さすがに8回も返り討ちに遭ったら、次は総力戦なんだよなあ
濃密な、極めて重要な情報ばかりを得ることに成功した取り調べが終わる。大まかなところと今後についてあらかた決めたところでもう時間にして夕方だ。
アドラメレクに対するこれ以上の深堀りは後日、ヴァールなりソフィアさんなりにおまかせすることとして今日はこれでお開きにすることとした。
「お前はやはり現世にて法の裁きを待て、アドラメレク……新目玲玖。ちなみに聞くが、委員会からお前を始末するために追手を差し向けられるようなことはあり得るか?」
「ないねえ。人間なら息の根止めればどうとでもなるけど、概念存在はそんなことしたってアバターから本体に意識が戻るだけだからねえ。それに、おたくのところの織田? だっけ。察するに西洋あたりの最高神だろう連中が本体まで押さえるんなら、彼らも迂闊な手出しは控えるねえ」
「……ってこたァ、向こうも今回のこれである程度、自分達の情報が漏れたってことも」
「当然察してるだろうねえ。あるいは次、仕掛けてくることがあるならその時には本当の本気で総力戦かもねえ」
あっけらかんと、ヴァールの疑問にもシャーリヒッタのつぶやきにも答えるアドラメレク。
半世紀にも亘る委員会との契約をも事実上終わらせたからか、法の裁きに加えて俺達によるペナルティを課されたにしても相当、清々しい雰囲気で気楽な調子だ。
まあ、こいつのスタンスとかお気持ち部分はともかく……次に委員会が動く時、おそらくはいよいよ本丸である中枢メンバー達が出張るのだろうというのはある意味、朗報だ。
それがいつのことになるのかって話ではあるけど、連中ももう、組織的にはかなり追い詰められているってことみたいだからね。
今回含め8回にわたるモンスターハザード。現世の人間に対する挑戦のことごとくを返り討ちにあったことで、すでに彼らの内部組織図は半壊の様相を呈しているそうだし。
委員会に肩入れしていた妖怪や悪魔ももう失われた今、それでも騒動を起こすというのならばそれはもはや総力戦以外にあり得ない。
すなわちここに至るまで一切、表舞台に出ることのなかった幹部連中までもが、そして首魁の委員長そのものまでもが出てくると予想されるのだ。
あるいはこの時点で現世から手を引くか……どちらにしても俺としては好都合だ。前者なら決着をつければいいし、後者ならそれはそれで大人しくしとけで終わるからね。
「しかし……もしも、委員会の正体が"そういうモノ"だとしたら。その時ばかりは、なあ」
「公平さん……もしかして委員会についてもう、見当をつけてたりしますー? っていうかしてますよねー、さっきアドラメレクと意味深にやり取りしてましたしー」
「マジですか!? さ、さすがです山形様! さす山、さす山ってやつですね!」
「えぇ……?」
俺のつぶやきから、ある程度推測を立てていることを理解してかリーベがジト目で言ってくる。ミュトスも驚いてるけどさす山は止めてね。
まあ、うん。もしかしてこれじゃない? って予想はアドラメレクの話から思ったし、さっきのやり取りで半ば確信に変わったところはあるよ、正直ね。
だけど。いや、だからこそ俺はあえてそれを今は秘すべきだと判断して取り調べから手を引いた。直前のワールドプロセッサからのメッセージのこともあり、現時点ではここについてなんらかのアンサーを口外すべきでないと考え、口を噤んだんだ。
ワールドプロセッサも間違いなく同じ考えなんだろうし、アドラメレクもまた、それゆえに核心については何も漏らしていないのだ。
それが確定した時点で、きっと、委員会に対しては現世の者達以外のナニモノも関わる資格を失う。
筋が通らなくなるのが目に見えている。だから誰も、敵も味方も、概念領域もシステム領域も今は黙っておくべきなんだね。
ゆえに俺もまた、ワールドプロセッサとアドラメレクに倣いコメントは差し控えておく。少しばかり微笑み、精霊知能達へと告げた。
「さあ、どうかな? ただ、黙るのにも黙るなりの理由があるんじゃないかなって思ってはいるよ」
「ッ!? ……おう姉貴、妹それにミュトス。余計な深追いは止めとけェ。どうやら相当な話だ、もう触れんな」
「…………みたいですねー。失礼しましたー」
「それほどなのか、あなたまでもが……了解しました。あとワタシは妹ではない、どちらかと言えば姉だ」
「ど、どひぇ〜……! 何が何やらルネサンス、触れちゃいけないとこざんす!? し、失礼しましたリンボーダンス〜……」
俺の様子から、並々ならぬ何かがあると気づいたシャーリヒッタが気を遣ってくれた。
こういうところ、さすがこないだまでワールドプロセッサの補佐役だっただけのことはある。大した洞察力だ。
当然そうなるとリーベ、ヴァール、ミュトスも従ってくれる。そう、今はこれがおそらくベストアンサーだ。
語らぬこと……それこそがこの時点では最も推奨されるべき態度であるがゆえに。
「いやはや、大したもんだねえ改めて……シャイニング山形、君がナニモノなのかは今のオジサンには知る資格がないようだけれど、いつか贖いを果たして改めて君らに従う暁にはいろいろ、腹を割って話したいところだねえ」
「俺も同じ気持ちだよ、アドラメレク……だからそれまでは大人しく、これまでの報いを受けてくれ」
感心しきりのアドラメレクが、俺からの言葉にもやはり飄々と笑い、うなずく。
途中、素の姿を晒すこともあったけど終わってみればやはりこんな調子なんだな……相変わらずの疲れたサラリーマン風アバターに、俺は呆れ混じりの吐息を漏らした。
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