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関口くん、剣からビーム放ったってよ

 剣からビームを放つ。ゲームやアニメ、漫画とかだと割合ある話ではあるんだけれど、現実だとそんなこと普通に考えてあるはずがない現象だ。

 だけど今、たしかに関口くんは温かいだけの光とは言え段ボール聖剣オネスティキャリバーからビームを放った。まるで殺傷力のないながらも、たしかに普通に考えればあるはずもない現象を起こしたんだ。

 

 これは間違いなく今しがた、突然彼が叫んだスキル《精霊剣》によるものだ。普通ないようなことでも、あのスキルならば可能になる。

 《剣術》からの進化スキルだ。たしか進化条件は完全ランダムというか、オペレータのなかでも特定の因子を持つ者にしか発現しないタイプのものだったはずだ。


 そういう、努力ではどうにもならないような条件をもって発現するスキルは実のところ結構あったりする。

 魔導系や魔法系もそうだし、それこそ《勇者》が筆頭と言えるだろう。これはステータスを獲得できるか否かってところからすでにそうなんだけど、各個人が持つ魂を構成する因子の種類と質によってある程度決まるところがあるのだ。


 いわば遺伝子とかそういうのの魂バージョンだね。さすがにそういうのをトリガーとして埋め込む形でなければ、後付のスーパーパワーを無理なく魂に組み込むなんてのはシステム領域でも無理筋だったんだよ。

 できてたらたぶん、ワールドプロセッサならマジですべての人にスキルを与えてたと思うしね。 


「び、ビームだ! 今剣からビーム出たぞ!?」

「す、スキルじゃないの? うわ、マジではじめて見た生探査者のスキルとか。かっ、かっこいい……!」

「直前の叫びからこれはあ、熱すぎでしょ……ってか救世主って、やっぱり例の光る人?」

「じゃねえの? 久志のやつ、最近ずいぶんシャイニング野郎に入れ込んでっからな。けっ……」


 まさかのガチ探査者スーパーパワーの発露に、観客達は一瞬静まり返って後、騒然とした歓声をあげた。

 挫折と窮地からの決意表明、叫び、そして真なる覚醒。アドリブさえ込めて、完全に今の一連の流れは関口くん自身が心の底から繰り出したものだろう。


 それだけに、観客の心を否応なしに強く打つ凄みがあった。ビームの放つ煌めきの持つ、温かみもそれを助長していたのかもしれない。

 ていうかあの、光る人とかシャイニング野郎とか、当たり前のように救世主って単語だけで俺を想起するの止めよう? 他の救世主さんだったら居た堪れないじゃん怖ぁ……

 

「今の技は……何年か前に少しだけ面倒を見た私でも、覚えがありませんね。ブレイブブレイバーにあんな名前のものもなければ、ビームを放つような力もなかったはずです。やはり今叫んだスキル、《精霊剣》とやらの効果でしょう」

「ですねー……! 《剣術》からの派生スキルで、能動的に満たせる条件でない特定因子由来の完全ランダムスキルですよー! えーと効果はたしか」

「"一定時間、精霊の力を剣に宿す"だったかァ。一種の召喚系スキルと言えなくもねェが、分類としちゃ一応魔導とか魔法シリーズ側だなァ。精霊そのものじゃなくその力の一部を剣に宿すスキルだぜ」

「そんなスキルもあるんだねぇ……! ファファファ、やっぱりスキルは奥が深いよ、80年生きても知らないことだらけさね。ファファファ!」

 

 香苗さんはじめ、仲間達も同様みたいだ。

 どちらかと言うとやはりビームを放ったことそのものに言及しているようだけれど、それでも関口くんという探査者の見せた輝きについて語っているのがどうにか耳に拾えたよ。

 《精霊剣》の仕様については精霊知能も当然把握しているから、気持ち小声で解説すればマリーさんが愉快げに笑ってらっしゃるね。

 

 ちなみに、仲間内だけでもビーム的なものを放てる探査者は結構いるよ。とりわけマリーさんやサウダーデさんのようにビーム一歩手前の衝撃波を繰り出す方々だっている。

 あとはおかし三人娘とか神奈川さん/ステラとかか。こちらに至ってはもろ、今の関口くんと同系統のビームだからね。


 なのでまあ、それを踏まえると関口くんにも同じことができない理屈もないと言えばないんだけれど……しかし、今まで隠し持っていたのかこんな大技や《精霊剣》を? 言い方は悪いけど、結構目立ちたがりやな彼が?

 最近進化したのだとは思うけど、そこがどうにも不思議な話で俺はつい首を傾げた。


「えっ、何それ……あっ、えっと。ぐ、ぐおああああああ!! や、やァァァらァァァれたァァァァァァッ!!」

「はぁ、はぁ……! や、やった! 出せた、《精霊剣》! 新たな俺の、人々を護るための、力……ッ!!」


 そうしている間にも、舞台の上では魔王ゼータ・サーマが完全アドリブによる突然の怪光線に、明らかに素でビビりつつもなんとか倒れ伏した。

 間違いなく戸惑いと混乱のシチュエーションだろうによくやる。これが監督兼脚本兼魔王役の意地とプライドかぁ……

 

 感心しながらも見れば、当の関口くん自身が何やら感動しながら自分の手をじっと見ていた。

 なんだ? どうも今の、関口くんからしてもやっとこさ出せた感じなのか? どういうんだ?

 この舞台が終わったら、後でちょっと聞いておきたいかもだ。

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― 新着の感想 ―
なるほどつまり救世主の大いなる背中を目指す勇者にもまた救世の光が芽生えたと、メモりメモりメモメモり
逆境のなかで、必殺技を生み出した敵を討つ。 勇者らしいシチュエーションですね。 魔王もマジで驚きつつも、演劇を完全に演じだのは良かった(笑) 「そ、そんな…馬鹿な。咄嗟に必殺技を生み出しただと…。く…
全然知られていないスキルをさも当たり前に話す救世主一家。 周囲が信者ばかりでなければ騒動になるところだった。
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