甘味まで酒のあてにする人はかなり"本物"な気がする
ミュトスの普段暮らしだけでなく、インターフェイサーの拠点としての機能も担保できていることが一応、確認されたこのマンション。
まあ、逆に言えば拠点って言ってもミュトスの自宅でもあるわけだし、当然彼女以外が無造作に無許可に立ち入りしたりして良いわけもない。
だもんで基本はミュトスのアポを取って、ミーティングとかする際に集まる場所としてこの部屋が用意されていると捉えるべきだろう。
そのへん、むしろミュトス自身は残念がっているみたいだけれど。なんで?
「うーん不肖ミュトスとしましては、賑やかであればあるほど楽しさ百倍夢一万倍なわけなのでして。なんなら私がいない時でもいつでもふらっと来ては溜まり場みたいにしてもらったほうが楽しくて良いまであるんですよね」
「えぇ……? いやいや、さすがにプライベートをそこまで侵すつもりはないよ、こっちも」
「言ってもらえるのはありがたいがミュトス、君も一人になりたい時は来ると思う。そのような時にプライベートの場所が無断で溜まり場にされているのは堪らないと感じるだろう」
「いやーそこはほら、元水の女神ですから! 基本的に人っ子一人いやしない鬱蒼とした森の奥深くにある泉に万年ホームだった身として、ぶっちゃけ一人でいるほうがあの頃を思い出して落ち込むまでありますので……あと当時の上司のアレさを思い返したりもしますのでガクガクブルブル」
「怖ぁ……」
「魔天世界の最高神さん、本当に相当なモノだったんですねー……」
思わず俺もリーベも困惑とともに反応するしかない。織田と対面した時もそうだったけど魔天さん、おたくのところの最高神さんなんなんマジで……
もはや俺のなかではブラックを越えたブラック、もはや邪神じゃない? レベルまで暗黒ゾーンの存在になりつつあるんですけど。
完全にトラウマ抱いちゃってるミュトスが、当時の居住環境が常に一人だったことから孤独感を拗らせて賑やかさを求めているのも分かった。
となればこちらも、多少気遣いしつつ溜まり場めいた使い方をするほうがむしろ彼女へのケアになるのだろう。シャーリヒッタがそういうことならと、俺へと抱きつき言ってくる。
「じゃあ今後、オレとリーベは割と意識的にこの部屋にアクセスしようと思います、父様。ミュトスのアポは当然取って、探査者活動用の休憩場所みたいに使おうと思うんだぜ!」
「あ、ぜひにぜひにうへへへ助かります! なんならコマンドプロンプト様もヴァールさんも、学校の勉強用とかWSOのお仕事用とかにこの部屋使ってもらっていいですたい!」
「え、いや、まあ……機会があれば、ねえ」
「う、うむ……まあ、必要があれば、うむ」
自習とかお仕事用に! とか言われても、なあ。ヴァールと二人、曖昧な返事をする。
お気遣いはありがたいんだけど別に、少なくとも俺のほうは自習するのにわざわざ人様のお家をお借りする気はないし……ヴァールだってお仕事するのにここまで来るのもどうかって顔をしているし。
寂しがりやなんだなあ、ミュトス。話を聞くに魔天世界の頃からお忍びで人間社会に繰り出してたりもしたそうだし、本質的に人とのふれあいが好きなのかもね。
それなら理由や理屈抜きにして、それに応えるのも悪くはないさ。俺は、ミュトスに笑いかけた。
「俺も、リーベやシャーリヒッタと一緒にちょくちょく顔を出すよ、それなら。無論のこと、ミュトスの都合が良いタイミングを狙ってだけどね」
「!! はい、いつでもお越しください! ミュトスちゃん家はシステム領域現世支部、精霊知能の溜まり場として365日24時間年中無休で受け入れますです!」
「そこまではやりすぎですねー」
「つーかそれこそミュトスにもミュトスの生活があるんだからよ、外出てる時とかにゃ行けねえだろ、セキュリティ的によォ」
「そ、それはそうでした! にゃはは……」
ツッコまれて照れ顔で頭を掻くミュトス。俺達がちょくちょく行くよーって話に、相当嬉しそうにしているね。
そこまで喜ばれたら俺達としても悪い気は当然しないし、今後意識してこの子の家に遊びに行くようにはしようかな。リーベとシャーリヒッタは自分達の探査者活動の合間にも訪ねるみたいだし、俺もそういう感じにしてみるか。
ここらで一息して、ああそうだと持ってきた土産袋を持ち出す。話が前後しちゃってアレだけど、せっかく買ったものだしお渡ししなくちゃね。
なかにはいろんなお菓子やらおつまみ、あと駅弁がどっさり入った紙袋を差し出す。ほうらお土産だぞうー。
「ところでこれ、ミュトス。ささやかながらお土産だよ、良ければお茶請けとかおやつとか、はたまた酒の肴にでもしてほしい」
「うっひょーう!? これはなんともありがたき幸せ、うわうわいろいろ入っちゃってますよコレ!?」
「オレらみんながそれぞれ選んで買ったからなァ。各人の好みだもんでお前さんの舌に合うかは分からねェけど、まあ気持ちのもんだと思ってほしいぜェ」
「いやもう舌のほうが合わせますとも! そうでなくともミュトスちゃん甘辛両党なんでもござれ、兎にも角にも酒と合わせりゃなんでもイケる質でござんす! はーありがたやありがたや!」
「えぇ……?」
めっちゃ喜んでくれるのは嬉しいけど、おつまみはともかくお菓子まで酒のアテ前提に話するのやめよう?
リーベとヴァールが圧を放ちつつあるんだよね怖ぁ……しかし酒呑みは甘いものでも酒でいけちゃうんだな。よく分からないけど、みんなそういうものなのかな?
今度ベナウィさんやマリーさんに聞いてみよーっと。
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