身を操作する、というのは実のところ、普段やっているような身体の動かし方とはまた感覚が異なるみたいだからね。
「《念動力》のサイコキネシスで、自分の身体を操作する……超高等テクニックですね。スキルを持っていても、素質がなければできる芸当じゃない」
「あ、う、うん。あ、あれは私には無理……や、やろうと思ったことはあったけど怖くてできなかったよぅ」
「怖い、ですか? ランレイさん、あなたほどの方がそう言うのは、一体」
「自分を、その、俯瞰して。完全に意識と肉体を切り離して肉体を遠くから操作する感覚……っていうのか、な。ぴぃ、説明難しい……」
同じスキル《念動力》を保持しているランレイさんも、エリスさんが当たり前のように行っている行為の難易度が理解できているようだった。若干血の気が引いた感じで、ある種のドン引き的な反応を示している。
香苗さんも思わず尋ねたところ、分かるようで分からないような説明が返ってくる。
肉体と意識を切り離す感覚。そして遠くから、肉体を操作する感覚──通常、普通に生きていて感じることはとても少ないだろう感覚だ。
離人症的な、精神由来の現実感の乖離とはまったく異なるもののようだね。こればかりは俺も未体験だもんでいまいちピンと来ないんだけど、どういうんだろう。
少し考えていると、葵さんが朗らかに笑ってランレイさんに答えた。
「はっはっはー! いえいえ今のでなんとなく分かりました、要は幽体離脱して遠くから、コントローラーで自分の身体を操るようなものという感じですかね? ……えっ、師匠気持ち悪いことしてませんこれ、だいぶ?」
「あっ、うん! それ、その感じ! じ、自分の身体を画面越しに、コントローラーで動かすと言うか! だから俯瞰的に自分の位置や敵の動きも見れるんだけど、でも五感はそのままだからすごくチグハグっていうか! 気持ち悪いの! すごく!!」
「えぇ……?」
「まるでエリスさんが気持ち悪い人みたいになっちゃったけど……まあ、想像するだにゾッとしそうな感覚だってのは分かったわ」
語弊があるというか、エリスさんが気持ち悪い人的な感じになっちゃったけど言いたいことはわかるよ、ランレイさん。
幽体離脱的な、意識と肉体が乖離した状態に自発的に移行してそこから肉体を動かす。なんとも複雑な話だけれど、それゆえに精神的な違和感とか不快感は相当なものだろう。
何しろ不自然極まりない状態なわけだからね。
それをエリスさんは当たり前のようにこなしていて、しかも日常的な戦闘における手札の一つとしていつでも使えるレベルにまで到達させている。
これは、努力だけではどうにもならない領域だろう……スキルとの親和性の高さに加えて空間把握能力、自身の五体への理解、そして自我や意志の強さもなければ到底成立しない代物だ。
「ハッハッハー、お疲れ様ーだけどなんかこう、私のことが誤解されてる気がするね。エリスさん別にキモくないよー、やってることはまあ、言われてもしかたないけどー」
「お、お疲れ様です……分かってます、ランレイさんもそんなつもりでの発言じゃありませんし。でもやってることは、まあ……」
「ご、誤解させてごめんなしゃいぃ……お、同じスキル保持者としてこう、羨ましいけど羨ましくない絶妙のラインだったのでついぃ……」
「ハッハッハー、正直で素晴らしい! ランレイさんの感覚は間違ってないよ。実際、いろんなことを学んだ今となってはエネルギーブレード同様、こんな使い方も本来のものとは違いすぎるって知ってるからさ」
ティラノライナスを仕留めたエリスさんが、戦闘を終えてテクテクと歩いて戻ってくるわけだけど。ランレイさんのちょっと誤解されそうな発言も朗らかに笑うあたり、なんと言うやらおおらかな人だ。
これまでの長い旅路のなかでやはり、経験があるんだろうね。自分のスキルの使い方やら、あるいは未来予知まで含めてあまりにも探査者として特異であることを。
俺の目にも、この人はもはやオペレータの枠組みを超えちゃってるようにも映るしね、実際。
正直、今の段階で出現するなんて思ってもいなかった存在だ……オペレータのさらにその先を行くモノ。そんなのはシステム領域にあっても、理論上のこととしてしか想定されていないからね、未だ。
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