あからさまな匂わせオジサン悪魔!
そもそも悪魔な上、委員会に与していてしかもサークルに対しても悪辣な協力をしていたモノだ。人の良さそうなアバター体を取ってはいても決して侮れないと思ってはいた。
いたんだけれどなかなか、予想を上回る慧眼と言うか見通しの良さを見せつけてきたアドラメレクに対して、俺も精霊知能達も一気に緊張と警戒の度合いを高めていた。
「概念存在のオリジナル……そんな存在についても、あなた方は話をされてるんですかー?」
「多少だねえ。創造神クラスをあたればそのへん一発で分かるだろうけど、あのくらいの格になるとそもそも出くわすことも少ないからねえ。延々と可能性や仮説をこねくり回すようなのが多いってだけだね、現状はねえ」
「あなた自身はどうなんですか? そうした存在の可能性について、どう思われているんです」
「そりゃいるだろ? ってくらいだねえ。概念存在の在りよう、存在の不安定さと裏腹の権能なんて力を考えれば──いやでもインテリジェント・デザインって考えには行き着くよねえ、オジサン的にはねえ」
リーベやミュトスの質問にも、飄々と考えを述べていくアドラメレク。そこにあるのは紛れもない推察の深さと思索の痕跡だ……確実に、"創造神の先にいるモノ"の存在を世界システムに組み込まれていると考えている。
始原の四体だとかシステム領域だとかを、それそのものをピンポイントで勘付いているわけでは決してないのだろう。できるものなら創造神に直接聞きたいと言いたげな口振りからもそれはうかがえる。
ただ、それらに近しい立場の何某かはいるだろうとは思っていて。だからこそあえてインテリジェント・デザインなんて現世の言葉を引き合いに出してみせたんだろう。
なんなら俺達がそうした存在だとさえ、ある程度見做しているみたいだし。
「ま、オジサンそーゆーのを暇な時に考えるのは好きだけど、お仕事なんかに持ち込むのは嫌な質でねえ。いわゆる陰謀論フリークみたいに思っといてくれればいいよねえ」
「……今ここで問い、答えるべき本題でもないということだな。それは、たしかにそうだ」
「聞きたいのはズバリ、委員会の実態についてかねえ? 察するにサークルの功くん達はもちろん、あてにしてたアレクサンドラくんまでろくに知らなかったからいよいよオジサン頼りって感じかねえ」
「あなたは……そこまで深く考えられる悪魔なのに、なぜ委員会に属してわけの分からない現世への干渉なんてしてるんだ。サークルに与しさえもして。意味が分からない」
思わず尋ねる。ここまで鋭い観察眼や洞察力、何より思考力を持つ悪魔がなんで委員会なんてものに参加しているのか、俺にはいよいよ理解できなくなっていた。
ここまで考えられるなら、委員会に属して現世にちょっかいをかけるまでもなく、大ダンジョン時代がものの数百年も経てば終わるようなものだと分かりそうなものなんだが。
委員会の正体を知ってるっぽいのは何よりだけれど、わざわざそこに属する理由は一体何なんだ?
もはや純粋な疑問と困惑からの問いかけに、アドラメレクはやはり飄々と、食えない笑みを浮かべて気軽に答えたのだった。
「そりゃーまあ、委員会の中枢にいるモノがねえ? オジサンとしては興味本位と同じくらい、つい力を貸してやりたくなっちゃったところがあってねえ」
「力を、貸す……? まさかお前に近しい悪魔、ないし概念存在だとでも言うのか。近縁とでも」
「いーんやいんや、むしろまったく似て非なるもの、かねえ? ……正直オジサンにも真相そのものをハッキリと掴んでるわけじゃなくて、それを掴むべく委員会に接触したところすらあるんだけどねえ。ただ、オジサンの予想がそう外れたものでないなら、一つ言えることがあるんだねえ」
「なんだ?」
こいつ自身、委員会を探るべくあえて組織本丸に接触していたのか。どういう経緯でだかは知らんけど、ずいぶん積極的に動くもんだな。
織田にも近しいバイタリティ。言ってることが本当ならという条件づきながら、この悪魔は虎穴に入って虎子を得たということになる。
……その正体にある程度の推測を立てられるほどの何かを、すでに掴んでいるんだ。
息を呑む俺達へ、アドラメレクはそれまでの笑みをふと消して、真顔で口調さえ変えて、低く呻くように真実の断片を明かした。
「────委員会は本来、人間だけが相手するべき組織だろうってこと。ここにいるオジサンや君らは、概念存在だのそれ以上のモノだのなんてのは、本当なら蚊帳の外にあるべき勢力なのさ」
「何?」
「たぶん、我々がこの戦いに介入したこと自体が……知らなかったこととは言え、筋違いなんだよ。間違っていたんだ、最初の時点で、ね。さっき言った力を貸すなんて動機さえ、オジサンの予想が当たっているとすれば余計なお世話もいいところなんだねえ」
「どういうこったよ、そいつァおい」
「筋違い、間違いだった? ……余計なお世話? 最初の時点で?」
いかにも意味深に告げられた言葉。"委員会は本当なら人間だけが相手すべき組織である"。
そして、それをもって我々──おそらくは俺達まで含めたあらゆる現世外の存在は本来、介入すべき戦いではなかったという、懺悔。
予想外な言葉に俺も、みんなも困惑するしかない。シャーリヒッタもミュトスでさえも、アドラメレクの迂遠な言葉に翻弄された様子だ。無理もない。
困惑する俺達に、再び力なく笑うアドラメレク。彼はそうして、ことの起こりから話し始めた。
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