ゴブリンとオークはファンタジー界のフリー素材や!(誤解を招く表現)
ダンジョンの内部へと進入すると、いたってオーソドックスな土塊の道と床、壁がいつも通り見えた。
つまり外部情報の読み取りなどは行われていないようで、そこでまず俺は一安心って感じで吐息を漏らすよ。
何しろ湖岸近くでしょ。そんなとこの情報読み込んでたら、下手したらいつだったか夏のプールの時みたいな水没ダンジョンだったかもしれない。
その場合でも俺の神魔終焉結界の機能の一つ、地形情報読み取り無効化能力があるから平気ではあったけど……余分な力は使わないに越したこともないからね。
「じゃあ、行こうか……ところで戦闘はどんな塩梅で行くんだ? 最初からみんなで組んで行くのか、とりあえず一人ずつやっていくのか」
「まずはウォーミングアップも兼ねて、交代で一人ないし二人ずつでやってみても良いのではないか? ワタシとしてもそれぞれの現状把握というか、力量を見定めたいところではあるからな。特にミュトスと神奈川千尋についてだが」
「へうっ!? みみみみ、ミュトスめがなんかやっちゃってます!? 急な先輩からの査定宣言に心の古傷がルンバにタンゴにワルツにサンバ!?」
「なんの古傷か知らんが誤解するな。三界機構の力を得た、君の改めて見定めたいというだけの話だ。これまで見てきた戦闘はどれも相手が特殊で、モンスター相手というのもなかったからな」
「にゃ、にゃるへそ。ミュトスちゃんホッと一安心……」
俺の問いかけにヴァールが答えた。まずは一人ずつ、身体を温めるのも兼ねて単独ないし少人数でモンスターを相手してみようという提案は、なるほど俺としても興味を惹かれるものだ。
特にミュトスに神奈川さんの戦いぶりが気になるってのは完全同意だしね。
何やら古傷とか騒いでるミュトスは例によって魔天世界のパワハラ最高神さんを思い出しちゃってるんだろうね怖ぁ……なんだけど、たしかにまともなモンスター相手にどう戦うかは気になるところだよ。
これまで見たところ、ウーロゴスだプレーローマ・アンドヴァリだと特殊というかキワモノ相手ばかりだったからね。すでに探査者として少しずつ独立しようとしている彼女の、平時での動きには関心があるよ。
「神奈川くんについてはリーベちゃんも気になりますねーっ! ステラちゃんと合体したニュー神奈川くんのニュースキル《星明かりの聖剣》、その出力を見てみたいですー」
「オレも同感だなァ……ミュトスもだがインターフェイサーの戦力として今後、大いに頼ることにもなるんだ。上司として把握しておきたいし、総責任者たる父様にもせっかくの機会だ、ご覧いただきたいところだぜ」
「それは……俺やステラとしても好都合ですね。新参者の未熟な身として、先輩方にご指導ご鞭撻いただけると嬉しいですし」
『私の千尋は、今も立派に《星明かりの聖剣》を使いこなしていますけど、それでもまだまだ伸び代に溢れていますから。ぜひとも彼の勇姿と秘めた可能性を見ていただきたいです』
同じく神奈川さんについても、リーベやシャーリヒッタがしきりに気にしていて俺も同感だ。ミュトスと同じで新人精霊知能、そして特別なスキルを用いたスタイルの探査者なわけだしね。
インターフェイサーの総責任者としても、やはり確認しておかねばならないところでもある。何より当のご本人が、すごく生真面目なことを言ってもいるし。
ドヤ顔というかいかにも鼻高々で旦那を自慢するステラ──今は半透明で、神奈川さんの後ろをふよふよ浮いてついてきている──も希望しているし、これは一つ見定めさせてもらおうかなって気になるよ。
もっとも、神奈川さんの場合はそもそも元が人間でかつ、ステータスを実質得たての新米さんってこともある。だもんで、やるとなると誰かしらが一緒なのが望ましいしサポートやフォローも徹底したほうが良いけども、ね。
「それでは決まりですね……と、さっそく見えてきました、最初の部屋です。モンスターの数は、四ついますね」
「ブルオーガ、ホークオーガ、ラビットオーガの三体にサウザンドスネークが一体。まあB級ダンジョンらしいラインナップだな、オーガの派生が三種類というのは少し珍しいが」
「ていうかゴブリンとオークとオーガは派生形多いなー」
話もある程度まとまったところで最初の部屋が見えてきた。香苗さんが確認して言ったとおり、通路からも見える部屋は広く、そこには四体のモンスターがいる。
猪のように巨大な牙を生やしたオーガ、ブルオーガ。鷹のような翼を生やして空を舞うオーガ、ホークオーガ。そしてウサ耳生やして飛び跳ねるオーガ、ラビットオーガの三種類がまずは目立つな。
俺が今、思わず口にしたとおりモンスターってのにも派生形的なやつがいるんだけど、ゴブリンやオーク、オーガは特にバリエーションが豊富だとされているね。
素のオーガ、赤だったり緑だったり青だったりする肌に2m超えの巨体という特徴はそのままに、何やら翼とか牙とか耳とか生やしていたりするパターンがちらほらいるのだ。
そしてそれらは特にレアってほどでもない。たまに見かけるけど驚きはないかなーってくらいだね。コメントするヴァールも淡々としているし。
反面、無数の蛇がくっついた巨岩のようなモンスター・サウザンドスネークはそれなりにレアなタイプだろう。いつぞや探査のなかでランレイさんが仕留めたA級モンスター、ミリオンスネークのB級バージョンみたいなやつで、大きさもオーガくらいはある。
総じてまあ、B級だしこんなもんだよね! ってラインナップだ。
確認した俺達は、顔を見合わせて部屋へと進入した。
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
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