災海─祈りと狂気がもろとも喰らい合う世界─
闘争世界。その本質はすなわち生きるために行うあらゆる争いを尊ぶ世界であったと語る断獄。
現代日本的な尺度としては、やはり殺し合いを最適解にして至上とするそうした価値観はなかなかうなずきにくいものではあるものの。
ところ変われば物差しも変わるわけだし、それがかの世界の真理であるとしたならば、その在り方そのものは尊重するべきなのだろう。
それに断獄自身、こちらの世界が自分の世界と異なる様相や価値観であることを理解しつつもそれを認め評価してくれているしね。
お互い様で、"そっちはそういう感じかー、イイネ! "という感じでサムズアップし合うくらいの塩梅がこの場合、適切な気はするよ。
『……とはいえだ、コマプロ。そっちのワールドプロセッサや精霊知能達もそうだが、災海については受け入れる必要はマジでミリもねーぞ。狂ってるからなこっちはこっちで』
「えぇ……?」
『邪悪なる思念とは別の方向性でイカれてるものねえ。まあどうあれあの子供がきっかけで発生した人格、そしてそれを契機に加速した狂気の世界だから、やっぱり諸悪の根源ときたらアレなんだけども』
『そうだな、全部あのクソガキが悪い。そこだけは何がどうなろうと一切変わらねえこった』
『であるなあ。我の正気は我が保証するが、我の狂気は邪悪なる思念が保証するべきであろうなあ』
そんな断獄さんと魔天さんが口を揃えてひっどい評価を下す、災海さんの混沌世界とやら。
どうも邪悪なる思念とは別ベクトルに狂気的な状態だったようだけど、とはいえそもそもの原因がその邪悪なる思念なのは否定しようもない。
脳内のアルマさんは鼻で笑ってるけどね、結局この世界やあいつ自身の世界も含め、五つもの世界が軒並み犠牲になったんだ。
その上で災海まで狂わせてしまったのだから、改めてこいつの罪深さが果てしないことに震えるよ。
ともあれ今度は狂気の世界、災海世界についてご当人から軽くレクチャーいただく。
本当に軽くだ。災海自身、そこは律儀に気にしてくれていた。
『我がカオスの世界について深く知れば、汝らの世界にも悪影響を及ぼさぬとも限らぬ。特にこの世界の精霊知能などは現世の文化に測り知れぬ影響を受けているゆえ、翻っては精神的に染まりやすくなっているやもしれんでな』
「それは……あり得ない話ではないでしょうね。御配慮、感謝します災海」
『なに、世話になっているがゆえの当然さよ……さて、では簡略化して言おうか。我がめくるめく狂気の混沌が渦巻く世界。それはな、一言で言えば共食いの世界であった』
「共食い……さっきもそんなこと言ってましたねー。精霊知能同士が、とかー……」
精霊知能達が現世ナイズされ、感性も多少とは言え現世人類のそれをラーニングしていることに触れて配慮してくれる災海さん。
こうしてみると本当に紳士で優しいワールドプロセッサなんだよなあ。うちのワールドプロセッサも感謝してるし、まさにかつて世界の造物主だっただけのことはあるって感じなんだよ。
なんだけどなあ。まったく変わらない口振り手振り身振りから、続け様に繰り出されたのが狂気だ混沌だ共食いだって話なんだもの。風邪引いちゃうよこのギャップ。
リーベも顔を引き攣らせてるし。だいたい共食いってなんだよ、さっきも言ってたけど。
『元より我が世界における巣立ちが期待できた知性体は、彼ら自身が生み出したる概念存在によって支配されていた。概念領域が現世領域を侵し、概念存在が現世存在を蹂躙して凌辱するが常だったのだ』
「それはまた、なぜそんなことに。概念存在側にバグでも起きていたとでも?」
『いやいや。単純な話でな、概念存在側が現世を支配し暴虐することに歓びを得たのだ。概念存在としてはいささかおかしな話やもしれんが、知性体の思考回路としてはバグとも言い難かろう?』
「そりゃあ……まあ、そういう考えのやつも出てきてもおかしかァねェ、のかなァ……?」
『もはや巣立ちについてなどそっちのけでなあ。永遠に現世を苦しめ続けそれを楽しみ快楽として味わうことに夢中になっていたのだ。素晴らしかったぞ、自我を得た後で確認した現世にて行われていたあの光景は』
「いややっぱバグってんじゃねェか!!」
嬉々として語るも、その中身はだいぶイカれた話だ。概念存在が自らの存在理由を放棄して、現世への永久支配と暴虐を画策していたのかよ。
そりゃ概念存在も知性体だし個体差もある、現世を脅かすことに歓びを得るモノもいるだろう。それは別に良いよ、それだって巣立ちへの試練の一つとして機能するだろうしね。
でも肝心の巣立ちを完全無視して、永遠に現世を支配し苦しめたいって方向になってるのはシンプルにバグなんよ。シャーリヒッタ渾身のツッコミも入るよねそれは。
愉快げにタコ足を揺らして笑う鮫頭のぬいぐるみ。見た目ずんぐりむっくりとしてるからファンシーで愛らしくあるんだけれど、どうも放つ雰囲気が根本的にヤバい匂いがしてるんだよね、怖ぁ……
『もっと言うなら対抗した現世人類もな、打てる手段をすべて打ってそうした概念存在を迎え撃っていた。そうとも、本当に打てる手すべてをな──今や神奈川千尋の手にある聖剣もその一つである』
「…………!!」
『それはな、対概念存在用決戦兵器にして概念存在完全否定機構、そして究極の復讐装置。人類が文字通り自らの血肉から精神から魂まで解析して組み込み構築した、人の祈りと狂気が産み出したモノなのだ』
「怖ぁ……」
そんでもってついに出てきた、人間側によるそうした概念存在に対する対抗策、その一つである聖剣。
今となっては神奈川さんの手元にあるソレこそ、災海世界の人類がまさしく祈りと狂気を込めて創り出した兵器なのだと災海は厳かに告げたのだ。
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
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