宗教の自由はあるけど、既存団体の乗っ取りは止めてね(真顔)
結局、そこからしばらく伝道大会とそれに呼応する探査者マニアという相当にアレな光景を現出させてから、丹波先生はひとしきり満足したのか帰っていった。
俺の自由研究の中身について、知り合いの学者さんとかにもこれこれこーゆー学生の意見があったよ的な感じで話したいんだけど良いかな? とその際に聞かれたもんで、俺としてはちょっぴり考えつつもそれでもうなずき良いですよと答えたりもしたね。
「あくまで一学生探査者の個人的な意見なので、そこは念押しした上でなら、まあ、こういうのもあるよくらいでしたら、まあ」
「決まりね! 実際問題、山形くんの独自考察だから学術的な部分での信憑性とかはもちろん皆無だけれど……それでも時の大天才がまとめた研究内容だもの、マニアには堪らないわ!」
「もちろん救世の光チャンネルでも問題ない範囲、問題のない表現で公平くんの研究内容についてはピックアップしたいと思っています」
「その際にはゲストもお呼びしたいですね。主に使徒のみなさん、チェーホワさんやフランソワさんなどにもお越しいただければそれは素敵なことなのですが」
「ことを大きくするのは止めてください……」
怖ぁ……WSOのおえらいさん呼んでやることじゃないんですよ、学生の自由研究考察なんて。
たとえそれが、そのものズバリ真実であってもそれを知る人がそもそも限られているからね。
すっかりやる気の伝道師さんと使徒さんは無論のこと止められないにしても、それを受けてやはり不敵に笑う丹波先生もなかなかに剛の者だ。
俺もミュトスも、颯爽と去っていく彼女の背中を見送りながらも微妙な反応をしないではいられなかった。
「丹波先生……探査者絡みになるとあんな人なんだなあ。実はそんなに絡みなかったから最近になるまで気づかなかったよ」
「そ、そうなんですか? ええと先生なら、授業とかを受けてるのでは」
「あの人、今は二年生の世界史担当なんだよ。俺のクラスの世界史授業はまた別の先生が受け持ってるんだ。だからこないだ、いきなりクラスに乗り込んできて俺と関口くんにまとめてスカウトしに来たのは驚いたなあ」
それは突然のことだった。二学期も始まり高校での最初の秋にも慣れてきたかな? って頃、いきなり昼休み中にバーン! と教室のドアを開けて丹波先生がやって来たのだ。
なんだなんだとみんなが戸惑うなか、俺と関口くんを立たせて並べさせてその肩を力強く叩き掴んだ、かと思えば、いきなりその場で例の探査者同好会の勧誘を始めたのだ。
アレにはびっくりさせられた、日常のなかで起きたハプニングもいいところだよ。
何が"話は聞かせてもらった、君達は探査者同好会に入る!! "なんだか。すぐにさやかちゃん先生が止めに入って割とガチ目の説教までして引きずっていったからことなきを得たけど、しばらくの間、関口くんやクラスのみんなと揃って微妙な沈黙を保っていたものな。
とにかく自分の趣味に熱心で前向きな先生。
そんな丹波先生が去ったのを機に、香苗さんと宥さんも俺達のところに戻ってきた。本人達なりに有意義な時間を過ごしたのだろう、ちょっとツヤツヤしている。楽しそう。
「ふぅ……素晴らしい時間でした。分野と方向性はやや違えどともに救世主様を讃えられる存在とのひととき。学内にいるという信者達の存在も併せ、この東クォーツ高校というのはいい学校ですね」
「探査者同好会というのは学校それぞれ、あったりなかったりするものですがこの学校で立ち上げるのも面白いように思えます。そこに校内の同士達が集まれば、もはやはそれは救世の光東クォーツ高校支部といえるもの。やってみる値打ちは相当にあるかと思われますね」
「同好会を隠れ蓑にカルト宗教の支部設立を目論むの止めてください……」
これまでの登下校の風景を鑑みて、最低でも数人はいるっぽい救世主信仰に目覚めた我が校の同級生だか先輩だか。
その事実だけでも結構うわぁ……ってなるのに、まだまだ潜在的にいるかも知れないそういう人達を一堂に会させるのはさすがに目を覆いたくなるかもしれない。
いやまあ、究極的には人が誰の何をどう崇め奉ろうがそれはその人の自由だし。身を持ち崩すようなことさえなければそこは好きにしてもらって良いと思うんだけども。
他ならぬ俺についてのことだと、さすがに若干遠い目はしちゃうんだよね、これがねー。
しみじみ考えつつも、とにかくこれで自由研究の展示については主要や目的は果たした。
丹波先生と香苗さん宥さんが話し込んでいる間に俺とミュトスで他の人の自由研究を見させてもらったりもして、これがなかなか楽しい時間ではあったな。とはいえ他にも行くところ、楽しそうなところはこの文化祭にはあるもんで、いつまでも一箇所に固まっているのももったいない。
「じゃあ、次のどこかへ行きましょうか。個人的には理科実験室で化学部がやってるスライム作りとか楽しそうですよ」
「定番で懐かしいですね……元より公平くんが案内してくれるならどこでも私にとって楽園です。ぜひとも行きましょうか」
俺の提案にみなさん、乗っかってうなずいてくれる。結構興味あるんだよね化学、なんか混ぜ混ぜしてスライムとか楽しそうじゃん。
というわけで俺達四人は美術室を後にする。俺の自由研究よさらば。そのうち返却されるだろうから、その時は一応でも保管しておこうかな。
これも学生生活の想い出だしね。
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