山形くんから遠い未来へ。ちょっぴりだけのメッセージ
見事な手際で青いのの特殊耐性を無効化し、その上で倒し切った神奈川さん。ステラも大喜びで半透明のまま彼に抱きついていて、なんともはや一大決戦を終えたみたいなノリである。
でもこれで彼は、たしかに一つの壁を越えた。今やったのと同じに魂の力を引き出せば、受肉していない概念存在相手だろうと問題なく戦うことができるし権能だって封じ込めることもできる。
人間としてサークルを相手取っていた頃、ライバル関係にあった瀬川とは戦えても、それを支援していた悪魔セーレには手出しできなかったみたいだけどもう心配ない。
仮に似たような出会いが次にあったとて、今の彼なら先に悪魔を叩いて無力化するなんて芸当も可能なのである。
「お見事でした、神奈川さん。一度使えば感覚は概ね把握されたかと思います。それが、魂の持つ力をそのまま引き出した状態です」
「ええ、分かります……《星明かりの聖剣》を発動した際に放たれるエネルギーの、本体というかなんというか。例えるならスキルが清酒で魂の力がどぶろくというか。濾過するまでのそのままのものって感じで理解できました」
「おっ! 良い例えされましたね神奈川さん! 思わず帰ったら日本酒を熱燗できゅーっと締めたくなりました、うぇっへひひひ!」
「そ、そう……」
なんか独特な例えをし始めた神奈川さんはともかく、酒というだけで即座に反応した後方のミュトスがすさまじい。
怖ぁ……酒なら何でもいいのか。リーベが凝視してるよ、背後から。
俺は酒のことなんてよく知らんけど、濾過する前とした後がそれぞれ魂の力とスキルって理解はまあまあ合ってると思う。
それそのものだと余分なものが混じってるエネルギーを、魔天世界にあった概念に合わせて加工したのがスキルだからね。もっというと加工する手段と結果が異なるのが超能力って感じなのだ。
「いくらか注意点を挙げておきますが、その力そのものはスキルと違って破壊力とかはありません。あくまで権能無効化、概念干渉ならびに相殺が精々ってところなのは知っておいてくださいね」
「相殺……相手も同じように魂の力を使ってきた場合、こちらと使えばお互い無効化し合うんですか」
「はい。その場合は互いの干渉力を競い合うことになるため、完全に素の実力でのやり合いになりますね────と、緑のもサクッと片付けます」
「むーん」
覚えたての技術について、注意事項を数点教えつつも俺の足は残る緑のスライムへと向かった。神奈川さんの修行が一段落した今、残っておいてもらう必要性もない。
すぐさま距離を詰め、浄化の力を込めた山形くんハンドで軽く叩く。こっちのは打撃以外無効ということで何もせずとも殴れば勝てるから、あれこれと技法を用いずに済むから楽だね。
俺の攻撃はモンスターの魂を確定で輪廻へと還す称号効果がオートで付与されている。
神奈川さんが仕留めたさっきの青いのはたまたま還っていったけど、赤いのと併せ緑のは確実に生まれ変わってもらうよ。
いつかどこかでまた、お会いしましょう。
「…………後はそうですね。それに付随して言うなら、自分より魂が格上や同格付近の相手には通じない可能性が高いので、そこは気をつけてください。そういう点では、魂の格に関係なく問答無用で権能自体を否定する聖剣のほうが、対権能という面で使い勝手は良いですね」
「あ、はい。といって今の俺とステラの場合、魂の質だけで言えばそんなのは精霊知能かそれ以上の存在、つまりワールドプロセッサ様とコマンドプロンプト様くらいになりますか」
「あと創造神クラスとかですかね? 言ってはなんですが織田くらいの最高神とて、魂の力を使えば一方的にこちらの土俵に引きずり込めますが……それ以上の格になれば概念存在であっても精霊知能級はあります」
「強さの有無とはまた別の話ですけどねー。始原の四体とかも精霊知能の干渉はレジストできますけど、殴り合いになったら手も足も出ないでしょうしー」
「魂の質と単純戦闘力とは関係がない、ということですね勉強になりますメモメモメモりメモメモメモり」
加えて気をつけたいのはやはり、先ほども述べたが魂が同格以上の相手だと通用しないかもねってところだ。
とはいえ、今や精霊知能な神奈川さんより格上以上なんてのは早々いないのであまり気にするとこでもないんだけどね。これはむしろ、今後この力を少しずつでも備えていくだろう人類に向けての……畢竟、今この話を猛烈な勢いでメモしている香苗さんに向けての補足だ。
無論、聞いたことをそのまま即座に垂れ流してもらっては困る。困るんだけど、今後のことを考えると少しずつでも知識が広まっていけば良いとも俺ちゃん的には思うわけ。
なのでひとまず香苗さんにも聞いといてもらって、たとえば彼女の周囲に今後こんな力を使い始める人が出てきたらその時にでも軽く情報をそれとなく伝えてもらうとかすると助かるのだ。
それだけでもたぶん、未来に大きく影響してくるだろうさ。
すべてはいつかの巣立ちのために。それを見越してのシステム領域から人類に向けての、ちょっとしたメッセージってところかな? まあとっかかり程度なものだよ。
ここから先は人類自身が、自らの歩みのなかで自然と身につけていくものであるべきではあるからね。
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