余暇を持て余した精霊知能達による空間転移を用いた遊び
近未来的スポーツ施設は外観もさることながら、やはり中身も近未来的という感じだ。
そもそもワームホールをふんだんに駆使していて、見かけよりずっと広く大きいのだ……こればっかりは現世では現状、絶対にあり得ない仕組みだね。
受付を終えて会員用のリストバンドを受け取った後、さらに奥に進めばまず空中にタッチパネルが浮かぶ。
今回楽しみたいスポーツの種類や必要な道具を選ぶのだ。話を聞くにヌツェンはティートレやクロノジーテとキャッチボールをしているそうなのでバッチリ選択肢に入っているそれを選ぶと、最後にリストバンドを翳せば登録終了だ。
その瞬間、俺達がいる空間はすぐさまワームホールによる転移が行われた。
白亜の、清潔感しかない建造物内から緑豊かな自然公園、そのなかでも特に広々した感じの草原へと出たのだ。
ピクニックだってできちゃいそうな、爽やかさ全開の光景へと早変わりである。
「うおおお!? こ、これは!」
『す、すご……ワームホールを使うにしても、相当凝ってますねこれ……』
「だろう? 精霊知能にも物好きはいるということだな。空間転移技術をまるで玩具同然に捏ねくり回して遊び倒す趣味人はそれなりにいるのさ」
神奈川さんとステラが、思いがけない空間転移に驚いている。顔には出さないけどヴァールも若干怪訝そうにしているね。
正味なところ、俺としても結構意外というか面白い使い方してるなって印象だ。ビルのエレベーターもワームホールを使って各階層への移動を実現していたけど、さらにそれを拡張させた感じかな。
ずいぶん空間転移に情熱を注いでいる精霊知能がいるみたいだなー……アフツストも苦笑いしているように、普通に必要ないレベルの弄くり方というか使い方だし。
いやでも俺は良いと思うよこういうの。面白いし楽しいし、何より発展性がある。これをさらに突き詰めていけばもっと面白いこともできちゃいそうだなって期待が持てるのだ。
それは何より素晴らしいことだよ。個性という心を持った精霊知能達ならではの、可能性の具現の一例ってところかな。
個人的に好感を持ちつつ草原を見渡す。晴れ晴れとした快晴の下、いくらか精霊知能達が思い思いに過ごしているなかで──いたいた。
すぐに見つけることができた。ヌツェン達だ。
「んんんんナーイス・ピッチーング!! 良いぞぉヌツェン、熱い青春の風、感じちゃってるぞーッ!!」
「もうちょい静かにできませんかね……っと。はい次行きますよクロノジーテ姉様、そうれっ!」
「もひもひ、よし来たー……って、あっコマンドプロンプト様」
「いや危ない! よそ見せずボール取ってボール!」
紫の髪をショートボブ風にした、つり目っぽく勝ち気な印象のある20代半ば頃の軍服姿の女性、ヌツェン。
ストライプのシャツに短パン姿の、黒い短髪のいかにもなスポーツマンって感じのムキムキマッチョマン、ティートレ。
そして今、俺に気を取られてヌツェンからのボールを無視してよそ見しているのがクロノジーテだ。
桃色の長い髪がふわふわに膨らんでいる、なんだか大型犬みたいな印象を受ける10代後半頃の女の子だ。セーラー服に身を包んでいて、こちらを見る顔つきはどこかぼーっとした呑気さがあるというか幼い。
っていうか普通に危ないんですけど! 慌ててクロノジーテに呼びかける。
彼女はほあ? みたいな顔をしてからあっ! と気づいたのか、フニャフニャ笑いながらボールに向き直った。さすがに精霊知能ゆえ、問題なく手に着けたグローブでキャッチする。
「ほにゃほにゃ、危ない危なーい。コマンドプロンプト様、ありがとー」
「大丈夫ですか先輩! いえ、それもですけどコマンドプロンプト様! それにアフツスト兄様やリーベ姉様方も!」
「やっほーですー! ヌツェンちゃーん!」
「待たせたなヌツェン。ティートレやクロノジーテも、せっかくだから挨拶すると良い。我らが至高存在とそれに従う同胞達が来てくれたぞ」
特に大事なくボールを受け止めてもらえたことに安堵していると、クロノジーテやヌツェン、ティートレもキャッチボールの手を止めてこちらにやって来る。
ていうかヌツェン、先輩精霊知能のことを兄姉呼びしてるのは相変わらずなんだなあ。大ダンジョン時代以降に発生した精霊知能達にはそういうノリの子が少なくないと聞くけど、みんなこんな感じなんだろうね。
さておきヌツェン以下、ティートレとクロノジーテも立ち並びアフツストの指示に従い挨拶してくる。
ピシッとしたヌツェン、爽やかラガーマンなティートレ、桃色大型犬オーラ全開のクロノジーテと何やら好対照な三人トリオだ。
一応クロノジーテにはマシネって相方がいるんだけど、今回はいないみたいだね。
「ヌツェンに会いにわざわざお越しくださったんですね! ありがとうございます! せっかくなので僕らも同席させてもらいましょう、んんんんフレーッシュな精霊知能ティートレと!」
「実はベテラン精霊知能なクロノジーテどぇーす。ほへほへよろよろー」
「ちゃっかり先に名乗ってる!? せ、精霊知能ヌツェンですみなさま、お久しぶりですはじめましての方ははじめまして! よろしくお願いします!」
名乗りまで暑苦しいティートレと、ほわほわ笑うクロノジーテと、そんな二人のノリに振り回されてる感すごいヌツェンと。
やはり個性的な三人トリオはかくして挨拶してきた。というかティートレも一応新人さんなんだよな……あまりの濃さに全然そんな感じしないんだよね。
やっぱり体育会系ってすごいや!
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