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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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182/1850

ローファンタジーができるまで

「……って、つまりはシステムさんのご同類!?」

「そうなりますねー。もっとも、やつは狂っていますが」

 

 さらりと明かされるあの、邪悪なる思念の正体。元はやつも、別の世界を制御していたワールドプロセッサというのか。

 しかし、狂っている? たしかに言動はおかしいけど、具体的にどう言うんだ?

 リーベはポツポツと、語っていく。異なる世界のワールドプロセッサが、邪悪なる思念とまで呼ばれてしまうわけを。

 

「やつは、元いた世界をすべて、自分の身体として取り込んだんです。天地も、宇宙も、精神世界さえ。神も人も関係なく、あらゆる命と物質と精神を食らい尽くしました」

「食った? 全部? なんでそんなことを」

「そこはなんともー。ですがやつは、それだけでは満足しなかった。できなかったんです。次々に他の次元の世界を襲い、同じように食らって己を満たしてきた。これまでにすでに、三つの世界がすべて取り込まれていますねー」

 

 その言葉に、背筋が凍りつくのを覚えた。

 瞬間、思い返す。あの時感じた絶望、無念、怒りは……そういうことだったのか。

 

「三界機構……!」

「はい。三界機構はやつが食らった世界の成れの果て。今や、やつの玩具と成り下がった、それぞれ三つの異世界を、一つの形にしたモノです」

 

 あの、一切の攻撃が通用しなかった化物たち。あいつらさえ、元を辿れば邪悪なる思念の被害に遭ったモノたちだというのか。

 端末が、いずれ俺たちもこうなるんだぞと哄笑した意味がやっと理解できた。なんて悪趣味なやつだ……どこまでも、他者を踏みつけにしている!

 

 こみ上げる怒りとやるせなさを、ホテルの窓から空を見てどうにか収める。どこまでも広がる空はまだまだ、夕暮れ時でも夏に近いから真っ青だ。

 その青さに、どこか救われる心地で俺は、話の続きに耳を澄ませた。

 

「本来であれば、三界機構など生まれてしまう前のどこかのタイミングで、やつを止められたのかもしれませんでした。あの、天地開闢結界さえなければ」

「なかったこと結界か……」

「自分の元いた世界を喰らい尽くした、やつがあの絶対権能を見出してしまったのが運の尽きでしたー。あれの前には他の世界も、さっきの公平さんたち同様、為す術もなかったんですよー」

 

 悔しげなリーベの、言うことは理解できる。

 いくらなんでもあんな結界、インチキにもほどがある。何もかも無効、なかったことになるなんてゲームだったら禁止だ、禁止。

 今や三界機構と化してしまった三つの異世界のモノたちは、どれだけ無念だったろうな……

 

 いや、ていうかリーベが詳しすぎないか?

 まるで見てきたかのように言うけど、やつがこの世界に侵攻してきた時にはもう、三界機構は発生済みだったんじゃないのか?

 そのことについて言及すると、儚げに少女は俯き、答える。

 

「実を言えば……この世界も、もうすでに8割方が侵略されています。今あるこの時代、この世界は残った2割を、セーフモードという形で護っているに過ぎません」

「8割!? そんなに!?」

「はい。順を追って説明しましょうかー」

 

 そう言って、実に500年前のことからすべてが語られ始めた。

 その日。ある時突然、異なる世界から侵略者が襲いかかってきた。邪悪なる思念がこの星に根を張り、侵食を始めたのだ。

 

 当然、この世界のワールドプロセッサはすぐさま対処を開始した。システム側のあらゆるプログラムに、問題解決用の疑似人格を投射。原因究明と対策、および防衛と反撃のために動き出したのだという。

 

「ですが、最初に行われた侵食の時点ですでに、実に世界のシステム面を半分近く乗っ取られていました。その時に、やつがこれまで食らってきた三つの世界、それぞれが持っていたルールと情報の一部が、こちらに流れ込み混ざりあったんですー」

「ルールと、情報?」

「それまでの成り行きと、三界機構の天と海からスキルとダンジョン、そしてモンスターが。今あるアドミニストレータとオペレータのステータスやスキルは、本来、別の世界にてそれぞれ、独立していたシステムだったんですよー」

 

 それを知らされた時の俺たちの、受けた衝撃は計り知れなかったと思う。もはやこの世界、この時代の根幹にある探査者の各要素が、異世界由来のものだったなんて。

 リーベが言うには、レベルはそれこそ150年前、ソフィアさんが敗れて以降にこちらの世界に流れ込んできたらしい……つまりはそのタイミングで侵蝕率が8割に達した、ということなのだろう。

 

 最初の一手から半分、侵略されてしまった俺たちの世界。

 だが発想を逆転させて、システムさんはそれを逆手に取った。

 

「流入してきたスキルとダンジョンを逆に利用し、ワールドプロセッサはアドミニストレータを用意しました」

「ソフィアさんまでの歴代、その最初の一人ですか」

「ええ、ミッチーの言うとおりですよー。ダンジョンにモンスターを隔離し、それをアドミニストレータが討つことで彼らを我々の世界の輪廻に受け入れる。今で言う、オペレータの役割を一人でこなしていたんですねー」

「ちょ、ちょっと待ってください。モンスターを、輪廻に受け入れる? オペレータ、いえ探査者がそんなことを?」

「ただ倒しているだけなんですけどねえ、私」

 

 香苗さんやベナウィさんが目を丸くしている。俺もリンちゃんもだ。

 いきなり、モンスターを輪廻にどうのと言われましても。ていうか何、そこらへんにもギミックあんのかよ!

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間8位、週間6位、月間2位、四半期1位、年間6位

総合四半期10位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、そうじゃなければダンジョンやスキル、ジョブ等の不思議現象なんて、この世界に存在するわけ無いよね。
[一言] ふうむ、絶対無敵バリアなあ…会話も出来て互いに姿も見える、つまり光と音は通っている以上『絶対』ではなさそうなんだよなあ、いや実は邪悪側は数式の羅列としてしか認識していないとなると超絶厄介です…
[一言] ちまちまカウンターハックかけてリソース取り戻そう作戦?
感想一覧
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