シチューにはご飯派?それともパン派?
やって来ましたお夕飯、予定通りのクリームシチューだ俺ちゃんこれ好きマジで好きー。
食卓の真ん中にデデン! と置かれた大きな鍋に真っ白で具材たっぷりのドロドロ濃厚スープがなみなみ入っている様は、それだけでもなんだかテンション上がるよね。
他にも緑がみずみずしい生野菜サラダも用意されていて、あとはシチューに付ける用のパンなんかもある。
ここは好みだね……個人的に俺ちゃんとしては、シチューにご飯は全然ありだと思える派なのでまずはご飯をいただくよ。後からパンも当然、食べるけどね。
アイも専用机にちょこんと座り、底の深いお皿にたっぷりのシチューを用意してもらって、と。
よし、じゃあ食べますか。
「いやー美味しそうだ! それじゃいただきまーす!」
「いただきます! ……んんー、美味しい! あー、なんか冬って感じしてくるー」
「きゅうー! きゅう、きゅう!」
「濃厚で美味しーですー! あ、ちなみに今回の料理はお母様のお手伝いで優子ちゃんも参加してますよー。具材の切り方、個性出てますねー」
「割といつもより雑なゴロゴロ加減になってると思うけど、まあシチューの具ってなるとこのくらいのほうが食べ応えあるわよねえ。助かったわ、優子」
さっそく実食だ、各人お皿によそったシチューをいただきますしてから頬張る。
見た目に負けないどろり濃厚加減、塩梅の良いコクと旨味がまろやかなクリームに乗って口内で繊細な味わいを紐解いていく感覚は至福だ。
俺的に、冬と言えばこれとお鍋! ってくらいに季節感あるメニューだもんで、一口食べただけでいよいよ冬の訪れを実感する。
なんていうか、厳しい寒さに耐えて宿に辿り着いた旅人を温かく迎え入れてくれるような味がするよ。
そんなシチューの具材、鶏肉やにんじん、じゃがいも、ブロッコリーとかマッシュルームもいい具合の大きさと柔らかさだ。
聞けばこのへんは優子ちゃんが家事手伝いの一環ということで担当してくれたらしい。最近いよいよリーベに負けじと頑張り始めたようで、兄として家族として偉いなって思う。
シチュー初体験のシャーリヒッタも、満面の笑みで妹ちゃんを褒め称えた。
「すっげーいい感じだぜ! 優子、頑張ったなァ!」
「へ、へへへ……そうでしょ? まあ私にかかればざっとこんなもんってわけよ、へへへ」
「基本なんでもやればできるのよ、この子。学校でも家ではありえないくらいキッチリしてて成績も良いみたいだし、家事も本腰入れればすぐに一人でなんでもやるようになれるわね」
「さすがだなあ! 探査に精を出してる公平もだけど、さすが父ちゃんと母ちゃんの子だよ」
照れながら鼻をこする優子ちゃんに、さすがの母ちゃんもいつもの厳し目コメントを抜きに褒めてあげている。
おっしゃるとおりでこの子ってば、前にも言った気がするけど基本お外だと優等生なんだよね。成績優秀才気煥発コミュ力抜群の栗律中学のマドンナ扱い。
強いて欠点を言うなら所属してる陸上部では幽霊部員やってるところくらいかな? でもあそこの陸上部、顧問からしてやる気ないからある種の幽霊部員のたまり場みたいになってるからね。
とりあえず外面的に部活動に在籍はしておきたいけど、プライベートのほうを優先したいって生徒は大体陸上部員だったりしたはずだよ。優子ちゃんもそのパターンってわけだな。
ともあれそんなだから、家でぐうたらしてても本腰入れればすぐになんでも卒なくこなせちゃうのがうちの妹ちゃんなのだ。
これには夏休みボケの酷さに叱っていた両親もにっこり満面の笑みだ。俺まで含め、自慢げにしてくれているよ。
ただし、と母ちゃんはどこか、憂いげに俺のほうを見てきた。
なんぞや?
「公平はちょっと、さすがに急にしっかりしすぎだけどね……もうちょっとのんびり、子供でいても良いと思うけど」
「え。あ、あー……ま、まあ基本はのんびりやってるよ? その、周辺がいろいろありすぎてアレだけど、割と子供させてもらってるとは思うけど」
「それで半年の間に何度も、いくつもテロ組織の相手してるんだから大変よねえ。あんたやリーベちゃん、シャーリヒッタちゃんやミュトスさんが、私らには理解できないくらいのすごい存在だからそこは仕方ないのは分かるけど。たまにちょっぴり、不安になることもあるわ」
「それは正直、私も思うよ。特に兄ちゃん、いざとなったら平然と命だって投げ捨てちゃいそうで」
「しないよそんなこと!? さすがの俺でも命は惜しいよ!?」
怖ぁ……そんな何かにつけ自己犠牲に走るように見えたりしてるの? 今の俺。そんなわけないじゃん、普通に長生きしたいんですけど。
ここぞとばかりに不安を吐露する優子ちゃんだけど、母ちゃんや父ちゃんはさすがにそこまでは思っていないようで目を丸くして娘を見ている。
未だに、邪悪なる思念との決戦に向けてアレコレやってた頃の俺が印象深いんだな、この子にとっては。それが原因で精神的なバランスを崩しかけていたほどだし、仕方ないのかもしれない。
話を聞いていて、アイも幼いながらに不安を覚えたのだろう。その場にいながらも頼りない鳴き声をあげて、つぶらなひとみを潤ませながら優子ちゃんを見上げる。
「きゅう、きゅう〜……」
「アイちゃん、心配してくれてるの? あはは、ありがと。今の兄ちゃんなら大丈夫だって、頭では理解してるんだけどね。心がどうしても、身構えちゃうところはあるかも」
「……そっか。なら、兄貴としては毎日元気な姿を見せ続けて、妹を安心させてやらないとな」
「そうですねー! リーベちゃんもシャーリヒッタも全力でお手伝いしますから、どうか安心してくださいみなさんー!」
少しばかりの空元気を見せる彼女に、努めて安心させるように笑みを浮かべる。今、どれだけ言葉を重ねてもこの子の安らぎにはならないだろう。
俺にできることはやはり、毎日を元気に過ごして平穏無事に暮らすことだ。それを本当に当たり前のことにしていけば、自ずと優子ちゃんの心の蟠りを解れていくはずだしね。
リーベもシャーリヒッタも手伝ってくれる気満々だし、これなら全然大丈夫だ。
そう笑いかけつつ、俺は自分を大切にし、家族との生活を大事にしようと改めて心に誓うのだった。
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