なんだかんだノリノリじゃねーか、この悪魔!
「自分でも確信が持ててないことを、これから探ろうっていう君らに軽々に言うのは良くないとオジサン思うんだよねえ。意図せずとも君らを誘導することにもなりかねないしねえ……オジサンも真実は知りたいわけで、そうなるとそれは具合が悪いんだねえ」
「それは、そういうこともあるかもだけど」
「だからオジサンからは言えることはこのくらいのことだねえ。後はまあ、やっぱり今回のモンスターハザード周りのことくらい? それでどうか一つ、手を打ってほしいねえ」
やはり苦笑いしつつも、それらしい釈明とともに頭を下げてくる。敵対していた悪魔としてはありえないほどに友好的な言動に、どうもペースを乱される感じがする俺ちゃん。
実際、はっきり言って第八次モンスターハザードにおいてはやる気というものはなかったのだろう。俺を相手にした時もどこかそんな節はあったし、一応でも契約者だった藤近にもどこか諦め気味の態度だったからね。
それってのが結局、元々委員会を探るために潜り込んだのがバレての、懲罰的というか処刑的な投入だっていうのがあるんだろう。
明らかに死んでこいと言わんばかりに俺達の前に放り出されたら、誓いもあってやらないわけにはいかないにせよ、やる気を出す気にもならないのは理解できる。
気合十分だった火野やら藤近やらアレクサンドラやらと違って、明らかに最初から今に至るまでくたびれた感じだもんなあ。
まあ、だからといってここまでにやらかしてきた、加担してきたことの数々を見逃すつもりはまったくないのだけれど。
委員会の正体についてはたしかに、こいつの推測をすべて聞いてしまったら、それはそれでこいつ寄りの意見に無意識的にでも沿ってしまいかねない懸念はある。アドラメレクがどうのこうのと言うか、人間の心理的な反応として誘導されてしまいそうだしね。
こいつの言う通り、この話はひとまずこのへんにしといても良いって俺は思うかなー。
「概念存在とは似て非なるもの。あるいは人々の哲学、思想、心理的なところにヒントがあるかもしれない──か。さしあたりそこまで分かれば今は良いかな。後は独自に調べていくなかで、アドラメレクの物言いが適切なものかどうかを含め確認していくしかないかも」
「……ううむ。そもそもこのモノが信じるに値しない輩だというところまで含め、たしかに判断材料の一つ程度にしておいたほうが良いか。アドラメレク自身でさえ、確信はできていないようだからな」
「オジサンが言うのもなんだけど賢明だねえ。いやホント、一応敵だった立場で言うのもなんだけどお役に立てず申しわけないねえ。君らがキチンと彼らの真実に辿り着けること、陰ながら草葉の陰でこっそり見守っておくねえ。あ、わかったらオジサンにも教えてほしいねえ」
「ちゃっかりしてますねー、このオジサンー……」
まこと申しわけなさそうにしつつも、委員会の正体分かったら教えてーって力ない笑顔で飄々と頼んでくるアドラメレクの厚かましさよ。リーベも呆れ返るばかりだ。
何がアレって、俺達がさすがにこいつをここで存在ごと始末するつもりなんてまったくないのを完全に見抜いているところだ。その上でこんなこと言ってくるってのが、質の悪さというかやっぱり大悪魔らしい厄介さを感じさせるよ。
なんとも、転んでもただで起きないってのがね。
人好きしそうな態度はセーレもそうだったけど、下手すると神々よりよほど人に取り入るのが上手そうな手練手管はさすがとしか言いようがない。
あんまり長々雑談めいた物言いを許してると、そのうち変な言質を取られそうで嫌だな……ヴァールもそう感じたみたいで、さらに警戒の度合いを強めつつならばと話題を転換してみせた。
「この話についてはもう良い。であれば次は、お前が委員会に命じられて倶楽部、サークル、ダンジョン聖教過激派の動きに関与してきたこれまでについてを話してもらおうか。各組織の幹部どもとの間で、一体何をしていたのか」
「んん……まあそうだねえ。と言って、オジサンが主に絡んでたのはサークルの藤近くんと精々アレクサンドラくんくらいなもんだねえ。火野くんのほうはそれこそほら、妖怪達が受け持っていたからねえ」
「その妖怪にしたって委員会に手引したのはオメーだろうが。なんもねェとはさすがに言わせねえぞ、オイ」
「仰るとおりだねえ。全部言うからその殺気、抑えてほしいねえ。オジサン震え上がっちゃうねえ」
脅しつけるように威圧を放つシャーリヒッタをも、受け流すようにヘラヘラと笑う。さすがの胆力だが微かに震えているあたり、内心ではそれなりにプレッシャーとして受け止めてはいるんだろう。
アドラメレクが絡んでいた組織が、基本的にはサークルと過激派のみ。翻ってはつまり倶楽部のほうにはあまり関与してなかったってのは本当なんだろう。こいつの言うように妖怪が火野と組んでいたみたいだからね。悪魔としてはよその縄張りを侵す気もないってことだろう。
ただ、じゃあ藤近とアレクサンドラとだけ絡んでたってわけでもないみたいだ。頭を掻く彼が、驚くべき話を打ち明けてきた。
サークルにおいてはスレイブモンスター、悪魔憑き、そしてウーロゴスの三つにも並ぶ重要戦力。幹部陣が使いこなしてその凶悪な威力を発揮していた兵器群を、調達していたと自白したのだ。
「あー、一応あとはウラノスコーポレーションを勧誘したりしたねえ? あそこのお家のCEOさん、委員会に入りたがっていたからねえ」
「…………ウラノスコーポ! 貴様か、AMWをサークルに融通させたのはッ!!」
「まあねえ。ノイエヴァルキリーにルートディバイダー、あとはマキシムとミレニアム。エドウィンくんは実にあっさり手渡してきたからねえー」
────対モンスター用機械兵装AMW。
今回の事件にて投入された四つの武器の製造元、ウラノスコーポレーション。そこにさえこの悪魔は干渉し、介入していたんだ。
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第二部・第二次モンスターハザード前編─北欧戦線1957─
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攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど
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