リアル天上天下唯我独尊・ワールドプロセッサ
以前よろしくワールドプロセッサの居城は、厳密に言えば今いるこの精霊知能都市にはない。
アイツはとにかく用心深くて身の安全を最優先に考えているため、いついかなる場合にあっても世界維持機構たる己のシステムを保全できるよう、システム領域内であっても特にスタンド・アローンな空間を居城としてそこに引きこもっているのだ。
そこへは都市内でも一等、大きなビルの最上階層にある特別製のワームホールから向かう。領域内には他にもたくさん精霊知能達が暮らす都市があるけれど、どの都市にも必ず一つはそうしたワームホールがあるらしい。
何かあればすぐに赴けるように。何かあればすぐに迎えられるように。そして……何かあれば、すぐにそれらを閉じて自身の空間だけは防護できるように。
ある意味では自己保身の極みみたいな仕組みになっているわけだね。
「まあ、そうなったきっかけを考えると道理ではあるんだけどね……他の誰が落とされようとワールドプロセッサだけは落とされてはならない。邪悪なる思念の遺した、ある種一番の教訓だな」
「実際に150年前、侵攻してきた彼奴めを相手取った御方が敗れたことで、事態は最悪一歩手前の形でセーフモード発動にまで至ってしまいましたからなあ。アレのおかげでアドミニストレータ計画による大逆転が成せたものの、アレのせいで世界の進行が著しく止まってしまい今も甚大な影響が出ているのも事実」
「仮にセーフモードを発動するにしても、最低限ワールドプロセッサが敗れる前ならばフォローの目もあったのだろうがな……どうあれセーフモード発動は前提として動くべきだったとするのもどうかとは思うが」
案内を受け、都市部中心に高く聳える当該ビルに徒歩で向かいながらの会話。これから先向かう、ワールドプロセッサの空間についてミュトスや神奈川さんに軽く伝えながらのやりとりである。
このあたりは特に、アフツストとヴァールがいろいろ思うところもありそうだね。
邪悪なる思念による150年前の大侵攻、そしてワールドプロセッサの敗北と当時のアドミニストレータの敗死。
これをもってさらなる世界の侵食がなされ、もはや風前の灯火だったこの世界。
それを逆転できたのは、まさしく奇跡の連続だった。セーフモード発動により世界の正常なる進行を止めきってでも得た、値千金の時間。そして侵食の影響で新たに得たレベルの概念。
何よりそれらを利用しての最後の一手、アドミニストレータ計画を立案実行したリーベおよび、現世にてその発動の土台を構築したヴァールの存在も大きい。
これらをもってこの世界は、瀕死の状態から一か八かですらない無謀極まる抵抗を試みた。
その果てに、ギリギリながら計画が成就したのは……コマンドプロンプトたる私や御堂香苗の《奇跡》という、誰にとってもイレギュラーだったファクターの連鎖の影響も大きいだろう。
ともあれ、かくして世界はついにやつから解き放たれたのである。
とまあ、終わったあとだからこうしてアレコレ振り返られるわけなんだけども。
そうしてみるとやはり、ことがここまで追い詰められるきっかけになったのはやはりワールドプロセッサが敗れたことなんだろうなって見解にはなるよね。
見れば後ろを歩くリーベやシャーリヒッタも、難しい顔をしつつも理解を示しているし。
もちろんワールドプロセッサを非難したり責めたりって話ではないんだけれど、とはいえアイツがもう少し健在な状態でセーフモードに突入できていれば、もっと安全な形での計画も打ち立てられたってのはたぶん当たりだ。
何しろ敗北したワールドプロセッサは、その力を大いに失う羽目にもなったからね。相手のすべてを喰らい尽くして自分の力にしようってヤツに敗れたんだ、そこは当然そうなる。
世界そのものと言っていいアイツの、およそ半分近くもの権能を失ったのだ。その上で世界そのものも八割方、侵食された。
そうして追い詰められた末に、どうにか発動させたのがセーフモードだ。そしてそれを皮切りにアドミニストレータ計画は発動し、その一環として大ダンジョン時代が現世に到来した流れになる。
……言うまでもなく、これは本来の世界にあっては決してない流れだ。異世界のスーパーパワーを後付けで現世に付与してそれがメインストリームになるなんて、どんなバグが起きようとこんなことになるわけがなかったのだ、本当なら。
そこまでせざるを得なかった。そのこともまた、ワールドプロセッサは自身の敗北による不始末だと考えたのだろう。
自身の損失は世界の損失、なんて唯我独尊なこともアイツだけは事実だ。そのことをこの150年で悟ったがゆえに、アイツは何が何でもとにかく自分の身だけは最優先で保護するようになったんだろうね。
「改めて聞くと、なんともはや……本当に、本当に追い詰められていたんですねえこの世界も。私がいた魔天世界もまあ段階を追ってひどい有様になっていきましたけど、ここもそうなってたかもしれないと思うと肝が冷えますよう」
「大ダンジョン時代が本来にはない流れ、ってのはイマイチピンと来ないんですよね、これが。何しろ生まれた時から当たり前にステータスやら探査者やらモンスターやらダンジョンやらはあったわけですし。たぶん、今生きてる誰もがそこはそうだと思いますが」
「だろうな。この100年、そのように人々が代を重ねるにつれて意識を変遷させていくのはワタシにも分かっていた。大ダンジョン時代以前の社会を知る者達のなかには、最後まで違和感を拭えぬままだった者もいる。それだけ100年前を皮切りに、世界は有り得べからざる方向へ変異したわけだな」
話を聞いて、魔天世界のことを思い出してか顔を青褪めさせるミュトス。そして生まれた頃にはもうすっかり大ダンジョン時代社会だったもんで、そんな事情があるなんて知る由もない神奈川さん。
どちらもリアルな反応だよね。特に俺の場合、山形公平としての15年があるから神奈川さんの意見に結構うなずけるよ。ヴァールも理解を示しつつ、どこか昔を懐かしんでいるしね。
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