愛と友情、勇気の大作戦
まあ、どうあれその盟約とやらについては今、明かされたんだから俺としては理解した。
で、次はリーベの方だ。
アドミニストレータを間接的にサポートするプラン。それを担当したのがソフィアさんとヴァールならば、リーベはまさしく直接的なサポートを担当している。
彼女にとって、セーフモード以降の50年は何のためにあったのか。問いを投げると、すぐさま答えは返ってきた。
「リーベの方は、主に邪悪なる思念の対策をひたすらに考えてましたねー。決戦スキルの設計とかー、天地開闢結界の解析とかー。あ、あとはセーフモード直前の大侵食で得られた、レベル概念を元にしたオペレータ計画の構想役とかも務めましたねー」
「え。めっちゃ働いてるじゃん」
「リーベちゃん、すごい」
「え? えへ? そうですかぁー? リーベちゃんすごいですかぁ〜? えへ、えへへぇ〜!」
テレテレと頭を掻いてはにかむリーベだが、いや、実際マジですごいな。実質的な邪悪なる思念対策、ほとんどこいつが噛んでるじゃん。
しかもオペレータの構想って、つまりは探査者の産みの親みたいなもんじゃないか。マザー・リーベだわ怖ぁ。
さておき、ここまで色々と長い説明を受けたが……
結局のところ、俺たちのやることはと言えば、至ってシンプルなものだとリーベとヴァールは言う。
「残る一人、決戦スキル保持者を見つけ出して、マリアベールお婆ちゃん含めて全員集合。そして三界機構と天地開闢結界を決戦スキルで無効化し、当代アドミニストレータである公平さんがやつを滅ぼす。これだけです」
「すべての能力を剥ぎ取られた、邪悪なる思念本体は……それでもソフィアまでのアドミニストレータでは太刀打ちできなかっただろう。だがあなたは違う。山形公平、なぜかはもう分かるな?」
話を振られて、俺は静かに頷いた。
これまでの、大ダンジョン時代が到来するまでの流れ。かつてと今とで異なる部分。
すでに答えは出ていた。二人を見据えて、告げる。
「……レベルの有無か」
「そうだ。高レベルゆえの強化された身体、加えてスキルによるバフ、度重なる称号効果の付与と獲得ボーナス。三界機構と天地開闢結界がないならば、フルパワーのあなたであれば勝機は十分にある」
「権能をすべて剥がした状態という前提にしろ、ワールドプロセッサ相手にそこまで食らいつけるなんて……計画に関わったリーベちゃんからしても、正直驚きですねー」
「世界そのものにも届く力……!?」
「いやはや、もうスケールが違いすぎますねえ」
驚くリンちゃん、呆れるベナウィさん。うん、もう何か、探査者って枠組みからは大きく外れてる感じだよね、いよいよ。
一方でフルフル震えているのが香苗さんだ。何か、涙を堪えきれないと溢しつつ、俺の眼前に寄ってきて跪く。
「神……! おお、救世主……! 本当にあなたは救世主でした。私は伝道師として、心から敬服いたします……!」
「やると思ってたけど! 止めてください、みんな見てる!」
「ふわー……生で見る伝道師の姿、すごい」
「狂信者ですねえ」
「ほら! ていうかリンちゃんの教育に悪い、止めてください!」
どこかのタイミングで絶対、やるだろうなと確信していたから特に感慨はない。この人は相変わらず、この人だ。
とはいえどこか目を煌めかせる、リンちゃんにとっては間違いなくあまり良くない光景だ。カルト宗教の1シーンを、ちょっと急所狙いがちのいたいけな子どもに見せるもんじゃない。
「……あなたはいつもこんな感じなのか」
「いや俺!? っていうか、香苗さんがね!?」
「もはやいつもの光景ですけどー、こうして第三者の視点から見るといやー、キマってますねー」
「いつもの光景なのか……そうか。キマっているのか……」
「キマってませんけど!?」
残念そうにこっちを見るな、ヴァール! キマってない、仮にキマってたとしても香苗さんだけだ!
どうにか香苗さんをソファに座らせ落ち着かせ、再び真面目な話に戻る。私だって真面目ですが、とぶーたれる彼女は知らん、放置!
で、だ。
俺は、今後について確認した。
「残る決戦スキル保持者を見つけ次第、やつとの決戦に移る……で、良いんだな?」
「はいー。先ほども言いましたが、この大ダンジョン時代はやつを滅ぼすかやつに食われるかのどちらかでしか、もはや動くことはあり得ません。そして、長引けば長引くほどに時間が、時代が本来あるべき流れから逸れていく。準備が整い次第、やつの本体のところへ向かいましょう」
「わかった……しかし、問題はその、最後の保持者がどこにいるか、だな」
決戦しようにも、肝心のキーパーツが一人分足りないんじゃ話にならない。ましてやマリーさん、リンちゃん、ベナウィさんの持つ決戦スキルは、対応した称号の解説から察するに三界機構を抑え込むためのものだ。
その三界機構を護る、天地開闢結界を無効化するための決戦スキルがないことには、どれだけ強くなろうが意味がないのだ。
「本体そのものにも影響しているんだから、天地開闢結界は最優先でどうにかしないといけないだろうし……ヴァール、WSOの調査で見つかったりはしてないのか?」
「明確な形では見つかっていないな。だが、ワタシ個人で言えばすでに見当は付いている」
「え、マジか」
「そうだ。今はもう死んでいるが、その当時に保持していた人間を知っているからな」
思わぬ助け舟だ。ヴァール、さすがは150年生きてる精霊知能! システムさんと裏でアレコレやってた暗躍ぶりは、伊達じゃないな。
──おもむろに、ヴァールは立ち上がった。うん? と、一堂、リーベでさえもキョトンと見守る中、彼女は指を差す。
え、香苗、さん?
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