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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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178/1851

光臨、満を持して!

「おおおおおおおっ!」

「健気だね、アドミニストレータ」

 

 次々衝撃波を放つ俺に、涼しい顔で端末は語りかけてくる。

 やつどころか三界機構の一体にすら届かない──すべて天地開闢結界に阻まれ、なかったことにされている。

 片や俺はと言えば、攻撃どころか動く度に身体がひしゃげていく。血があちこちから噴出して止まらない。

 

 《誰もが安らげる世界のために》を、一切の制限なくフルパワーで使い続けるがゆえの、これは反動だ。

 構うものか。俺はそれでも放ち続ける。

 これ以上、ヴァールの心を傷付けさせはしない!

 

「公平くん! 加勢します、プリズムコール・デストラクション!!」

「ライトレイ・パルサーキャノン──とはいえ何もかも防がれてますね。これ、まずいのでは?」

 

 香苗さんとベナウィさんが、合わせて攻撃を仕掛けてくれる。しかし、いや、やはり効果はない。すべてがなかったことになり、阻まれてしまう。

 信じられないインチキだ、まるで手立てがない。こうしている間にも反動で、俺の方にダメージが来てしまっているというのに。

 

「ぐ、ぅっ……げほっ、ごほっ!?」

「もう止めときなよ。それ以上やると死ぬかもよ? そこの精霊知能を泣かせたことは謝るからさ。ごめんね? 事実が時に刃と化すこと、知らない僕でもなかったんだけど」

「っ、お前はぁっ!!」

 

 血を吐き、それでも許せない敵に向けて効果のない攻撃を続ける。

 たとえ無意味でも無価値でも良い。いたずらに人を傷付ける、こいつを一秒一瞬でも食い止める!

 勝てなくても、敵わなくても、絶対に負けられない!

 

「その口を、閉じろぉっ!!」

「……分かったよ。やれやれ、ただの言葉一つ止めるのにも命懸けか。アドミニストレータ、君、中々に狂ってるね」

「何をっ……く、ぅぅっ」

「公平くんっ!!」

 

 放ち続けた衝撃波の果て、ついに限界が来てしまったみたいだ。身体に、力が入らなくて俺はその場に崩れ落ちた。

 すぐさま香苗さんが駆け付けて、俺を抱きとめてくれたが、くそ。手足が砕けてるみたいで動かない。身体のあちこちが血塗れだ。

 

 《誰もが安らげる世界のために》は、リーベが制御してくれていないとこんなに強力で、こんなに恐ろしい反動が来るものなのか。

 つくづく、あいつには世話になっていることを痛感する。思えば、何だかんだといつも、リーベが支えてくれているから俺は、ここまでやってこれたんだろうな、多分。

 

 そう、そうだよ。

 ソフィアさんもヴァールに対してこんな想いを抱いているのだとしたら。

 ──たとえ手足をもがれて、顔面を擦り潰されても。護りたく、なるよなあ。

 

「ヴ、ヴァール……ソフィア、さんは、きっと」

「喋らないで! 安静にしていて、公平くん!!」

「きっと、お前が、大好きだったんだよ……!」

 

 香苗さんの腕の中、乱れる息でそれでも伝える。

 涙を流すヴァールに、教えなくてはならない。

 俺にとってのリーベが、ソフィアさんにとってのヴァールなら。

 お前を庇って死ぬことだって、きっと、きっと。

 

「後悔、なんてしてないさ……ソフィアさんは、お前を、庇ったことを」

「山形、公平……っ」

「お前は、何も悪いことなんてしていない……!」

 

 だから、そんな風に泣くのはもう、止めてくれ。

 150年も戦い続けた果てが、そんな絶望の涙だなんて、あまりにも哀しいじゃないか──!

 

「そのとおり、ですよー」

「……………………っ、え?」

 

 その瞬間、光が迸った。

 眩しいけれど、どこか優しく、暖かな光。俺たちと端末たちとの間を、分かつように生じている。

 それと同時に、ダンジョン内に新鮮な風が吹く。ありえない現象。なのに、どこか安心して納得している俺がいた。

 風の中、ふと、その声を耳にする。

 

「公平さん、やっぱりあなたは素敵な人です。自分の身を捨てて、誰かの痛みに寄り添おうとするなんて」

「お、お前、は」

「だからこそ。そんな風に傷付いた、あなたに寄り添いたいと想うんです。アドミニストレータとか関係なく、一人の、山形公平っていう人に」

 

 光がやがて、収束していく。人間の形に、纏まっていく。

 黄金に煌めく髪、あどけなく幼さを残した、息を呑むほどの愛らしい顔立ち。慈しむように俺を見る視線は、微笑みに彩られている。

 俺より二回りは小さい背丈。優子ちゃんや、あるいはリンちゃんより背が低いかもしれない。絹のドレスに、背中には透明な光の翼を何枚も生やしている。

 

 天使。率直な感想として、そんな二文字が思い浮かんだ。

 この世の美、愛らしさを凝縮した、まさしく目の前の少女は天使だ。

 だけど、この声。嘘だろ、おい。

 俺は、震える指でどうにか彼女を差した。

 

「お、お前……まさか、まさか」

「ふふふー……ようやく直にお会いできましたねー。もーちょっとドラマチックでロマンティックなシチュエーションが良かったんですけどねー。そこのクソッタレ野郎さえいなければねー」

「……ほう。ふむふむ? 面白いことになったじゃないか」

「おめーに面白がられる筋合いはねーんですよ悪趣味野郎! 公平さんに色目使いやがってテメー、何が愛しい人だってんですかー!?」

 

 端末相手にも勇敢に、あるいは無謀に啖呵を切る少女。

 口汚い……見た目に依らずあんまりにも俗なことを言うな。

 だが、これで確信した。この子の正体。俺の、相棒。

 

「──リーベ!!」

「はーい! かわいいかわいいリーベちゃん、ただ今見参! ですよー!!」

 

 精霊知能リーベ。

 俺のレベルが300を超えたことで条件を満たした彼女が、満を持して姿を現したのだ。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間6位、週間6位、月間2位、四半期1位、年間6位

総合四半期11位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[良い点] (胸囲が)水平リーベ僕の (記述はここで途切れている)
[一言] 電車に乗る、白い人が見えました。 タイトルに、「いいじゃんすげーじゃん」ボタンを押したい。
[一言] 話タイトルからまさかここでメサイア・アドヴェントを切るのか!?って思ったろ違ったわ… ご降臨なされたのは我らがリーベちゃん様であらせられたわ(大歓喜)
2022/01/12 03:32 ケモスキー
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