コメントが流れるタイプの動画だと絶対赤コメまみれなヤツ
これで見るのは何度目だろう。相変わらずとてつもない威力である。
ミュトス・災海が放ったメサイア・ディスペンセーションがダンジョンの壁と言わず道と言わず部屋と言わずぶち抜いていったのを、俺は仲間達と並んで確認していた。
眼前に広がる、広々としすぎたダンジョンの風景。ずいぶん見晴らしが良くなった遠い向こうに、下階へと降りる階段だけがぽつねんと見える。
滅多なことではお目にかかれないだろう、人力で作り上げられたダンジョン内の空き地──それをわずか一撃で軽々と成し遂げた張本人、ミュトスがスキルを解除して駆け寄ってくるのを待ちつつ、俺は香苗さんやヴァールとアレコレ所感を述べ合う。
「うーむ。さすがに三界機構の力は桁が違うわ……ベナウィさんでもフロア丸ごと大部屋にするのはできますけど、ミュトスの出力はそれさえ超えてますよね、たぶん」
「ですね。《極限極光魔法》でうっかり一階層一部屋にしてしまった例の動画は私も観たことがありますが、アレも相当な時間をかけて放出し続けた末のことです。ここまで早く、一撃でなどというのはできていなかったと思いますよ。いえ、画面上ではひたすら轟音と白い閃光が迸るだけの怪動画でしたので検証のしようもありませんが」
「あの動画か……ネットでも大いにバズり、今なお語り草となっているらしいな。ベナウィ・コーデリアの名を世界に知らしめたのは怪我の功名かもしれんが、ワタシとしてはあまり極端なものを世に出さないでくれと当時、一応問題がないか確認した時に思ったものだな」
「えぇ……?」
やはり比較対象って言ったらアレだけど、似たようなことができるほぼ唯一の探査者としてベナウィさんの名前は出さざるを得ない。
あの人の異名"うっかりベナウィ"を世に広めた決定的な動画……ダンジョン探査中、スキルの威力調整をミスってモンスターごとダンジョンを薙ぎ払ってリフォームしちゃった映像は、世に出てもはや10年以上経つけど未だに伝説扱いだからね。
約5分かそこら、画面が白熱に覆われ何も見えなくなって轟音と破壊音、ついでに同行していた仲間の方だろう悲鳴と怒声が微かに聞こえる阿鼻叫喚が続くだけの動画。
それが終わると、元々土塊の部屋にてモンスターと対峙していたはずの光景が綺麗さっぱり、ドーム何個分ですかねってくらいの広大な未開墾の土地になっているという内容だ。
通常の探査動画ではまずありえない一連の流れはまさしく配信事故。そしてその後の仲間達に詰められて大量の汗を流しながら必死にうっかりを連呼する若き日のベナウィさん。
彼の実力とネタっぷりをまざまざと世に知らしめた形になるいわゆる神動画なわけだけど、香苗さんやヴァールも当然それはチェックしていたようだった。なんならヴァールなんてため息混じりにWSO統括理事としての見解を述べている始末だよ、怖ぁ……
「そんなとんでもない事案にも増して、とんでもない威力を見せつけたのが今さっきのミュトスさん……ってわけですか。さすがですね、これが三界機構の力か」
「どもどもお疲れちゃんちゃんこです! いやー不肖ミュトス、最初は一発放てばすぐガス欠だった《イミタティオ・トリニタス・コスモス》もすっかりろくな消耗もなく連発できるでござんして! あー、でもさすがに連発は難しくはありましたけどねー」
「そこはまあ、むしろ良いことですかねー……? あんまりあの威力を、やろうと思えばポンポン乱発できるってなるとちょっと過剰にもほどがありますしねー」
戻ってきたミュトスは相変わらず元気で、まるで消耗はないみたいだ。そこはさすがウーロゴスをすべて取り込み精霊知能として完成した姿だと言いたいけれど、とはいえ今のような攻撃を連発するのも難しいみたいだ。
まあ、見るからに三界機構の力のなかで最大火力だものな。それゆえチャージとかクールタイムもあるだろうってのはうなずける話だ。
リーベなんかはなんなら、そのことに若干ホッとしている節さえ見受けられる。
あんなの無尽蔵に撒き散らせるような状態だったら、さすがにちょっと危険すぎるしね。さっきのミュトスとか例のベナウィさんの動画とかくらいが現世で許されるギリギリラインの破壊魔っぷりであって、それ以上になると制限されても仕方ない領域になってくるだろうし。
「ミュトスも割とチョーシ乗りだかんなァ。ベナウィじゃねーけど勢い任せにバンバンぶっ放すなんてしたら、いやダンジョン内ならそんでも良いかもだけど当たり前にされっとちょっと怖いかもだぜ」
「ドキーッ!? い、いえいえしませんよそんなこと!? たたたしかにかつて水の女神だった頃には、ノリと勢いしか勝たんみたいな感じでしたけども! 今はそりゃもう得た力に対して責任はきちんと意識しとりますです、ハイ!」
『自分でドキってなっちゃってる……もちろんミュトスのことはみんな信頼してるけど、それでも三界機構の力はあまりに強大だからね。手にしたものへの意識や責任感はもちろん、持っておかないといけないと思うよ。ね、私の千尋』
「え? あ、ああまあ。翻って俺も気をつけなきゃいけないとこだしな、そこはお互いに気をつけていかなきゃだ」
シャーリヒッタにも言われてしどろもどろな反応のミュトス。彼女自身、己の振るえる力の強さは当然理解しているがゆえにプレッシャーだろうな、さぞかし。
とはいえステラも言うように、彼女がそのあたりを見誤ることはないとここにいる誰もが信じている。水の女神だったモノとして、素の人格はあまりに真面目で清らかなんだもんな。三界機構から力を借り受けている立場という自覚と自認も強いし、悪用とか乱用はしないだろうと確信できるよ。
同じように突如、力を得た経緯がある神奈川さんもそのあたり、似た者同士な生真面目さがあるからシンパシーを覚えているみたいだ。
こちらはこちらで精霊知能だし、彼自身も自制的な上にステラが常にいてくれるから滅多なことにはならないだろうけどね。
揃って後付けの力を、それでも正しく使おうとしてくれているって点でどちらも心強い話だよ。
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三巻
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