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五人目─委員会の悪魔─

 世のなか、意外とオカルトやスピリチュアルってあるよね!

 ……などと、よく考えなくてもその手の話の至高天みたいな俺ちゃんが思うのもどうかという話に感心しつつも悪魔を待つ。

 陰陽師さんとかにめちゃくちゃ封印されているらしいアドラメレクの、概念存在にしてはあからさまに弱々しい気配がいよいよと近づいてきて、そして取調室の扉が開かれた。


 おまわりさん複数人とともに、その男が入ってくる。

 くたびれた感じのスーツ姿の中年男性。戦闘時はオールバックだった黒髪も今や前に下ろして粗雑な感じになっている。

 どちらにせよ疲れたサラリーマン風ではあるよね。

 

「お待たせしました。ここに、委員会関係者と思しきサークル協力者、自称新目玲玖を連れてきました」

「ありがとう。ここからの取り調べについてはWSOの権限でワタシ、ソフィア・チェーホワが主として行う。これは郷田局長ならびに島根室長から許可と承認を得ていることなのでよしなに頼む」

「承知しております。それでは我々はこれにて退室いたします。失礼しました」

 

 新目玲玖と、そう名乗るアドラメレクを席に着かせておまわりさん達がヴァールからの説明を受けて敬礼を一つし、退室していく。

 ここから先は関係者以外立ち入り禁止ってことだな。一応モニターは継続して行われているけど、そこにいる人達もロナルドさんを除いてみんな、こちらの事情をご存知の方々ばかりだし。

 

 そのロナルドさんにしても、アドラメレクとの取り調べにおいてこちら側のシステム領域の事情に触れることなんてまずないから見聞きしてもらっても問題ない。

 というわけでここから、心置きなく概念存在アドラメレクとの対話を行えるというわけだった。

 

 改めて向き直る。疲れた風のサラリーマンを装っており、実際その能力は現世の霊能力者によって相当封じ込められているが、それでも中身は大悪魔だ。

 力なく、どこか親しみのある笑顔を浮かべながらも興味深くこちらを伺う彼は、そして俺達に話しかけてきた。

 

「いやあ、ご苦労ご苦労。すまんねえ、わざわざ取り調べの機会なんて設けさせちゃってねえ。しかも5人中4人も美女美少女ときたから、オジサンには眼福だねえ。厳しい顔のおまわりさん達に、今の今まで散々詰められてたからねえ」

「見せかけだろうが余裕だな。そちらの権能がすでに壊滅的に封印されていることはすでにこちらも承知の上だぞ、悪魔アドラメレク」

「余裕っていうか諦めの境地だねえ。オジサン、無駄な敵対心とか孤軍奮闘とかってしない主義だからねえ。いやあここまでなんもかも封印されといて、傘下組織軒並み潰されてそれでもまだシャカリキになって働くパワーはもうないねえ。寝そべりオジサン決め込みたいねえ」

「えぇ……?」

「ペラペラとよく喋りやがるなァ、この野郎……」

 

 気さくな、油を差した自転車のチェーンのように軽快な語り口。思いの外フレンドリーな態度のアドラメレクに、なんだかこちらのペースが乱されそうだ。

 余裕綽々って感じなのは、性格からのものでもあるんだろう。実際は瀬戸際も良いところなのにこの調子なのは逆に胆力があると言えるしね。

 

 だが同時に、本人曰くの"諦めの境地"ってのもあながち嘘でもない感じはしている。どことなく疲れた空気を出しているのも一因だろうし、表情や声色、瞳の奥にそこはかとなく無力感が漂っているからだ。

 途方に暮れている……この悪魔はどうも、自分の手札をすべて捨てさせられたような、もうやれることがない感じのオーラを醸し出していた。

 

「オジサンもね? やるからにはまあそれなりにちゃんとやってみようかなって思って頑張ってたんだけどねえ。そもそも探査者が強すぎる上に得体の知れないチェーホワさんだのシャイニングさんだの出てこられた日にゃもう、無理としか言いようがないわけだねえ。ちなみにオジサン、昔は太陽神だったんだけどシャイニングって聞くとちょっぴり親しみ湧くんだねえ」

「そ、そう……」

「そんな親しみやすいシャイニングさんが、聞いてはいたけどあそこまでヤバいとも思ってなかったから心底怖かったねえ、奇襲かけて返り討ちされた時は────今落ち着いて見ると分かるけど、あからさまに創造神クラス以上はあるよねえ君らの魂と権能ねえ。話に聞く、"概念存在のオリジナル"とかだったりしないかねえ、実は。もしくはもっと上とか? いるとかいないとか、一部の知恵者は哲学してるけどもねえ」

「…………!」


 ……そして、そんな風体からでも繰り出す見通しの鋭さに小さく息を呑まされる。

 あっけらかんとした、それでいてするりと入り込むような語り口からいきなり核心を突いてくるな、こいつ。


 概念存在のオリジナル、すなわち始原概念・始原の四体。

 その存在の可能性については昨今、議論されがちとは以前にも織田から聞かされていたから驚きはないけど、まさか"その上"、すなわちシステム領域にあたる仕組みの存在についてまで一部とはいえ話が出てきているなんて。


 よく口の回る、調子のいいやつだなと半ば呆れていたところにこの一刺し。どこか困惑していた俺達だけど、ここに至り気を引き締め直して確信する。

 このモノは。ここにいるこの悪魔は、紛れもなく概念存在のなかでも最上位に位置するだろう。力を封印されていても、その言葉一つで他者をも圧倒しかねない覇気があるのだ。


 決して油断できない、本物の悪魔。

 それこそがこの、アドラメレクなんだな。

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― 新着の感想 ―
刑事ドラマ『太陽神にほえろ』が始まるのか。ラガーマンも呼んじゃえ(何で!?)
2025/08/19 12:29 こ◯平でーす
さすがは、『言葉の魔術師』たる悪魔だねぇ(笑) さらっと、本質を突いてくる。 公平が「よく気づいたな。私が“始原の存在”だよ。」って冗談めいていえばいいのに。(魂の強さや大きさ、色を識別できる悪魔に…
追記 言葉足りず申し訳なし〜。 そこにいる人達もロナルドさんを除いてみんな、こちらの事情をご存知の方々ばかりだし。 ロナルドさんだけが知らないような感じだったのでつい〜。
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