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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
年末編

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1976/2006

塩辛とか好きそうな厚かましい自認の酒飲みお姉さん、出陣!

 ここに至るまで、ミュトスの力の一部を連携しながら見てきたダンジョン探査だけれど……そろそろ彼女単独での戦いも見ておく頃合いかなと思い始めて次の部屋、11階層47部屋目。

 しばらく大群でのモンスターを見てきた俺達ながら、今回は久々に三体こっきりと少なめの構成を確認できたよ。


 そしてすぐさま当のミュトスが、ふんすふんすと鼻息を荒くして昂り始めたのも横目に見る。

 なんていうか、愛嬌たっぷりでそこはかとなくコミカルなんだよなあ、すべての動作が。しかもかつて水の女神だったというイメージに沿う、清楚な美貌をも誇っていてそれだからギャップがすごいや。

 

「とうとう来たでがんすね、ふんがー! ようやっとみなさまにこのミュトスめがただただ美しく清楚で深窓の令嬢よろしく静かな湖畔を眺める洋館の一室で窓から木漏れ日の差すなか紅茶を嗜みつつ読書に耽溺するのが似合いそうな美人薄幸お姉さんなだけではないということをお見せできるでヤーンス!!」

「何の何の何!?」

「自認が死ぬほど厚かましいぜェ」

「どこからどう見ても、たまたま美人に育っただけの田舎のわんぱく酒飲みお姉さんにしか見えませんねー」

『いかの塩辛とか好きそう』


 ウキウキとハッスルしながら、何やら早口でとてつもなく自意識過剰なことを言ってのけるミュトスに、これまた精霊知能達からの容赦ないツッコミが入る。

 ステラにまでぼそっとおめータダの酒飲みだろ的なことを言われるのも大概だぞ怖ぁ……ちなみにいかの塩辛は俺も好きだ、熱々のご飯にまた合うんだよね、これが。

 

 ともあれ、まあやる気十分なのは良いことである。ミュトスの単独戦闘も見たいところだったのでここは彼女にお任せしましょう。

 見ればモンスターはそれぞれアイアンベア、ゴールデンアーマー、そしてこちらは初見のニトロスパイダーだ。

 

 アイアンベアとゴールデンアーマーについては特に変わったギミックもなく、シンプルな破壊力と防御力、そして素早さを誇るストレートな敵だろう。

 こないだ宥さんとダンジョン探査した際にも見かけたね、この組み合わせ。たしか公園を模したダンジョンでシーソーで遊んでたっけかな。そこだけ言うとメルヘンながら、揃ってB級モンスターのなかでも相当な上澄みだよ。


 対してニトロスパイダーだが、これは知識としては知ってるけどたしか、爆発する蜘蛛の糸を吐き出すという性質を持っていたと記憶しているよ。50cmくらいの、まあまあ大きめの蜘蛛で個人的にも大変怖い。

 そんな蜘蛛の性質について、俺よりはるかに詳しい香苗さんも説明してくれる。

 

「ニトロスパイダーについては粘着性のある蜘蛛の糸を吐き、それが何かを捕らえるとそのまま爆発までしてきます。本体自体はそこまで強くありませんが、とにかく糸には気をつけてください」

「アイアイサー! ……ようしよし、行きますよ三界機構の御三方! こちらの世界のコマンドプロンプト様にもご照覧いただきましょう、異なる世界のワールドプロセッサ、その力のほんの断片だけでも!! 《イミタティオ・トリニタス・コスモス》!!」

 

 情報を受け取ってミュトスが一人で部屋に入り、高らかに宣言してスキルを発動した。己のなかにいる三つのワールドプロセッサ、三界機構の三体へ。偉大なるその力の一欠片だけでも、たしかにこの私に示してみせると。

 光眩くミュトスが輝き、そして力を引き出していく。頭部に兜を纏い、翼を生やす──魔天の力を引き出した、空戦形態とも呼ぶべき第一の姿!

 

 ミュトス・魔天。

 高速、高機動戦闘を主とする形態へと早変わりして、彼女はすぐさまニトロスパイダーへと突撃していった!

 

「キシキシキシキシ、キシシッ。キシシ────!!」

「なんのその、蜘蛛の糸とて華麗に避ける! ……爆発する前に仕留めちゃうなら、ニトロもへったくれもないですよねフライハーイっ!!」

「キシッ!?」

「ぐるるぁぁっ!!」

「────!」

 

 すさまじい加速度でまっすぐに突き抜ける、ミュトス・魔天のスピードはモンスターの攻撃どころか意識さえも追いつかせることはない。

 ニトロスパイダーがさっそく吐き出した爆発性の蜘蛛の糸も、華麗に回避して彼女は接敵した。背にした翼が光を放ち、すれ違いざまに敵の脚部をあっさり切り落とす。

 

 あれは、細かく超振動しているのか。だから触れるだけでも切断効果があるんだな。すさまじい威力だ。

 それでいて速度もいきなりフルスピードで、動き出しからものの一秒で接敵からの切断、そして離脱まで行っているよ。

 

「速い……!! 私の目にも辛うじて見えますが、これはあまりにも」

「み、見えなかった。さすがにレベルが違うか、まだ追いつけない」

「御堂香苗はやはりS級なだけはあるな。神奈川は今後、レベルが上がれば見えることもあるだろう……実際、ワタシの目にもあまりハッキリとは視認できなかった。これが魔天の力を借りた、精霊知能の力か」

 

 香苗さんや神奈川さん、ヴァールの視力でも追いきれない今の動き。おそらくリーベやステラも似たようなものだろうし、はっきり見えてるのは俺とシャーリヒッタくらいなものか。

 三界機構のうち一体だけ、魔天だけから力を借り受けている今の状態でも、ミュトスの戦闘力は精霊知能の枠を超えているからね。

 こうなるのも当然だろう……シャーリヒッタと並んで世界最強の精霊知能は伊達じゃないってことだね。

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― 新着の感想 ―
少しの間だけでも句読点を飛ばしたのは見事ながら自分のことだけじゃねえかそれでも使徒か!なミュトスちゃん。 この面子(+α)が出てきたってことは、ダンジョンの壁剥がせっていうメッセージだな(誰からの!…
2026/03/13 19:38 こ◯平でーす
薄幸の美女ミュトス… まぁ、半分は自業自得の“帰ってきた酔っ払い”状態ですけどねぇ。 最高神からの叱責って、そういうことをしていたからなのでは? アルマに魔天世界を食べられたのは不幸だけど、それ以上に…
縁側で一升瓶抱えてそう(ラベルは『神殺し』で) もしくは飲んでる紅茶、ブランデー入り紅茶抜き? なんとなく初動攻撃でマリーさんの初戦闘シーン思い出しました〜。
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