すげぇあのマニア……伝道師とやりあえてる……
自由研究の内容──進化、派生、統合スキルという俺流の三区分を巡っての丹波先生との質疑応答。
これは俺としては香苗さんや宥さんといった"ネタバラシだと知っている組"への事実上の補足説明でもあるわけなんだけど、それはそれとして先生の知的好奇心もなかなかにすごいものがある。
かなりの勢いで質問、ぶっこんできてるもんな。
「派生スキルについては分かったわ山形くん。では次の質問をさせてほしいの……進化スキルの習得条件、これは完全にあなたの推理推測によるもの? つまり単なる当てずっぽうかしら」
「当てずっぽう、とまで言っちゃうと学生の自由研究とはいえ無責任に過ぎますね。一応参考文献として引用させていただいてます、書籍での記述からの類推です。《直感》や《金剛身》なんてのは効果からして読み取りやすくはありますね」
「"全世界スキル一覧決定版"ね。WSOが監修しているだけあって相当クオリティの高いスキル辞典ということで先生ももちろん買って読み込んでいるけれど……たしかにその二つのスキルは効果も単刀直入だからこそ習得条件も推理はしやすい、かしら。学生の自由研究で、しかも個人的見解と言い切っているものですものね」
次いでは進化スキルに絡む俺ちゃんの記述に対するご質問。といって正直、全体的にだけど基本的には俺の独自見解から来る推測って体で濁し誤魔化しの文章を記しているからね。
あまりガチな論拠を求められても反応に困るところはある。
ただ一応、引用した書籍内にも似通う類推的な記述はあったのでそこを踏み台にしている形で予防線は張らせてもらってたりはするよ。
《直感》にしろ《金剛身》にしろ、その効果もストレートなら進化前のスキルの延長上にあるものだからね。他にも《居合術》なんてそのまんまだ、《剣術》を保持した上で居合術を使いまくってればそのうち変異するんだもの。
丹波先生もあくまで学生の個人研究ってところは忘れてないみたいで多少のお目溢しはいただけそうだ。
あまりガチガチなものはお出しできないんだよ、さすがに。それで本職の研究者さん対して並の詰め方されると困るもんで、理解していただけるのは助かる。とても助かる。
「参考までにですが、私のパーティメンバーに一人《直感》を保持している探査者がいます。その探査者が言うには、モンスターの攻撃を受けたり避けたりしているうちに《気配感知》が変化したとのことです」
「A級探査者の鈴木さんですね。いわゆる御堂さん世代のなかでも御堂さんに次ぐ実力者、《水魔導》を駆使した戦法は同じく実力者の同輩たる鈴山さんと肩を並べるほどの評価を受けています」
「そ、そうですか。詳しいのですね、私どもの世代にも」
「もちろん! 特に探査者の世代区分なんて言うものは、探査者マニアからすれば垂涎ものの話題ですからね!!」
「怖ぁ……」
なんてこった、あの香苗さんが宗教絡みでない場面とは言え若干気圧されている! やっぱ同期とか同世代の話になるとこの人も、どちらかと言うと"その世代"の顔を見せるんだなあ。
さておき、以前一緒に探査させてもらった香苗さんのパーティメンバーの一人、鈴木さんを振り返る。たしかにあの人も持っていたね、《直感》スキルを。
彼は《水魔導》による遠距離攻撃を主体としつつも、けれどソロ探査をも好んで行う傾向にある方だ。
それゆえに近接戦闘は苦手なほうらしく、モンスターに距離を詰められてはギリギリで攻撃を避ける場面が多いのだとか。
まさしく《直感》の習得条件──《気配感知》保持状態で一定回数敵の攻撃を紙一重で回避する──を満たしやすい土壌が整っている。
俺の記述した推測って体の真実とも一致する符号が少なくないため、これには丹波先生も一応の納得を見たようだ。
続いて統合スキルにも言及していく。
「統合スキルについては……実のところ私もあまりよく知らないのだけれど。有名なところで言うとやはりあのサウダーデ・風間さんの《格闘術マスタリー》よね? 今まさに文化祭にも来てくださっている」
「ですね。他にもアルゼンチンのA級探査者、ジョン・ロドリゲスさんが《武器術マスタリー》を、オランダのS級探査者、ビアンカ・ヌー・ハーデルトさんが《サバイバルマスタリー》を持ってたりします」
「それぞれ同系統のスキルを、とてつもない数習得した果てに辿り着く一つの境地……! 浪漫ね、とても浪漫だわ!! サウダーデさんにはこの後、ぜひとも実際にお会いしてお話を聞いてみたいわ!! もちろんその師匠たるマリアベール・フランソワさんや弟子のベナウィ・コーデリアさんにも!!」
すっかり興奮している先生の姿は、やはりどことなく伝道師に似ている……そっくりだ怖ぁ……
さておきこのへん、統合スキルについてはあまり言及するものでもなく単なる事実の羅列に近いからね。特に突っ込まれる箇所もなさそうだ。
強いて言うならマスタリースキルなんてのは本来、長い時間をかけて成長し成熟した名探査者達が到達するかもしれない境地の一つって印象ってところかな。
そこを考えると、齢14にしてすでに《サバイバルマスタリー》を保持している逢坂さんとか、新人なのにすでに《武器術マスタリー》にリーチかけているようなチョコさんなんてのは……端的に言って異能めいた天才なんだよね。
新世代の台頭を感じさせてくれる、そんな心地を覚えるよ。
近い未来、必ずや探査者として名を馳せるだろうあの二人とその周辺人物達を思い、俺は明るい展望を抱くのだった。
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