山形くん!ネーミングセンスは微妙だぞ山形くん!?
「ぬーん」
「むーんむーん」
「ゆーんゆーんゆーん」
「にしてもぬぼーっとした3匹だなあ……どことなく癒し系ですらあるけども」
カップルスライムに青いのがくっついてトリオになった、ファミリースライムに相対する。
人型のスライムで目とか鼻とかもろくに分からない有様なのに、ぼーっと突っ立ってゆらゆら蠢きながら呻くさまはどことなくゆるキャラめいてさえ見えるよ。
実際、カップルスライムにしろファミリースライムにしろ探査者界隈のみならず、世間様的にも結構人気のモンスターだったりするそうだよ。
ぬいぐるみとかストラップが作られて、ゲーセンの景品とかにされてたりね。人類の敵ながらモンスターによってはその姿から愛玩的に慕われるモノもいたりするのだ。
とはいえ実際相対すれば、可愛らしさなんて吹き飛ぶくらい厄介な性質なんだから困る。レクチャーってことで俺の隣に出てきた神奈川さんも、額に汗を流しつつも警戒を怠ることなく目の前のモンスターを見ている。
さて……じゃあやろうか。軽く説明から入ることにする。
「精神体。および権能への干渉方法は口にしてしまえば短く簡単です……誰しもに一つずつ備わっている各々の魂、そこから直接、引き出した力を五体に纏うだけ」
「魂の力、ですか。ステラの知識にもたしかにあります。この世界が用意している本来のスーパーパワー、ステータスにも匹敵する超能力の発露と」
「スキルにしろレベルにしろ超能力にしろ、その由来となるエネルギーの出処は魂ですからね。いずれも魂が持つ力を加工調整したスーパーパワーとして出力させています。その源泉となる魂の力を、今回はそのまま直に使っちゃおうというわけですね」
ここでサラリと言うけども、スキルや超能力の源たるは結局が魂の力だ。各々がそれぞれ持つエネルギー量に許された範囲内で、オペレータはスキルを、超能力者は超能力を習得して行使できている。
とどのつまり本質的には同じ種類の力なのだ。これについては後方にてメモを取っている香苗さんも驚いたようだった。思わずペンを走らせる手を止め、目を見開いてこちらを見ているね。
当然の話なんだけど、スキルやらレベルなんて力が何もないところからいきなり生えてきて、無からスーパーパワーが解き放たれるなんて理屈はありはしない。
なんであれリソースは必要で、ステータスの場合は覚醒したオペレータ各人の魂が持つ力、普段使われていない部分を利用しているってわけなのだ。
本来ならば遠い未来。いずれ徐々に巣立ちに向けて超能力が開花していくのに用いられる領域を、ステータス機能のために使っているのが実情なんだね。
そしてその領域の大小、エネルギーの多寡は個体差があり、それがスキル獲得上限数とか、あるいはステータスとは別口に超能力を獲得している一部オペレータの存在にもつながっていることだった。
「リンちゃんの蒼炎とかが身近な例ですね。彼女の魂の容量的に、ステータスを獲得してなお超能力を獲得できるだけのスペースがあった。その状態で魂の力を引き出す境地に達した結果、彼女はオペレータでありながら超能力者にもなったんです」
「そういうパターンもあり得るんですか……てことは、俺も今からその方法を習得することで超能力者になると?」
「あ、いえ。魂の力を直接引き出すってだけでは超能力者とは言えないでしょう。あくまで霊体やら精神体に干渉できるようになるだけで、発火能力や予知能力あるいは霊能力技法なんかはその引き出した力をさらに加工して、自在に扱えるようになる必要がありますから」
『あとは正直、適性もあるよ千尋。魂から力を引き出すだけならやり方を覚えれば誰でもできるけど、それを超能力の形で行使するにはセンスが必要な領域だから……そういう意味だとオペレータ周りよりも余程、才能の世界なの』
「なるほど……」
スキルや超能力と、それらの源泉たる魂の力は同一のものではない。魂の力の先にあるものがそれらなのであって、それそのものだけではスーパーパワーとは言い難いのがシステム領域としての見解だ。
なんていうかな、源泉掛け流しと温泉の違いと言うか。そのまま利用するのが魂の力で、それをより適した形に加工調整して行使するのがスキルや超能力って感じなのだ。
そしてステラが言うように身も蓋もない話だけど、超能力については明確にセンスがものを言う世界だ。
スキルと違ってパッケージングされてるわけでない分、出力も習得方法も完全に未知数というか、人それぞれの感覚や感性に依るからね。
技術として体系化されている霊能力とかもあるけど、あれだって人間側による独自の積み重ねによるものであって、システム領域の関与するところではないし。
その点、スキルのほうはシステムからして習得条件が定められているものも多いから、そこが判明してしまえば超能力よりはとっつきやすくはある……とはいえその分、出力も枠組みのなかに収まっているため、よほどのセンスがなければそれをも超えていくなんて難しいんだけどね。
こればかりは一長一短だよ。
「で、今からやるのが魂の力を直接引き出すやり方です……これをもって、ファミリースライムの持つ耐性無効化能力を一時停止させます」
「…………! 権能への干渉ってやつですか!」
「そのとおり────あんまりやったこともないんですけどね、っと!」
「ぬーん」
宣言とともに一気に距離を詰める。一瞬で赤いのの眼前に現れた俺は、それと同時に力を行使した。右拳に宿り迸る蒼色の波動。
魂から直接、エネルギーを引き出して拳に込めたんだ。山形くんビームが便利かつローコストかつ手っ取り早いもんで、あんまり使わないやり方だけどもね。
セーレの精神体をとっ捕まえるのにいくらか使ったくらいかな? こんなやり方。まあ触るくらいならここまでエフェクトマシマシにする必要もないんだけど、今回は見た目的にも分かりやすくね。
ぶっちゃけ俺個人にはまるで必要性のない力だ、言っちゃ悪いが余興に等しい。その程度でしかないものを、今はそれでも必要とすべき者達のためあえて用いる!
「権能停止、えーと名付けはまあ別に良いか山形くんパンチ!!」
「ネーミング放棄しましたー!? 良い感じに説明した矢先に、なんでそういうとこだけ雑なんですかー!?」
咄嗟になんか、良い感じに格好良い名前とか言おうと思ったけど全然思いつかなかったや。無念。
リーベからの的確なツッコミをもいただきつつ、俺は赤スライムの胸元に思い切り拳を突き立てた──その存在の奥底にある、権能に対して干渉したのだ。
「大ダンジョン時代クロニクル」
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
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「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史完結しました!
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【ご報告】
攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
書籍版、コミカライズ版併せて発売されております!
書籍
一巻
amzn.asia/d/iNGRWCT
二巻
amzn.asia/d/aL6qh6P
コミック
一巻
amzn.to/3Qeh2tq
二巻
amzn.to/4cn6h17
三巻
amzn.asia/d/cCfQin2
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