閉幕、そしてテンション高めのイケメン
『かくして勇者関口とその仲間達は、聖剣オネスティキャリバーの力とともに悪しき魔王を倒したのでした。しかし世はまさに大ダンジョン時代、まだまだ数多のダンジョンが生まれモンスター犇めくこの世にあって、彼らの戦いは終わることがないのです。戦え! 勇者関口!! 負けるな! 勇者関口ッ!! いつの日か真の平和が訪れるその時まで、壮健なれ、探査者達ッ!!』
まさかのアドリブ関口くんビームという、とんでもないサプライズがあったものの。それはそれとして魔王もやられたし後はナレーションを挟んでの幕引きだ。
盛大に鳴り響く拍手はまさしく万雷の喝采。こりゃー言うまでもなく大成功だな。
カーテンコールとして、最後には役者陣が全員出てきて観客に向けて挨拶していく。そこも照明機材担当の俺ちゃんの腕が唸るぜ〜。
「うおおおお最高だったぜ関口くぅぅぅん!!」
「かっこいいいいいこっち向いてぇぇぇぇ!!」
「きぇぇぇぇっ!! きぇぇぇぇぇっあぁぁぁぁぁぁっ!!」
「関口くんサイコォォォオオオアアアアッ! オアアアアアッ!!」
「怖ぁ……」
照明を最後まで受け持つ傍ら、拍手とともに聞こえてくる声は興奮しすぎてやばいものもある。
たしかに関口くんのまさかの新スキル、新技の披露もあったから盛り上がるのも当然だけど、にしたって怪鳥音はやめてもろて。
同じく劇を観覧していた仲間達からも、惜しみない拍手と称賛の声はあがっているようだった。
盛大な拍手のなかでも聞こえてくるんだから、みなさん良い声してらっしゃるよね、よく通る力強さと言うかさ。
「素晴らしい演劇でしたね。無論学生レベルという前提はあれど、ここまでスマートにまとまった完成度になるとも思っていませんでした」
「そうですね、伝道師香苗。関口くんの活躍を主眼に置いているからか他の部分についてはあまり細やかでなかった印象ですが、その分、集中して彼の掘り下げを行ったのもプラスに働いたと思います」
「日本の学生さんすごいなあ! いや、ていうかマジですごいものを見せてもらったよ《精霊剣》! 太平洋の勇者だってあんなのは持ってなかったしビームなんてのも放てないし、こりゃ家族にも良い土産話ができたぞー」
「何より公平サンの照明が素晴らしかったぜェー! さすがだぜ公平サン、誰よりシャイニングをうまく扱える御方だぜ!」
「そ、そこですかー……?」
概ね高評価。良いところの生まれ育ちでたぶん、演劇とかにも幼い頃から触れていて目が肥えていそうな深窓の令嬢たる香苗さんやら宥さんにとっても、学生の催物としては素晴らしい完成度だと褒めてくださっているね。
ロナルドさんみたいに関口くんの探査者としての実力、将来性に感動している人もチラホラいるみたいだ。《精霊剣》、太平洋にお住まいの《勇者》保持者も持ってないんだなあ。
まあ、シャーリヒッタだけは明らかに目の付け所が違うんだけどね……
役者や監督、脚本を差し置いていの一番に照明担当に言及するのはやはり最初から俺目当てだからか。正直、ト書き通りに機材を弄ってただけなんだからあまり言及しなくても良いんだけど。
まあ本人がそれを良しとするならそれはそれだろう。リーベも苦笑いしている様子ながら、特に何も言わないしね。
さておき、時間にしてざっくり40分ほど。
ほぼほぼスケジュール通りに終わらせる形で、1年13組の出し物たる演劇"勇者関口物語"は幕を閉じた。
役者陣も退場し、今度こそ完全に舞台の幕が下りる。 それと同時に俺の仕事も終わりだ。
はふう、いろいろあったなあ。特にまさか、世界停止まで行うことになるとも思っていなかったよ全身筋肉痛なう俺ちゃん。
でも、その甲斐あって演劇が成功に終わったんだろう。俺しか知らないことだけど、明確に一助になれたことに我ながら誇らしさを覚えるよね。
「お、お疲れ様みんな……! あー、疲れた、緊張した! ゴメン、変なアドリブ入れてしまって!」
「お疲れー! いやもうホントビックリしたよ、何あのビーム! 公平くんみたいだったねっていうか、公平くーんお疲れ様ー!! めっちゃ良かったよ照明!」
「すげえアドリブかましたなあ関口くんよう! マジで良かったぜアレ、なんだっけ担々麺?」
「《精霊剣》! 担々麺は打ち上げの時にでも置いておこう!」
「お疲れ様、みんな!」
役者陣たる関口くん、梨沙さん、中野くん達。それぞれ明確にテンションバクアゲって感じで、大仕事をやりきった後の高揚感でハイになってるみたいだ。
分かるよ……夏休み終わりからこっち、ずっと頑張ってきたことが花開いたんだものな。その結果としてこの高評価なら、めちゃくちゃテンション上がっても無理からぬことだし。
かく言う俺もいつもより朗らかな笑顔で彼らを出迎える。なんなら他の裏方さん達やさやかちゃん先生も含め、みんなでハイタッチとかしちゃうぞ。
すごい、なんか陰キャじゃないみたいだ俺ちゃん! 関口くんともハイタッチして、なんなら気になってたところをさっそく聞いてみる。
「関口くん、すごかったよ《精霊剣》! いつの間にあんなスキルを!?」
「つい最近さ! ダンジョン探査中にいきなり進化してな! ……ただ、出力制御は問題ないんだけど、そもそも発動してそれを維持するのはまだちょっと不安定だったんだ」
「あ、そうなの? じゃあさっきのビームは……」
「勢いのままアドリブだからな。うまくいって良かったよホント。威力はまったく問題ないようにしてたからどうあれ人の迷惑にはならなかったけど、発動しなかったら大恥かくところだった。アハハハ!」
滅多にない、声を上げての関口くんの笑顔。
そっかあ、発動してしまえば制御は問題ないけど、そもそも発動するかがまだちょっと怪しいようなスキルをぶっつけ本番で成功させたのかぁ……
持ってるなーやっぱり。
さすが才能あふれるインフルエンサーってところだろうか。関口くんの、エンタメにかける情熱とか勝負強さってのを感じたよ。
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第二部・第二次モンスターハザード前編─北欧戦線1957─
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【ご報告】
攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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一巻
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二巻
amzn.asia/d/aL6qh6P
コミック
一巻
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二巻
amzn.to/4cn6h17
三巻
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