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戦慄!ダンジョン聖教と救世の光が急接近!!

 おまわりさんに車椅子を押されて、アレクサンドラが退室する。最後に一瞬だけ、六代目聖女としてシャルロットさんへの励ましめいた言葉を残して。

 そこにはたしかに誠実で敬虔な、ダンジョン聖教聖女としての顔があったように俺には思えた。過激派の首魁アレクサンドラ・ハイネンや、委員会の手先としての火野アレクサンドラとしてではない……六代目聖女アンドヴァリの姿。

 

 俺にとっても最初で最後だろう、そんな側面を見せてから姿を消した彼女を、シャルロットさんはやはり冷淡な目で見送っており。

 一方で神谷さんもまた、複雑な表情で瞳を潤ませているばかりだった。

 

「……終わりました。他のことについてはともかく、私個人の憎悪と使命に、ひとまずの区切りがつきました」

「シャルロットさん、お疲れ様です。その、大丈夫ですか?」

「はい。ただ、悪くない心地ですが良くもない心地です。復讐が無意味だとか、後に何も残らないだとか綺麗事を述べるほどでもありませんが……ただただ、終わったという感覚が今、強く胸に残っています」


 静かな表情。アレクサンドラとの訣別を決定的な形で済ませた彼女にはもう、内に秘めた憎悪や憤怒、復讐心の激しさは見受けられない。

 本人が仰るとおりの、ただ終わったという感覚。あるいは達成感とも虚無感とも言い表せられるかもしれないものばかりが残っているんだろう。ここに至るまで何度も見せてきた、透き通るように透明な表情を浮かべている。


 この人にとって、長い地獄がようやく終わったんだ。後始末やけじめまで含めて、人生に一区切りをつけることができた。

 まだ俺と同じ年、子供と言って良い年頃だけど……この人は多くの痛み、苦しみ哀しみを背負いすぎていた。そんな半生に一応でもピリオドを打てたことは、俺からしても本当に嬉しいことだ。


 きっとこれからは、この人は幸せに生きていける。

 すべてを忘れるわけじゃないし、忘れられるはずもないけど。それでもこれまでを乗り越えて、光に向かって歩いていける。

 そう信じられるような、終わり方をしてくれたんだね。神谷さんもまた、彼女に詫びる。


「七代目様の心中、察して余りあるものです。改めて申しわけありませんでした、私が手ずから弟子とし育て上げ後継にした者が、あまりに酷く決して許されない仕打ちを……」

「どうかもう、お気になさらないでくださいませ。誰もが、自分にできることやしたいことを精一杯成し遂げようとしていました。もちろん私自身やアレクサンドラでさえもです。行動の善悪や個々人の感情の是非はともかく、それそのものを否定することは、きっと、誰にもできないことなのでしょう」

「あなた様は、本当に立派な聖女となられました。強く、優しくそして慈悲深い。これより先のダンジョン聖教は一時ばかり苦難の時を迎えるやも知れませんが、シャルロット様が導いてくださるのならばなんの心配も不安もこの神谷美穂には、一欠片とてありません」

「お言葉ありがたく頂戴します。すべてはここからです……初代様の薫陶を受けし二代目ラウラ・ホルン様から始まったこのダンジョン聖教は、七代目聖女シャルロット・モリガナが受け継ぎ先へとつなげていきます。受け継いできた《聖女》の称号に、私は殉じます」

 

 厳かな宣誓。神谷さんへの言葉も、自ら掲げた誓いも、そのすべてが世界的宗教の指導者としてふさわしいカリスマと慈悲、慈愛と覚悟に満ちたものだ。

 完全に一皮剥けたというか、大成された感じがある。《聖女》の称号を取り戻したことと復讐を終えたことで、精神的な壁をまた一つ乗り越えられたんだな。

 

 そんな彼女が神谷さんに優しく手を差し伸べ、その身を立たせる。アレクサンドラとのやり取りで疲労したのだろう、神谷さんはシャルロットさんに寄りかかるようにしている。

 ここからはこの取調室にて、いよいよ委員会の悪魔アドラメレクへの取り調べが行われる。その前にこちらの御二方は退室され、元のモニタールームへと帰られることになる。

 最後に彼女達が揃って俺を見据えて深く、頭を下げてきた。

 

「山形さん。あなたにも最大限の感謝を。ダンジョン聖教七代目聖女として、また一個人としてあなたを尊敬します。本当に、助けてくださってありがとうございました」

「私からもありがとうございました。あなたがいなければきっと、私達はこの場にこうしていませんでした」

「俺のほうこそ、お二方にはありがとうございましたと言わないといけません。アレクサンドラとの戦いでともに肩を並べられたこと、光栄に思います」

「……私もです。考えるに今後、ダンジョン聖教は救世の光とは良好な関係を築いていくべきでしょうね。あなたは今後、もっと世界に広く知れ渡るべき方なのですから。どうかそのお力であまねく世を照らしてくださいませ。私にそうしてくださったように……」

「えぇ……?」

 

 お互いに微笑み合って感謝し合ってのはずが、なんか雲行きが怪しくなってきた。なぜにダンジョン聖教と救世の光の距離を近づけさせようとするの? なぜにそんな微笑んで、微妙に信仰の光を瞳に宿らせてるの? なぁぜなぁぜ?

 神谷さんも止めたり諌めたりすれば良いのに、微笑むばかりで何もなさらないし!

 

 あぁ、モニタールームで伝道師がハッスルし始めてそうなのが手に取るように分かる。

 もうなんか、いよいよ俺の手に負えないことになっていきそうな救世の光に俺ちゃん、ひたすら瞑想するしかなさそうだよ。怖ぁ……

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決まったな、、、世界最大のカルト宗教の爆誕だ! 山形くんは一般人だけどコマンドプロンプトとワールドプロセッサは自質神みたいなもんだしやっと正統に祀るものが決まったかんじかな? 各教会に光り輝くシ…
こ、このままではダンジョン聖教がダンジョン救世教になってしまう…! 二体のエヴァンジェリスター(巨大救世主偶像)が肩を組んでいる姿を夢に見た救世主山仏は廃人と化した。
そら(銀髪で光魔導の使い手で宗教指導者で師匠が火野老人に人生を狂わされた犯罪者なら)そう(なる)よ。 エヴァンジェリスター2号機誕生の日も近い!?
2025/08/16 10:58 こ◯平でーす
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