"完成のその先を行くシェン"
「我が星界拳に敵はなしッ────ひわわわしつれいしまままました、香苗さん一緒に戦ってもらってありがとうございましたはわわわわわ」
「そして戦いが終わるとこの調子ですか。なんともはや、悪い意味でなく個性面ではすでにS級ですね」
「あっはっはっは、言えてる! 奇人変人の魔境がS級って聞くけど、正直ランレイなら全然違和感ないわねっ!」
「そ、そうっ!? え、えへへへ! きょ、恐縮でしゅう」
「えぇ……?」
戦闘終了後、凛とした鋭い顔つきと言葉遣いから一気に平時の、オドオドした陰キャちゃんムーヴに切り替わるランレイさんを見て香苗さんとアンジェさんが率直に評した。
それはその、正直聞く側の受け取り方次第では失礼にもなりかねないストレートなものだったものの……ランレイさんはめちゃくちゃ嬉しそうに照れているので、まあこれはこれで良いんだろう。
奇人変人の魔境と、S級がそう呼ばれていること自体についてはまあ俺もその、同意しちゃうところはある。
マリーさん、ベナウィさん、エリスさん、サウダーデさん、アレクサンドラ、ロナルドさん、そして誰よりも目の前の香苗さん。全員もののみごとにクセが強いというか、それぞれ別方向に際立った目立ち方をしてらっしゃるものな。
そしてランレイさんの二重人格っぷりもそこに比肩し得るかといえば、そりゃするだろうと言うのも正味俺も思う話だ。
逆説的に言えばこのくらいアクの強い方でなければ、S級に至るだけの高みには至れないとも言うことなんだろうか。だったら俺はS級にはなれないだろうなあ、どこまでいってもパンピー山形くんだし。
「それにしても相変わらずの威力ですね、ランレイさんの双魔星界拳も。フェイリンさんの真道星界拳と体系的には近しいのですが、それでも姉妹でここまで色合いが異なるのも面白い話です」
「そ、そう? たしかにリンの真道星界拳は、そ、そのう。すごくオーソドックスな星界拳、始祖カーンが最初に編み出した星界拳を極めた果てに発展させた感じ、だけど。わ、私のは星界天狼拳──二代目ラウエン様から分派した、足刀主体の流派、だ、だから」
「そのあたりはアンジェリーナから多少、聞きました。ちなみに他にもあるのですか、星界拳の流派とは」
「あ、う、うん! 星界地龍拳、星界万象拳、星界五光拳、星界甲獣拳、星界剛鉄拳、星界風神拳とか……他にも多数! ちなみにリンはそのすべてを修めています。て、天才です!!」
「怖ぁ……」
いや流派分かれすぎでは? さしもの香苗さんもアンジェさんもお、おう……みたいな顔してシェン一族の飽くなき星界拳へのチャレンジ精神に慄いていらっしゃるよ。
しかもそんなにある流派ぜんぶ、リンちゃんは余さず修めてるのかあ。さすがは完成されしシェンといったところか、さすがの麒麟児だよ。
そう言えばもう一人、リンちゃんとランレイさんのお兄さんであるハオランさんもいるよね。ゲーム配信しまくってる度を超えたイケメンさん。
あの人もあの人でリンちゃんをして異次元の天才だの、突き抜けすぎてて理解できないだの言っちゃうやべー人らしいんだけど、一体どんな流派を使うんだろうか?
気になって聞いてみると、ランレイさんはピタリと止まって少ししてから、コクンと首を傾げた。あれぇ?
「に、兄ちゃんの流派……なんだろ? そう言えば知らないかも」
「え、えええ?」
「あ、も、もちろん兄ちゃんも修行は最低限でもしてますです、はい! ただそのぉ、ど、独自すぎるのと、本人があんまり強すぎて。ステータスもないのにリンや私相手に張り合える人間なんて、た、たぶんそんなにいない気もすると言いますか」
「……はあ?! え、アンタの兄貴ホントに人間!?」
「人間だよう!! で、でもその、も、もはや人間っていうより星界拳そのものっていうかぁ……あの人は完成されしシェンのさらにその先を歩んでるっていうかぁ……これからのシェン一族に、あの人なら新しい未来をくれるかもしれないっていうかぁ」
唖然とする俺達に、しどろもどろになりながらも兄へのフォローになってないフォローを言い続けるランレイさん。
もはや要領を得ないながらも、とにかくハオランさんが異質なのだけは伝わってくる……そも高レベル探査者のリンちゃんやランレイさんと張り合える非能力者の時点であまりにもおかしいもの。
いや、もちろんそういう存在はいないわけじゃないだろう。広い世界だし、探せば能力者と渡り合える非能力者とか、そのための技術とか力はきっとあるはずだ。
そう、それこそ蒼炎とか。ハオランさんはあの超能力を、リンちゃんが生まれる前からリンちゃん以上に自在に操れると聞くしね。
完成されしシェン。
探査者としてステータスを得ることもその条件に含まれているのがリンちゃんならば、ハオランさんはその条件こそ満たせなかったものの、秘めたる可能性に関してはリンちゃん以上のものを持つ傑物なのかもしれない。
だからこその"完成のその先を行くシェン"か。
一つのゴールである地点とはまた、別のルートからさらなる進化のために道を極めていくヒト。これまでの集大成たるシェン・フェイリンと対照的な、これから先を目指して行くシェン・ハオラン。
今でもSNSでやり取りしている感じ、そのあたりにハオランさん自身が自覚的だとは思わないけど……シェン一族はそれを感じ取って、だから彼を里長にしようと思ってるのかもしれない。
100年の悲願を達成したシェン一族を、新しい地平へと引っ張っていってくれる指導者だと信じて、だね。
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