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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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190/1866

朝から飲む酒の味は格別にうまい

 その後もいくつか百貨店内をうろついた後、俺たちは都内の散策に戻った。今度は地元の商店街っていうか、市場を巡っている。

 

 リンちゃんはその間も折に触れては気に入ったものを買っていた。相変わらずの金に糸目をつけないムーヴだったけど、ちょっと安心したのは、安くても良いなと思ったら普通に選んでいたところだろうか。

 つまるところ自分のセンスを最優先にした結果、お高い買い物になりがちというわけなんだね。里では着飾ろうにも民族衣装ばかりだから、目移りしてしまうらしい。

 

「里長とか、先達の星界拳士にも会う度、釘を刺されてる……だから、普段は節制。鍛錬もあるし」

「なるほど? 使うべき時以外は貯めておくと」

「ん。こういう、すごい立派な町に来た時、貯めてた分を使う。最高」

 

 なんと言うべきか……懐の紐はそれなりに意識しているみたいで何より。里長とリンちゃんの先輩方に感謝。

 そんなわけらしいから、リンちゃんの金銭感覚については問題なさそう、かな。さすがに保護者でもなし、逐一見張るわけにもいかんしね。

 

 市場は朝からでも盛況で、新鮮な魚介類を中心に様々なものを売っている。

 土産物屋もあるし、なんかせんべい屋とか、香辛料とか売ってる店もある。お、ソフトクリームだ。買っちゃお。

 

「色々ありますねえ」

「素晴らしい活気ですねえ。いや、驚きましたよ。というか朝から露店でビールを売っているのがまた、乙というやつですねえ」

「…………いや、ベナウィさん?」

「なんですか?」

 

 歩きながら、いつの間にか手にしていたビール入りのプラスチックカップを呷る、ベナウィさんに思わずツッコむ。なんですか? じゃねえよ。

 まさかの朝っぱらからの呑兵衛である。リンちゃんも香苗さんも今気付いたみたいで、唖然とした様子で彼をガン見している。

 そんな俺たちの様子になんでもないように、ベナウィさんは笑って言った。

 

「いやあ休日の朝、行き交う人々の中で飲むアルコールは素晴らしい味わいですね。どうです一献、ミスター山形」

「未成年ですけど!? いや、えぇ?」

「そもそも朝から飲むのはどうかという話なのですが」

「ベナウィさん、お酒好き?」

「ええ、お恥ずかしながらですが」

 

 若干頬を染めて言うのは、恥じらいからかアルコール由来か。一見冷静でもどこかテンション高めにビールを飲む彼。ああ、500mlくらいの容量はありそうなカップがあっという間に空だよ〜。

 

 たしかに、この市場では朝からビールやらつまみやら売ってるみたいで、なんなら朝から飲んでる人だって見かけなくはない。

 とはいえ大体お一人様かカップルさんだ。家族連れっていうか、子どもを連れている人で酒飲んでそうな人はほとんどいなかった。

 結構な人混み、万一の時に子どもから目は離せないものな。酒で正常な判断能力を失うわけにもいかないのだろう。

 

 翻ってベナウィさんを見る。

 香苗さんがいるとはいえ、リンちゃんに俺だってまだまだ子どもだ。人生経験は圧倒的に足りてないから、どこ行くにしたって大人がいてくれると安心感は違うし、何するにしても判断能力が違うだろう。

 そういう意味で、ベナウィさんって最年長だから、香苗さんさえ含めての監督役とも言えるんだよ。この四人の中では、だけど。

 

 その監督役があんた、いのいちに酒かっ食らうってあんた。しかもこの人、遅刻してきてるからね。俺に酒を勧めてきたことも含めてかなーりやべぇわ。

 ジト目で見ると、何を勘違いしたのか陽気に肩なんて組んで笑い始めた。

 酔っぱらい始めてるよ、この人!

 

「ハッハッハッハ! いやあ私は嬉しいですよミスター!」

「いやあの、何がでしょう?」

「あなたの噂はマリアベール様からも聞いていましたからね! どんな方かと思えば、とても素晴らしい方だ! 協力する甲斐というものがある!」

「は、はあ。そりゃどうも……」

 

 なんか一人、盛り上がってるし。あっ、またフラフラと露店に行ってる! なんか、日本酒買ってる!?

 しかも今度はおつまみにさつま揚げの串まで仕入れてきてるし。この人ガチじゃん、ガチの酒飲みじゃん。

 

「いやぁー楽しいですねぇ! 写真撮りましょう、ほらほら」

「え? い、いきなりですか」

「S級探査者のグループSNSに送り付けるんですよ、噂の救世主なう! なんて。マリアベール様もいますから、酒も一緒に映してあげると悔しがりますでしょうねえ」

「こ、怖ぁ……」

 

 S級の人たちの間で噂になってんのかよ俺。ていうかベナウィさん、なぜかマリーさんに喧嘩売る気満々だし。

 そもそも俺と酒を同じ画面に映すの止めてほしい。燃える。絶対未成年飲酒がどうので炎上する。主に香苗さんの例のチャンネルが。

 

 酔っぱらいに絡まれ始めた俺を、誰も助けてくれない。まあ外国人の方で、しかも大男だしなあ。

 哀れに震える小動物山形を見かねて、ついに香苗さんが彼を止めてくれた。

 

「止めてくださいベナウィさん。マリーさんとソフィア統括理事に電話しますよ」

「ウッ……こほん。ジョークですよジョーク、ははは」

「白々しい……」

 

 マリーさんとソフィアさんの名前を出したら、途端に大人しくなった。

 ていうかSNSでおちょくるのに、直通でやり取りするのは嫌なんだな、この人……

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間7位、週間7位、月間4位、四半期1位、年間6位

総合四半期10位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] 映画でよく見る陽気な黒人じゃん、トラブルメーカーだけど何だかんだで有能な感じの
[良い点] S級まで行く連中は、そろって癖がある説 [一言] 探索者も人間だし、財布を気にしなくていいなら欲望に正直になっちゃうのは致し方なし。 バカげた散財しないだけ、ベナウィさんはまだ理性的なんだ…
[一言] 駄目な大人だよこの人・・・。
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