聖剣よ、天への扉を今叩け
赤いのを俺が倒したのと同じやり方で、今度は神奈川さんに青いのの相手をしてもらう。
魔導系および魔法系スキル以外の攻撃無効化。無法に近い特殊耐性、その概念そのものに魂の力を引き出した攻撃を加えて麻痺させ、その上で倒してもらうのだ。
《星明かりの聖剣》で喚び出した聖剣、今度は最初から鞘から剣を引き抜いた二刀流スタイルで構える神奈川さん。その横顔は緊張と不安、しかして漲る闘志に溢れていて実にイケメンさんだね。
彼にとっては初めての試みとなる、魂から直接エネルギーを引き出しての戦い。これができればさらに精霊知能らしい実力を備えられるようになるのでぜひとも、時間をかけてでも身につけてほしいよ。
「知識はある。あとは引き出し方の実感を理解するだけ、体感するだけ……!」
「ゆーん」
『頑張って千尋。知識があるならきっとできるから。精霊知能として、千尋がさらなるステップアップを図る時だよ』
「ああ、頑張るぜステラ。お前と一緒に在り続ける、その値打ちがある俺であるために……! 俺は、どんな壁だろうと乗り越えていくんだ!!」
「ゆーんゆーん」
ステラのエールを背後から受けて、やる気満々に答える神奈川さん。この二人は実に王道の主人公カップルって感じで砂糖を吐きそうなんだけれど……
青いのが合いの手をいれるみたいにゆんゆんゆんゆん蠢いているのがどことなくシュールだ。いや面白がりはしないけども。青いのにも、こちらの都合に手伝ってもらってるわけだしモンスターながら感謝してるよ。
さておき、神奈川さんは構えて集中し始めた。彼の魂がにわかに震え出し、内に秘めた力を放ち始めるのが分かる。初歩の初歩の初歩、魂の圧が不完全ながら周囲に撒かれていった。
精霊知能クラスの知識を得た以上、扱い方も理解しているということだろう。思いの外スムーズに出せてるな。
「…………よし……ここまでは良い。力を引き出すことはできた、次は敵の特殊能力、概念そのものを知覚する……!!」
『五感を研ぎ澄ませて、人間としてでなく精霊知能として見て、聞いて、察して。今の千尋がそうすれば自ずと分かってくる。敵の魂のカタチ、そこに宿る権能の存在に』
「……見え、る……っ!! 青いスライムの身体に宿る、モノ……魂が放つ、力と権能……因果のカタチ!!」
次いで青いのの魂を認識し、その特殊能力たる権能……今から機能停止させる部分を因果ごと見抜く作業だ。
正直、ここが一番難しいだろう。目利きみたいなもんで、理解したとて知識があるとて、こればっかりは慣れや積み重ねがものを言うからね。
それでもおっかなびっくり、拙いながらでも感知できているあたり、やはり神奈川さんは今や精霊知能ということだろうね。
素の人間がここまで至ろうとするには、それこそスピリチュアルな世界にどっぷり身を浸したうえで何年も何十年も修行しなければならないだろう。
仙人とか道士とかってカテゴリが人間上がりの概念存在にはあるけど、そういう連中は元々その手の修行を重ねた果てに至れたような手合いだ。そんなのに即座に追いつけたなんて、精霊知能と融合でもしてない限りはありえない話だよ。
「ゆーん。ゆーんゆーん」
『見えたね、理解したね。だったらあとは簡単。引き出した力を纏い、それをもって該当する権能部分を攻撃するだけ!』
「お、おう……! い、いくぜ聖剣……新必殺!」
ステラのサポートをも受けて、見事汗塗れでも青いのの権能を見抜いた彼がいよいよ力を引き出した。己の魂からさらに力を引き出して、それを左手は逆手に持つ聖剣の鞘に纏わせたのだ。
蒼い、稲妻めいた力の奔流。初めてだもんでできる限り力を込めているのか、これでもかと迸るエネルギーが視認化されていく。
プラズマさえ放つその鞘を、振り上げながら──
神奈川さんは新たな境地、魂の力をも組み込んだ己の新必殺技を青いのに叩き込んだ!
「パス・オブ・ヘヴン/ノッキング・オンッ!」
「ゆーん────っ」
「っ……なんか今、金属音が俺の脳内に直接流れた! なんだこれは!?」
『落ち着いて千尋、それは成功した音だよ。千尋の技が、権能を一時停止させた音なの』
打撃そのものは無効化するゆえ、青いスライムにはなんら痛痒はない。けれどその魂、そしてそこから放たれている権能については別だ、そこにはちゃんと神奈川さんの攻撃が届いていた。
彼の頭のなかでのみ響いた金属音。それこそが権能停止の合図というか目安だ。彼は今、ものの見事にぶっつけ本番で一発成功をしてみせたんだ。
やはり粗は残るし、俺が先ほどやったのに比べるとずいぶん効き目も抑えめだ。そもそも聖剣自体に上位互換たるオーソリティ・キャンセラーがある以上、この力をこの使い方で扱う必要は彼に限ってはほぼ皆無と言えるだろう。
けれど、それでも彼は踏み出せたのだ。精霊知能の標準装備の一つを身につけた。そしてシステム領域側のモノとしてまた一歩、大きな歩みを進めたんだ。
それを寿ぐように、俺は言った。
「ステラの言う通り、青いのの封印に成功しました! ……ならあとは何をすべきか、あなたならもうわかっている」
「ッ、はい! ……青いスライムよ、付き合ってくれてありがとうな」
「ゆーんゆーん、ゆーん……」
「今、楽にするぜ────パス・オブ・ヘヴン!!」
力試しには成功した。ならばやるべきは、速やかに今回協力してくれたモンスター、青いスライムに対して引導を渡すことだ。
特殊耐性を封じられた今ならあらゆる攻撃が通る。やはりそれを理解しているのかなんかしょんぼりした空気をしはじめたあのスライムに、神奈川さんは感謝の言葉を口にする。
そして、その魂をも救えるように──今度こそ刀身をもって、彼はパス・オブ・ヘヴンを放った!
切り裂かれる青いスライム。光の粒子へと還っていくその魂が、輪廻に還っていくのを確認して俺は息を吐いた。
お見事でした、神奈川さん。
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